ミノタウロスとの死闘
ようやく、ここまでこれました。
戦闘はちょっと短めです。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
「ハアッ!」
ミノタウロスの一撃を回避して右手に持つ刀で切りつける。
ミノタウロスの腕からは血が噴水のように噴き出していた。
ブルオォォオォォォ!!
雄叫びが響く。
「く、やっぱり、浅いか!?」
苦悶の表情をした竜はミノタウロスから距離をとる。
竜が苦悶の表情をする理由。それはミノタウロスに決定的な一撃を入れられていないことであった。
竜は、茂木や仁美といったチートと言える能力や攻撃は持っていなく、剣術が優れていても身体のスペックは低いものだった。
そのために、さっきからミノタウロスの一撃、一撃を避けて、隙ができた所に切りつけても体したことがないのだ。
(今のところは、大丈夫だ。けど……)
竜は息切れしていた。
長時間の戦闘。そして、集中。どれも肉体的、精神的に限界が来ようとしていたのだ。
ミノタウロスがこん棒を上下に降り下ろす。
それを避け、背後に回った。そして、脹ら脛辺りを斬る。
再び雄叫びが響く。
そして、地面に膝をつけた。
足を斬られたために力を失ったのだ。
竜は好機と思い、駆け出した。
しかし、ミノタウロスは、起き上がった。
「何!?」
竜の一撃はミノタウロスにとってはまだ大した怪我ではなかったのだ。
ミノタウロスの突然の起き上がりに竜は走るのを止める。しかし、ミノタウロスまでは距離が僅か数メートル。ミノタウロスのこん棒の間合いに入っていた。
ミノタウロスのこん棒が竜に迫ってくる。
「くそ、」
竜は剣と刀を前にクロスさせて身構えた。
そして、その直後、ドゴンッ!というでかい音とともに竜は吹き飛ばされた。
しかし、竜は空中で回転して地面に見事に着地していた。
こん棒が当たる直前に竜は当たるのと同時に後ろに跳んで衝撃を減らしていたのだ。
「ぐ、」
しかしダメージはあり、両手は垂れ、剣と刀を持つ手は震えていた。
(能力がちょっと向上していて良かった。地球なら一瞬で腕が使えなくなってた)
竜は、他の人達には劣っていたが日々の研鑽で身体的に上がっていたのだ。
ミノタウロスが再び攻撃をしてくる。
竜は今、無事な足で後方に跳躍して回避。
(よし、腕の感覚が戻ってきた)
両手に力が籠るのを感じた。
(これ以上の長期戦は無理だ。一か八か…)
両手に力を籠め、ミノタウロスを見る。
竜の表情には疲労の色が浮かんでいた。限界がきたのだ。
ミノタウロスの動きに集中する。
瞬きも許さない。
竜は集中した。僅かな変化も見落とさないように。
そして、ミノタウロスは動いた。
ミノタウロスはこん棒を両手に持ち振り下ろしてきた。
竜も振り下ろした瞬間に陸上選手のスタートダッシュの如く走っていた。
こん棒が竜に迫る。
竜はそれを横に移動して回避、そして、跳躍。こん棒に着地するとそのまま走った。
こん棒から腕へ。
そして、ミノタウロスの顔に到達。
竜はミノタウロスの首筋に刀を振るった。
手応えはあり、血が一気に出る。
しかし、これで終わらない。竜は刀で切りつけた傷に剣を突き刺した。
剣の刃は傷口を通って首筋の深い所まで入った。
やった。
竜は確信した。そして、剣を力一杯引き抜いた。
そして地面に着地。
着地と同時にミノタウロスも倒れる。
竜はその場にへたりこんでしまった。集中が切れて力が抜けてしまったのだ。
竜は、倒した事に歓喜をあげようとした。
「な、に…」
竜の目の前でミノタウロスが起き上がろうとしていた。
竜は今度こそ絶望した。
今の状態では逃げる事も叶わないからだ。
ミノタウロスはゆっくりと起き上がる。
そして、竜を見た。
ミノタウロスの首が飛んだ。
「……え……」
竜は唖然とした。
目の前では頭があった所から大量の血を流し、そして、今度こそ倒れこと切れるミノタウロスがいた。
状況が混乱する中で
「腕は、いいのう。だが、少し優し過ぎるぞ。わしの、子孫よ」
ここでは聞く事が不可能な老人の声が耳に響くのだった。




