第七話 剣術指南
次の日から、俺はユピテルに剣を習うことにした。
することといえば基本的には素振りでたまにユピテルが剣を打ち合ってくれるがいまだに打ち勝ったことはなく、毎度負けていた。
ユピテルは4大流派のうちの2つが使えるらしく、一つが花心強撃流で、もう一つが月心流水流というらしい。
俺は4大流派は現実での記憶がちょうど忘れているのでユピテルに聞くことにした。
「ユピテル兄さん。剣術の4大流派について少し教えてくれないかい?」
「僕が教えれるのはたかが知れてるから、お父様に聞くといいよ。お父様はああ見えて、4大流派すべてが最上級だから。」
「分かったよ。ユピテル兄さん。今からお父様に聞いてくるよ。」
そういうと俺はすぐさま森を飛び出し、家へと向かった。
「4大流派か?なんで急にそんなことを聞くんだ?。」
「最近初めて剣に触れたのですが剣にも少し興味がありまして、お父様が4大流派をすべて使えるとユピテル兄さんから聞いたので。」
「そういうことなら話してやろう。」
シグムントによると4大流派は、花心強撃流、鳥心幻惑流、風心神速流、月心流水流の4つがあってそれぞれ異なった特徴を持つ。
まず花心強撃流は1撃1撃の攻撃力を重視した流派で剣士が最初におぼえるべき流派とされている。
次に鳥心幻惑流だがこれはトリッキーな行動をよくする流派で見た目の良さなども完璧に無視した流派で戦闘で相手を倒したり生き残ることに特化している。その奇抜戦い方から他の流派の使い手からは忌避されている。
そして風心神速流は1撃がとても素早く、AGIがとても大事なステータスとなる流派である。見た目も実用性もいい人気流派である。
最後に月心流水流は、カウンター主体の流派で常に静かに相手の攻撃を待つ保守的だが利便性のよい流派で、とてもスタイリッシュな流派である。
俺はその話を聞いてますます剣術への興味が湧いてきた。なので俺はシグムントに教えを請うことにした。
「お父様、何日かかってもいいのですべての流派を習ってもよろしいですか?」
「アルス。お前は魔法に才があるのだろう?なぜ剣を習いたいんだ?」
「それはフィーユにカッコいいところをみせた…ゲフンゲフン。剣も魔法も使える魔法剣士ならパーティに入れてもらえないということがなくなるからです。ダメですか。」
「最初に聞こえてはいけない言葉が聞こえた気がするのだが、気のせいだろう。アルスがそこまで考えているなら教えてやらんでもないが、2つ約束しろ。1つは魔法の練習を疎かにしないこと。もう1つは魔法と剣の両方を使って迷宮を攻略すること。この2つが守れるなら剣術を教えてやろう。」
最初に言ったのが聞こえていたとは…まあいいや。
「分かりました。約束は必ず守ります。なので僕に剣術を教えてください。」
「アルス、表へ出ろ。」
そう言い残すとシグムントはさっさと庭へと向かっていった。
「さて、俺も向かうとしますか。」
俺はシグムントを待たせるのも悪いので庭へと足を運んだ。
「アルス。まずは基本となる花心強撃流を教える。どんな流派を覚えるにも花心強撃流ができないと話にならないからな。」
教える人間がユピテルからシグムントに変わったとはいえやることはあまり変わらない。素振りで型の練習をするだけだ。
しかし、俺はふと疑問を抱いた。そしてその疑問をシグムントへとぶつけた。
「お父様。なぜ素振りをするのですか。素振りをしてもSTR値が上がるわけじゃないですし。」
「それはこの素振りは花心強撃流の技の1つの初動モーションだ。そろそろアルスの素振りの型もきれいになっているからDEXにポイントを振ってスキルボードで花心強撃流を取って、技を取って使ってみろ。」
そう言われて俺はスキルボードを召喚して項目を見てみると、魔法や剣術をはじめとした攻撃方法が載っていた。俺は剣術を取った。すると4大流派が選べる状態へと進んだ。そのなかで俺は今練習している花心強撃流を選んだ。するとやっと技が選べるようになった。ボードを見てみると、
『一撃』
その技以外には表記されていなかった。仕方ないのでおれはその技を取った。
すると、自動でモーションボードという魔法を習得した。
名前から察すると、ステータスボードやスキルボードと同じでボードを呼び出して剣術も初動モーションから攻撃までの流れが確認できるはずだ。
俺は練習していた型が一撃の初動モーションだと直感的に悟った俺は練習していた型を起こしてみた。
すると、刀身が淡く赤に光った。そのまま軽い力で振り下ろした。刀身は振り下ろした力ではあり得ないスピードで振り下ろされた。これがスキルで取った技、『一撃』なんだろう。
俺は最初に抱いた感想を素直にシグムントへとぶつけた。
「いまやった技もとてもすごかったですがなんで技が1つしかなかったのでしょうか。」
「それはなアルス。本来の仕様でまずは一撃を取ってそこから派生技をとっていく。それがスキルボードの使い方だ。」
「そうなんですか。じゃあこれからはもっとすごい技をとれるように頑張ります。でもそれにしても初期の技でこのスピードはすごいですね。僕はそんなに力を入れて振り下ろしてないのですが。でもとても感動してこれからも剣がもっとやりたくなりました。」
「あーそれなんだがなアルス。さっきのスピードはスキルだけでなしえるスピードではない。あのスピードはアルスのSTRとAGIによる補正であのスピードになったんだと思う。だからアルス。スキルが欲しいからといってDEXに振りすぎるんじゃなくバランスよくステータスは振るようにしなさい。」
「わかりました。ちゃんとステータスは考えて振ります。これからも剣術指南をよろしくお願いします。」
こうして俺は剣術も習いつつ魔法もしないといけないとというハードスケジュールな生活が始まってしまった。