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四代目日陰家当主、日陰 竜之心

短めですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。


ご意見ご感想をお待ちしています。


「だ、誰ですか!?」

困惑の声が口から出てくる。

「うむ。まずは、そこからかのう」

老人は飄々と呟く。そして取り乱し、驚いている竜の姿を面白そうに眺めていた。


突如、現れてミノタウロスの首を斬り飛ばした老人。

竜にとっては、どう反応していいかわからなかった。

(な、なんだ。今の一撃は、全然見えなかった!?)


「ほれ、起きなさい。男じゃろう」

老人はそんな倒れている竜を起こした。


「あ、ありがとうございます」

「何、気にせんでよい。お前さんの方は大丈夫そうじゃな」

竜の体を見て無事だとわかり安心する老人。

老人は、この世界では珍しい胴着に袴、そして、腰には小太刀を差していた。


「あなたは、一体」

「説明は、後じゃ。まずは、この牛の処分からじゃ」

老人はそう言うと牛と言ったミノタウロスの死体に近づいていき、小太刀で素早く解体を始めた。


「ボケっとしとらんで来なさい。見ていても何もできんぞ」

老人に呼ばれ竜は、慌てて側へ行き解体を手伝った。手伝ったと言っても竜は老人から解体を教授されたと言った方が正しい。それから三十分が過ぎた頃に解体は終わった。


「手際は良かったの。初めてのわりにはの」

「あ、ありがとうございます」

誉められた竜は少し恥ずかしかった。

(誉められるなんて久し振りかな)


「さて、外へ出るとするか」

「ですが、ここは…」

竜が言葉を続けようとするが

「やぁ!」

老人が気合いとともに塞がれた入り口に拳を打ち込んだ。

爆発とともに入り口が開通し、光が射し込んできた。


「・・・・・・」

口を開けたまま棒立ちする竜。

「何を驚いておる。お前さんも〝これから〟できるようになるんじゃからな」

「え、それって、どういう」

聞く前に

「ほれ、行くぞ。行くぞ。遅れるでないぞ」

竜の問いに老人は答えず、そそくさと歩いていってしまった。

竜はそれを慌てて追いかけるのであった。


竜は、こうして生還し、こうして運命の出会いをし、こうして、竜のこの世界での新たな人生が始まったのだ。



「………外だ…………」

久しぶりの空を見た竜はとても嬉しかった。

自分は、生きているんだ。

竜は、心からそう思った。


「どうじゃ。外の空気は?」

「はい、すごく気持ちいいです。本当にありがとうございました」

竜は改めて老人に礼を言った。


「何、人を助けるのは人として当然じゃ。それに、それがわしにとって大事な〝子孫〟ならの」

「え、そ、子孫?」

老人の言葉に耳を疑った。

「そうか。まだ言ってなかったの。改めて名乗らせてもらおう。わしの名は、日陰 竜之心ヒカゲ・リュウノシン。お前さんの時代の言葉で言えば、四代目日陰家当主じゃ。よろしくの。わしの子孫よ」


こうして、竜は、異世界で御先祖様に出会ったのであった。


「異世界に召喚ではない」

「そうじゃ」

「で、ですが、あなたは、この世界に」

「いるのう。じゃが、わしは生身の人間ではないんじゃよ」

「生身の人間じゃない」

「そうじゃ。わしは、正確には霊魂なんじゃ。いや、この小太刀に宿る精霊みたいなもんじゃ」

彼の話によると彼が、死んだ後、神様から転生の機会を与えられたらしい。その時に、「自分は、剣術を自分の子孫に導く存在になりたい」と懇願したらしい。そこで、神様は、彼を彼が所持していた小太刀に魂を宿らせたらしい。


「じゃあ、何でこの世界に」

「引かれたのじゃよ。お前の強い思いにの

「でも、どうして実体化しているんですか?」

「これはのう。わしがこっちにきた時に能力を得たためじゃよ。わしの存在は、地球で言う付喪神みたいなもんなんじゃよ」


付喪神。道具等が何百年も経つと霊が宿り妖怪になる。そう言った存在の事を言う。

竜之心もその部類なのだという。


「わしは、お前さんをずっと見ていた。仕打ちを受けても必死になって修行に励み、力に溺れずにずっと自分を見失わなかった」

ゆっくりと口から出る言葉。

それは、竜のこれまでの事を労う響きがあった。

「わしは、お前さんを見て確信した」

「確信っていうのは?」

「わしの剣術をお前に託せると」

驚く、竜に竜之心は笑みを浮かべる。


「わしが、お前さんを強くしてやろう」


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