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八話

「ワン!」

「鉄男!」

 そう零と紅姫の声が聞こえた、見れば二人がUGNのエントランスから出てくるところだった。

 紅姫はシェイプを抱え治療を始める。

「紅姫、蠱毒の壺はもうなかった」

 そう切り出したのは鉄男。

「もうすでに奪われていたようだ」

 言葉をワンが繋ぐ。

「まずい、まずいぞ。あれは怨霊を生みだす遺産じゃ」

「紅姫、よければあの壺が何なのか、教えてくれないか?」

 紅姫は気絶したシェイプを横たえ紅姫は話し出す。

「あの中に怨霊の焼き付いたレネゲイドを入れることによって、一つのレネゲイドビーングにする遺産」

「あいつらは、レネビを生みだして何をしたいんだ」

 ワンが頭を抱える。

「壺はなかったが、紅姫の育成日記はあった。紅姫、お前はなにものなんだ」

 零が畏怖の念を示す。

「いくせい……?」

「紅姫、これを」

 鉄男が差し出す資料を、ワンが手で制す、しかしその表情には戸惑いが見て取れた。

「鉄男! それを妾に貸すのじゃ、なんじゃ育成日記とは、何を隠しておる」

「いややいやや、だれが育成日記なんて言ったんだ?」

 鉄男はこの期に及んで恍けようとする

「いや、いいわたせ。本人もいずれ知ることだ」

 ワンが一歩ひき、紅姫が飛び鉄男から資料を奪った。

 そして紅姫は中身を見る。

「これは……、これは……」

 紅姫は資料を握りしめる、漏れ出す言葉に苦痛が混じり。表情には苦悶が浮かぶ。

「これはどういうことじゃ、妾は妾は」

 紅姫は無言で歩き出す、力なく垂れ下がった腕から資料が落ち、かさりと音を立てた。

「すべての合点がいった、妾は、望まれて作り出されたのだな。……葵、お前はしっておったのか?」

「それがお前の中の、レネゲイドビーイングの名前か?」

 ワンがそうつぶやき二人は何か気が付いたように紅姫を凝視する。そして紅姫は。

「あははははは」

 笑い声をあげた。

「おい、待てよ」

零が紅姫腕をつかむ。

[零:バロール:吸着]

 零は重力を操作し、つかんだ着物を決して離れないように固定する。駆け出そうとしていた紅姫は急に腕を引かれ急停止を余儀なくされる、髪が流れて、表情が隠れた。

「離すのじゃ零、妾は、妾は、人ではないのかも知れないのじゃぞ」

 ぱたりと、紅姫の足元に滴が落ちた。すすり泣くような、さみしげな泣き声が、長い髪で隠された奥から聞こえてくる。

「俺たちだって、人じゃないかもしれない」

「お前たちは人じゃ、人の心を持ち、絆をはぐくむ、人間ではないか、それにくらべて妾は……。生まれついて絆を持たない。孤独な化け物じゃ」

「鉄男が、いるじゃないか」

 鉄男はうなづいて見せる。それこそ紅姫に対する信頼と忠清の証。

 だがそれを見て紅姫は、嗚咽を漏らす。

「鉄男、妾は何のために生まれたのじゃ、妾はいったいなんじゃ、妾はいったい誰なのじゃ」

「そんなの誰にもわからねぇ、でも生きてる、それで十分じゃないか!」 

 鉄男が必死に説得する、しかしそれも構わず紅姫は逃げようと袖をゆすった。

「すまぬ、零」

 その時、紅姫の着物が真紅にそまった、しみだすように真紅の液体が流れだし、地面にたまる。

「よけろ! みんな」

 ワンが叫んだ時にはもう遅い。

[紅姫:ブラムストーカー:血の宴 蝕む赤]

 大地を濡らす血が、一気に広がった。光沢のある真っ赤な大地へと変貌し。

[紅姫:オルクス:大地の牙 大地の加護]

 そして、赤い大地から芽吹くのは、血に染まった巨大な花。

 そしてその水晶を構成するのはあくまで紅姫の血液、わずかでも水晶に触れればその血は体を内部から破壊する毒となる。

 三人は回避しきれずそれを受けた。衝撃だけで三人は膝を折り、毒が回り意識を失っていく。

 そして紅姫は一度未練がましく振り返り、どこかへと走り去っていった



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