第一話 ゲームの世界
ただいま、俺よりも若い外国人っぽい夫婦に抱かれております。
どうしてこうなった?
25歳一人暮らしの俺はいつも通り会社へと通勤していた。
すると、突然目の前に巨大な鏡が現れて、興味本位で触れたら急に意識が引っ張られて意識が戻ると夫婦に抱かれていた。
いきなりだが、1つ突っ込ませてもらおう。
俺はごく普通の25歳の男性なので体重もそれなりにはあるほうだ。
だがこの母親は軽々しく俺を抱いている。どんな筋力してんだよ!!
とりあえず、ここがどこかを聞こうじゃないか。
あなたは、だれ?ここはどこ?そしてこの視界の左上にある緑のHPバーとLv.1はなに?と聞いたつもりだった。
だが、自分の口から出た言葉は信じられないものだった。
「あーーー。うー。うあー?」
何てことだ。声を発せれないならまだ分かる。
しかし、明らかに俺が発そうとした言葉ではなくいうなれば、そう、赤ちゃん言葉だったのだ。
そんな意味もよくわからない言葉を発していると、急に母親がなにか言い出した。
聞いてみると、
「聞いた?!いまこの子が意味がありそうな言葉を喋ったわ。あなた」
馬鹿じゃないのか。こいつは。
どう考えても25歳が話す言葉じゃないだろ。
ん?ちょっと待て。いまこいつ何と言った?
この子?どういうことだ。明らかに25歳の俺に対して使う言葉じゃないだろ。
「おい、アモーレ。今のが意味のある言葉に聞こえたのか?俺にはアルスが適当に声を出してみただけにしか聞こえなかったのだが?」
「アルスが泣く以外で言葉を話したのよ?これは何かを泣く以外で伝えようとしたのよ」
おい待て。アモーレって誰だ?この母親のことか?外国人っぽい名前だな。
そしてアルスも誰だ?話の内容から考えると俺のような気がするのだが、あいにく俺はそんな名前じゃない。
そんなどうでもいいことを考えながら俺はこの夫婦の話を聞いていたのだった。
それから時は流れ、俺が2歳になるぐらいのことだった。
ようやく俺の中でこの世界について整理ができた。
まず、俺と家族についてだ。俺の名前はアルストロメリア・ディセントラだが長いのでアルスと呼ばれている。
ディセントラは日本でいう苗字に当たる。そしてディセントラ家は地方の領主を勤める貴族だそうだ。
父の名前はシグムント、そして母の名前はアモーレだ。
後は兄が一人で、名前はユピテル。この兄は非常に俺を可愛がってくれていてこの世界について色々教えてくれた。
そのおかげかたったの二年でこの世界について簡単にだが知ることができた。
この世界についてだが、短刀直入に言おう。ここはゲームの世界であって日本ではない。
なので、魔法や剣術の概念がある。しかし、銃はない。
俺も男なので剣術や魔法を使ってみたかったので別にいいんだが。よくないか
そして視界の左上には緑のHPバーとLv.2となっていた。
だが、なぜかここでは日本語が公用語になっていた。
俺は一刻も早くこの世界について知りたかったので、家にあった本を読んだり、家の内装を見た。
そうするとまたおかしなことに気づいた。
この世界には冷蔵庫がない。しかし、食事はちゃんと出てくる。
そのことに疑問を持ったのでユピテル兄さんに聞くことにした。
そうすると兄は、
「汝の欲す所に大いなる異空間は開かれん。異空間へと繋がる箱を今此処に!コールアザーディメンジョン」
と、詠唱した。
すると、空間が捻じ曲げられ、1つの箱が生まれた。
「これが、物の時間を止めて保存するチェストだよ。」
と兄は言った。
「でも、これをどうやって開けるの?ユピテル兄さん。」
と聞いてみた。そうすると
「我が呼びかけにに応え開け!チェストオープン!」
すると、チェストはギィィィィという音と共に開いた。
[おぉぉ!!すごいよユピテル兄さん!!!僕にも教えてよ。」
そういうと兄は少し言いずらそうに言った。
「アルス。残念だがまだ幼い君にはLv.が足りなくて使えないと思う。一応聞くけどアルスのLv.はいくつなんだい?」
「僕は今Lv.2だけどユピテル兄さんはいくつで使えたんだい?今のLv.はどのくらいなの?」
「僕がこの魔法が使えるようになったのは5歳かな?でも普通は10歳だから早くても5歳じゃないかな?今のLv.は8だよ。」
「でも使いたいんだもん。」
俺はわざとこう子供っぽく言った。どの世界でもかわいい弟や妹には優しくしたいだろうからな。
「仕方ないなー。これはあまりいい方法ではないけどステ振りをしよう」
ここで来たか。ステ振り。やはりゲームならステ振りはできるであろうとおもっていたよ。
「でもどうやってステ振り?っていうのをするんだい?」
「これは少し詠唱をする必要があるからね。1度やって見せるから真似してやってみてね。」
と、ユピテルは言い、そしてこう続けた。
「汝が欲す所に大いなる力を歪めん。神が定めし力を人の手によって操らんとす。ステータスボード。」
そう言うと目の前にボードが現れた。
「アルス、これを使ってステータスが振れるのさ。アルスもやってみな。」
そう言われても詠唱を覚えていない。ユピテルにもう1度言わせるのも気が引けるのでまあ言えるだけ言ってみよう。
「汝の欲す所に・・・・・ステータスボード。」
あまり覚えてないがこれでいいのだろうか。そんなことを考えていたが、あっさりと成功してしまった。
ユピテルは驚いた顔で話してきた。
「アルス、今ちゃんと詠唱しなかったよね。」
嘘をつく必要もないので素直に、
「うん。覚えてないからちゃんと言えなかったけど、、、それがどうかしたんだい?」
「すごいよアルス!!普通は詠唱短縮なんてできないよ。アルスは天才だ!!」
そうなのか。別になんともないが、できるなら便利だ。使えるならありがたく使っておこう。
「ところでユピテル兄さん。ボードを出したあとはどうすればいいんだい?」
「魔術に振れるだけポイントを振りなさい。そうすればポイントが足りていれば出せるんじゃないかな。」
「うん。分かった。やってみるよ。」
そうは言ったが詠唱どころか最後の言葉さえ覚えてない。もう言わずに念じてみよう。チェスト・・・
そう念じているとチェストはでた。
今度もユピテルは驚いて、
「アルスはすごいよ。詠唱短縮どころか無詠唱ができるなんて・・・これはお父様達に報告だ!!」
そう言ってユピテルは屋敷に戻って行ってしまった。
「にしても出来た時は感慨深いものがあったな。これからは魔術をしっかり練習して行こう。」
一人でそう呟く俺であった。