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五話

*  *


 ワンは車内でパソコンを広げていた、助っ席で眠りこけている鉄男はほっておいて、零はその画面を食い入るように見つめていた。

 そこに映し出されていたのは黄泉彦の家。

 黄泉彦の住まいは住宅街の隅の隅、超大型マンションの陰に隠れて、日に三時間程度しか日の当たらない、ぼろアパート。

零とワンは何か不気味印象を受けた。

「黄泉彦はここを寝床に使っているが、ちょくちょくいなくなっているようだな」

「黄泉彦……」

「エンペラーについては何もわからなかった。情報チームを監視につけておいたがなにかわかる可能性は低いだろうな」

 その時、車が停止した。それは村の入り口だ、ここからは車が入れないように柵が作ってあった。

 四人は車を降り、鉄男の先導で村の奥へと入っていく。

閑散とした村は異様な雰囲気を醸し出しており、たどり着いたお屋敷は旅館を営めるのではと思えるほどに巨大だった。

 中に入ろうとするワンを零がいさめる。

「まてお前ら、まずは安全を確認しよう」

 零が魔眼を作り出す。

[零:バロール:偏差把握]

 レイが両手をかざすと、わずかに屋敷の色が暗く変わる。重力をかけることによって屋敷内に生命体がいないか確認する。

「……生命反応は、ない」

「よっしゃー」

 鉄男が扉を無造作に叩き割る。

「おいっ、鉄男」

 零がたしなめるが、鉄男は揚々と館に入っていく。

 鉄男は感慨にふける、一週間前から何も変わらない、あの時は幸せだった。

 そう佇む鉄男の肩にワンが手を置いた。

「遺産を探さないといけない、今は……」

「そうだな、だがどこにあるか……」

「場所きいてないのかよ」

 広々とした廊下に木彫りの置物、普段見ることのない豪奢な作りに二人は居心地が悪くなっているようだった。

「場所?」

「どこになにがあるかぐらい、聞いてないのか?」

「ああ、そういうことか、電話」

 そう鉄男が右手を突き出すと拳が変形し、収納されていた携帯電話が飛び出した。宙を舞う携帯電話を、元に戻った右手で掴み取った。

 そしてスピーカーフォンを押し、紅姫の番号に電話をかける。

「はい、わらわじゃが、お主は誰じゃ?」

「てつおじゃ」

「おお、鉄男この機械妙だのう、鉄男の声が聞こえるぞ」

「そりゃそうだ、そのために持っているんだから」

「ほうほう、それで、鉄男どうした」

「遺産の場所を聞き忘れていたから、それを聞きたくてな」

「言っておらんかったか、そうかそうか。場所は地下じゃ。隠し戸があるはず、わらわはそのあたりはよくわからんが」

「地下への道は?」

「じゃからわからんと、……なんなら、屋敷を破壊してもらってもかまわんぞ」

 そんな茶番をよそにワンが床を探っている。

「映画とかではこういうところにだな……」

 そしてワンがバンと床を叩くとカポッとはずれ梯子が現れた。

「ここに入り口があるぞ」

「さすがだ、よくやったワン」

 鉄男はぎゃーぎゃー喚き声をあげる携帯電話を握り潰し、そうワンへと歩み寄る。

「お前は上司か!」

 そう、零は鉄男の頭をはたく。

「あ、ありがとう」

「何のお礼だ」

「お前らうるさい。仕事は早く終わらせよう、それが俺のもっとうだ」

 そうワンは梯子を下りていく、二人は続々と後に続いた。

降りてくると、わずかに光の届く、だだっ広い空間が広がっていた。そこは全て土間で、中心だけ、一段上がって畳の部屋になっていた。そこは鉄格子で囲われている。

[零:バロール:偏差把握]

「特に誰かがいる気配はないみたいだ」

 そう零は出現させた魔眼をポケットにしまう。

 鉄格子の狭い空間には小さなちゃぶ台が置かれており、その上にはノートや紙片が無造作に置かれていた。

「鉄男」

 ワンが視線も向けず、声だけ投げる。

「ほいさ」

「こわせ!」

「よっしゃ」

[鉄男:ブラックドック:コンセントレイト、アームズリンク]

「あーむずりーんく! がしゃん」

 鉄男の右手が0.1秒で展開される。やや大ぶりの火器が姿を現し、強力なマズルフラッシュが暗い部屋を照らす。

 そして、鉄男が全弾打ちつくし、右手を収納し終わる、そこには。

 依然と変わらない姿でそこに佇む鉄格子の姿があった。

「ええええええええ!」

「おい、ワン、残ってるぞ」

「てへっ、でももろくなったよ」

「役立たず!」

 そして鉄男は鉄格子にタックルをぶつける。その勢いで今度こそ鉄格子が粉々に崩れ去る。

「これでいいのか?」

 誇らしげな鉄男。

「中を調べよう」

 そうワンがいい。

「これだから鉄男は」

 そうため息をついて零が鉄格子をくぐった。

 そして三人はまるくなってちゃぶ台を囲った。

ノートには大量の封筒が挟まっている。

 中をあけてみると、一つの封筒につき一枚、文字が入っていた。雑誌の切り抜きのもじが。

 零はそれを無造作に机に並べる。

『し、一番、か、ろ、て、人を。お前、大、切。な。う、や、の、殺』

「……」

「…………」

「……。これは」

「さっぱりわからない!」

 

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