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裏切られた、竜

今日は、短めです。

少し展開が急な部分がありますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。


奥へ進む毎に強力なモンスターは現れた。しかし、それは茂木達の敵ではなかった。


「おらぁ!」

「やぁ!」

掛け声とともに斬られ、焼かれてゆくモンスター達。

その姿に竜は、同情してしまう程に無惨だった。


「楽勝だな!」

「ああ!」

「俺達、いけんじゃねえの!」

結果に有頂天になっていく勇者達、竜のクラスメイト。


騎士団の人達はこのダンジョンでの戦闘に慣れているためかクラスメイト達の様にいかないが苦戦することなく倒している。

しかし、対する竜はというと、彼らが仕損じたモンスターとの戦闘を慎重にやったりしていた。

そんな様子を周りはバカにして見る者、心配そうに見る者といた。

暫く、そういった事が繰り返されていた時。

騎士の一人が何かを見つけた。

「団長」

「なんだ?」

「あれを…」

騎士が指差す。

団長はその先を魔法で照らした。すると険しい表情を浮かべて叫んだ。

「撤退だぁ!」

ダンジョン内に響く。

「撤退って、どういう意味ですか」

「このダンジョンでもっとも恐ろしい奴が上がってきたんだ」

それを聞いた竜達に緊張が走り女子達は恐怖の表情を浮かべはじめていた。


「は、そんなの楽勝さ、くらえ!ウィンド・ナックル!!」

しかし、そんな空気を無視して技を放つ者がいた。

高田だ。

「馬鹿者!?」

珍しい団長の竜以外に放つ罵声が響いた。しかし、視界がほぼ暗かったためか高田の狙いは外れそのモンスターに当たる事はなかった。しかし、モンスターがこちらにむかってくる音だけは鳴っていた。

「逃げろぉ!?」

その叫びを機に全員走り出す。


「いかん!追いつかれる!」

「どうすれば…」

様々な所で動揺と恐怖で動きが遅くなる。

茂木はちょうど目の前にいた一人を見た。そして、

懐から取り出した小さい袋をその人の右肩辺りの上で潰した。

ブシュ!という嫌な音がしてポタポタという何かが垂れる音がした。

「!」

竜は右肩に感じる液体の感触。そして獣臭いが鉄っぽい匂いを鼻で感じた。


「みんな!血の匂いにあいつは反応しているんだ!みんな!こいつを早く押し倒すんだ!」

その言葉を聞いたクラスメイト達は匂いのする方を見た。そして、竜を見るとすぐさま襟などの服のあちこちを引っ張り倒そうとした。

「ちょっと!みんなして何をやっているんですかぁ!」

「そうだ!お前達!一体何をやっているんだ!」

仁美は皆の行動と竜を助けようと手を伸ばす。

団長もなぜか仁美と同じように止めようと動いていた。

しかし、竜は突然、天高く、中を舞った。


「はは!これでお前は終わりだぁ!」

高田が竜を高々と投げたのだ。

高田は勝ち誇るように叫んだ。

竜が中を舞ったのは高田の投げ技によるものだった。

そして、竜は地面に体を叩きつける。しかし、それだけではなかった。突然、入り口の方から輝く斬撃が飛んできたのだ。

竜は転がってそれをなんとか回避した。

入り口の方を見る。そこには高田以上に勝ち誇った表情をした茂木がいた。


「さようなら。君さえいなくなれば、彼女は俺のものだ。大丈夫。君ような無能は死んでも誰も悲しまないから」


そういうと腰に差してある。金の装飾と赤い宝石が嵌め込まれた美しい剣を抜き、振るった。

すると入り口は崩れ、瓦礫によって防がれた。

そんな時、竜は最後に自分の名前を叫ぶ少女の声を確かに耳にするのだった。


竜はこうして、裏切られたのだった。


そして、絶望する間を与えないとばかりにモンスターは地響きと共に現れた。


ズズゥゥーーーン!!


「…うそ…」


竜は恐怖を通り越して唖然とするしかなかった。


そのモンスターは三~四メートルもあり右手には大木をそのまま持ったような巨大なこん棒。そして、何よりも特徴的なのは、顔。何故ならその顔は牛であったからだ。


(これって!?)

竜の脳裏に一体の怪物の名前が浮かび上がった。

目の前にいるのは竜達の世界の神話に登場する怪物。


ミノタウロスだった。


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