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第六章 付喪神の国 (1)

      

      一


 輝馬は名前の知らない公園にいた。夕陽が遊具を黄金色に照らしている。砂場に小さなバケツとスコップが半分埋まっている。たぶん、誰かの忘れ物か。

 輝馬は公園の外へ走った。何か大切な用事を思い出したのだ。

「輝馬」誰かの声が呼んだ。「公園の外に出たら危ないぞ」

 とても懐かしく思った。

 それでそれでも急いでいるのだ。公園から道路を隔てて、ソフトクーリームのチェーン店が見える。バニラ・チョコ・ストロベリーの三段を重ねたコーンの看板が目印だった。右手に住宅街があり、左手に行けば駅前に出られる。

 公園と店を隔てる道路には、あまり自動車は通らない。一応、『止まれ』の標識があるので安全だ。

 とまれ、てるま。

 また、後ろにいる誰かが呼び止めようとする。

 輝馬は構わず公園の出口を突っ切った。左右も確認しなかった。いつも、ここは自動車なんて通らないのだ。いつもそうだ。

 道の真ん中に来た時、真横からけたたましいクラクションが響いた。

「危ない!」

 弾かれたようにそちらを向く前に、輝馬の意識は真っ白になった。


      二


 いきなり夢の世界から引きはがされ、輝馬は目を覚ました。顔や背中は冷や汗で濡れていた。鼓動がまだ激しく脈を打っている。

 右隣で大の字のまま眠っている総太を起こさないように、ゆっくりと布団から抜け出すと、外にある手洗いを向かった。氷を入れたような冷水は顔の汗だけでなく、眠気までそぎ落としてしまったが、おかげで意識が鮮明になった。

 あの夢は何だったんだろうか? あまりにもリアルだった。それでいて既視感があった。そうだ、自分はあの公園を知っている。あそこに通った事がある。

 なのに、肝心な記憶は薄れていた。夢というのは起きてしばらくすると記憶が薄れるというのは、どうやら本当らしい。

 予兆がなかったわけではない。里桜の話を聞いていた時に感じた、妙な感覚。あれと夢と関係があるのかもしれない。

 時間は午前五時。周りはまだ寝静まったままだった。

 ついでに、父からメールがないか確認してみたが、着信はなかった。先日、合宿に参加すると言った時、父は反対しなかった。「行ってこい」とそれだけしか言わなかった。いつか、喧嘩した時からの溝は横たわったまま残っている。

 このまま大人になるまで父と仲直りできないかもしれない。どこで間違ったのだろう。月子に関わったから? 貴史の万引きを止めたから? 自分が八百万の声を聞けるようになったから? 一体どこで間違ったのか、見当もつかないでいた。

「相沢くん?」

 隣で寝ていた幸弥がいつの間にか起きていた。

「ゴメン、起しちゃったね」

「気にしないで。僕はいつもこの時間ぐらいに起きるから」

 薄明かりの中に、幸弥の顔は白く浮かぶ。まだ幼さを残しながらも、父親に似た総明さが面影として瞳に出始めている。子は親に似るものだ。

「いきなり変な事を聞くけどさ、幸弥くんはお父さんと喧嘩した事とかない?」

「あるよ。昔、神社の本殿で遊んじゃった時にお尻を叩かれた。でも、それは僕が悪い事をしたからなんだ」

「お父さんを嫌いになったりとかした?」

「最初はね。でも、すぐに忘れちゃった」

「進路はどう? 幸弥は中学受験とか考えてる?」

「僕は全然ダメだよ。輝馬くんみたいに頭も良くないから。お父さんも自分の将来は自分で決めなさいって」

 実達にノートや教科書を隠されていた時、勉強が遅れていた分を教え合っていたが、彼の理解力は決して悪くない。

「輝馬くんは受験するんでしょ?」

「分かんない。決心がつかない。受験勉強だって今から始めるようなもんだし」

「輝馬くんなら大丈夫だよ」

 今更、受けたいのかどうかも分からない。将来が見えないのだ。中学の制服を着た自分は思い浮かばない。友達と一緒に部活動に励んで、また数年後の高校受験に控えて塾通い。そんな光景がどうしても想像できなかった。もしかすると、また、自分は眠ってしまうのではない。目を覚ました患者が、また何らかのはずみで再び昏睡に陥る可能性もある。深谷先生もそう言っていたのを思い出し、輝馬は「未来が見えない」と小さく漏らした。

「未来が見えないって……?」

「僕には、七歳の春から去年のクリスマスまでの人生がゴッソリ抜けている。だから、その間にしておくべき経験がない。その空白のせいで、今を生きるという意味が分からないんだ。これからどの道に進んでいいのか」

「輝馬くん……」

「いっそのこと、まだこれがまだ夢の続きだったらいいのにって思ってしまう。それか、また昏睡してしまうとか――」

「そんなの言っちゃ駄目だ」

 まだ声変わりしていない中性的な声で、幸弥が静かに言った。いつもは見せない真剣な眼差しが突き刺さり、輝馬は思わず目から逃げかけた。

「僕は自分の人生とか将来を、君ほど深く考えた事はない。でも、輝馬くんは今を生きているよ。僕や美紀ちゃんや福田さんと変わらない。だから分かるよ。この世界は君の夢じゃないし、まだ輝馬くんはまた眠ったりなんかしない」

「ゴメン。僕はなんか変だろ?」

「変だよ。でも、ここの住職さんと比べるとまだまだだよ」

 輝馬につられて、幸弥も小さく笑った。

「ありがとう、幸弥。合宿に誘ってくれて。さっきまで僕は自信を失くしてた」

 今から言うとするのを信じてもらえるだろうか。いや、信じるか信じないは、もはや関係ない。秘密を共有するに値する存在に出会えたのは確かだった。

「……言わないでおこうと思ったんだけどさ、実は、僕には目が覚ました時から不思議な力が――幸弥?」

 彼は枕に顔をつけて眠っていた。二度寝し始めた親友に事情を話す機会をそがれ、輝馬は苦笑いした。まあ、いいかな。また今度にしようと枕に頭を乗せ直した。

 その“今度”は、輝馬が思う以上に早くやって来た。


      三


 翌日、輝馬達は、静貞寺からしばらく歩いた先にある博物館に訪れた。地元の歴史をテーマにしているが、建物の規模は公民館と隣接しているだけあって、あまり大きくない。展示のブース自体、円周の通路を歩いただけで出口に着くほどだった。

 展示には歴史の授業で見た事のあるような品々が置かれていた。土器や銅鐸、埴輪、展示の中心には、原寸大の竪穴式住居があり、人形の石器人が二体鎮座している。誰かの悪戯なのか、片割れの頭にはちょんまげのカツラを被らされていた。

「なんで、わざわざ丹波まで来てさ、歴史の勉強なんかしないといけないわけ?」

 美紀が欠伸を漏らしながら言った。総太は空調の真下に当たるベンチで、腹を出して寝そべっている。

「でも、教科書ばかり読んでるから、子やって実物を見るのも悪くないよ」

「お利口さんの幸弥と相沢には楽しいかもね」

「自由研究のネタにもなるよ」

「今時、自由研究に縄文時代とか弥生時代とか、まるでコピペしたみたいな感じになるからやだな」

 輝馬はもう自由研究のネタは決まっていた。八百万の神様についてで、参考文献はすでに図書館から調達済みだった。よくよく考えてみたら、今回が小学生最後の自由研究である。 

 ブースの出口を抜けた時、一人の学芸員と目が合った。結構恒例に近い感じだが、まだ腰が曲がってはいない。

 輝馬は軽く会釈してやり過ごした時だった。

「そこの君!」

「僕ですか?」

「君しかおらん。そのリュックに背負っているのは何だね?」

 老人の瞳は白く濁りかけているが、まだその奥には好奇の光が宿っているようだった。輝馬はリュックから月子を出して、老人に見せてあげた。

「ほお……これは驚いた。まさか、今頃、拝めるなんて夢みたいだ」

「彼女を知ってるんですか?」

「うむ。この人形は、藤原実家の娘、凪児姫を似せて作られたものだ。少なくとも、昔に博物館から亡くなった本物と非常に似ている」

(輝馬くん)月子の声が聞こえた。(この人が言っているのは本当よ)

「輝馬くん、近くの林で昆虫採集するから行こうよ!」

 博物館の外から幸弥が呼んでいる。輝馬は遅れて行く旨を伝えて老人のいる場所に戻った。この機会はきっと偶然ではない予感がした。忘れていた課題に突破口が開いた気がした。

「あの、学芸員さん、その話を聞かせてくれませんか?」

「今時礼儀正しい子だ。うちの孫とは大違いだよ」

 山川という名の老人に勧められてベンチに座った。開け放たれた建物の入口から涼しい風が吹き抜けている。

「私は歴史が好きでね。よくここに通ったり、他の発掘された場所を廻ったりしているんだが、とくに平安時代が好きでね、当時の風俗や暮らしを調べている。その中に、藤原氏という氏族がいた。学校の教科書に出てくるのが、藤原道長、頼道の親子だな」

授業の聞いた事のある名だった。

「確か……藤原氏の始まりは藤原鎌足で、中大兄皇子と共に蘇我入鹿を滅ぼした大化の改新が有名ですね」

「ほお、よく知ってるね。その藤原氏は大化の改新以来、着茶と権力の基盤を築いていき、平安時代には、道長が天下をほしいままにした。その際、何十もの分家がいたんだが、これから話す家実もその一人だった。もっとも、教科書に載るほど有名ではない。朝廷の実権を握るのに成功した本家とは違い、地位もそんなに高くない小さな貴族だった」

 有働と名乗った学芸員は、一度、眼鏡をかけ直した。

「実家には一人娘がいた。名を凪児といった。数少ない文献によると、実家が五十の頃にできた娘らしい。小柄でかわいらしく元気のあった娘を、父の実家は大そうかわいがったらしい。しかし――」

「しかし?」

「凪児が六つの時に、都で流行り病がまん延した。道の往来には死体が溢れかえるほどの惨状だった。そして、凪児姫もまた罹病してしまった。今と違って医療なんてものはなかった時代だからね、実家は娘を助けるために、修験者や陰陽師、あらゆる加持祈祷に頼って奔走したんだ」

「でも、助からなかったんですね?」

「ああ。愛娘を失った実家は悲しみに暮れた。やがて、著名な人形師に依頼した。凪児姫の遺体を似せて一体の人形を作らせた。それがこの人形だ」

 子供を失った父親はどうしても諦めきれずに、亡くなった子とそっくりの人形を作らせるなんて。どんな心境だったのか、輝馬には想像もできなかった。

「実家って人は、どんな思いで凪児人形を置いたんでしょうか?」

「現代の感覚からすれば普通ではない、そう言ってしまえば簡単だが、それだけ娘に対する愛情が深かったんだろうな。私も娘がいるから気持ちが分かる」

「その人は?」

「もちろん、健在だよ。今は東京に住んでいる」

「それで、この人形はその後どうなったんですか?」

「実家の死後、親戚から他の貴族へと点々と持ち主が変わっていった。藤原氏、平家、源氏、北条家、足利家、わずかな文献でその所有が記載されているのみだった。最も近い歴史では、戦国大名の一人、山名氏の家臣、堺氏が所有していた。そこから先は歴史の闇に消えてしまった」

 長い年月を様々な持ち主を経て、魂を得たナギニは月子の魂を人形に、自ら人間に取って代わった。一体、今頃、どこで何をしているのだろうか?

「でも、どうしてこれが凪児姫の人形と分かったのですか?」

「両目が翡翠になっているからだよ、見てごらん」

 輝馬はそう言われて確かめると、確かに人形の瞳には緑色の輝きが薄っすらと残っていた。(私も気がつかなかった)と月子が答える。

「当時、人形に宝石をはめ込むという発想はなかった。そして、これらの石には不思議な力が秘められていると、昔の人は思ったのだろう。父の実家は、娘を象ったこの人形に、いつか我が子の魂が宿る事を願ったと思う」

 もしも、ナギニの正体がその子供であるなら、父親の記憶が残っているなら、月子の体を取り戻す手立てもあるかもしれない。

「輝馬くん」

 里桜が博物館に入って来た。

「どうしたの、福田さん?」

「妹さんがいなくなったの」


      四


 輝馬は、山川老人に礼を残してから急いで寺に戻ったが、里桜の言う通り、部屋の中は輝馬のリュックだけしかなかった。愛奈が持って来ていたキャリーバッグはない。そう言えば、今朝も外に出たがらなかった。何か考え事をしている様子だった。

 よく見ると、リュックの上に書置きが置いてある。


『急用を思い出したから、先に帰るね。 愛奈』


 たったそれだけのメッセージだった。開いた口がふさがらず、輝馬は妹に電話をかけた。黙って何を考えているのか分からなかった。

 コールが七回目ぐらいで出た。

(何?)

「何じゃないだろ! 何でお兄ちゃんに何も言わないで帰るのさ?」

(だから書いてんじゃん。用事ができたって)

「何の用事?」

(秘密)

「あのさ、愛奈。一度父さんと母さんと混じって話をしようと思ってるんだけど、合宿の間に言っておきたかったんだけど」

(今更、一緒に暮らすつもり?)

「今更じゃない。今からでも間に合うよ」

(輝兄はパパとママを説得したいの?)

「うん」

 相手は黙り込んだ。泣いているのかと思ったが、どうやら笑っているようだった。クスクス声が漏れる。

(やっぱりさ、わたしと輝兄って兄妹なんだね)

「どういう事だよ」

(考え方が似てるもの)

 その時、電話口で駅のアナウンスが聞こえた。梅田駅の到着を告げるものだった。(ねえ、明日、パパの誕生日だったのを知ってた?)

「え……あ、そう言えばそうだったね」

(明日には帰ってくるんでしょ?)

「うん」

(家に帰るのを絶対遅れないでよ)

「なんで?」

(いいから。もう駅に着いたから切るね。……わっ!)

「どうしたの?」

(すごい霧。こんなの……初めて……)

 ノイズが流れて、愛奈の声が小さくなった。

「もしもし? もしもし、愛奈、どうしたの?」

 通話がいきなり切れた。

 輝馬はもう一度通話を試みたが、信じられない事に『おかけになった電話番号への通話はおつなぎできません』と流れた。愛奈が電波の届かない場所にいる事になっているが、梅田駅がそんな辺鄙な場所ではなかったはずだ。

 ……一体何があったんだろう?

「相沢!」バタバタ走って来たのは美紀だった。すごい慌てようだった。「急いで来てよ」

「今、それどころじゃないんだよ」

「いいから!」

 美紀に腕を掴まれて無理やり、本堂から母屋にある居間に連れてこられた。幸弥や里桜、他の子供たちもテレビの前に集まっている。

「一体何があったの?」

「これ見て」

 テレビでは速報のニュースが流れていた。そこに映っていた映像に、輝馬は釘づけになった。真っ白な映像にかすかにビル群の隙間を、線路が何本も這っている。わずかに見える梅田駅の空撮。テロップが右上に出ている。『梅田駅周辺に大規模な霧が発生、交通機関は麻痺』、『濃霧注意報発令』など。

(梅田駅上空に来ております。本日未明に発生ました濃霧により、阪急梅田駅、JR大阪駅等を始めとする交通機関はいずれも運行の停止を余儀なくされております。見て下さい、建物のほとんどは目視では確認できません)

「本当に珍しいものだな。こっちでもたまに見かけるが、あれはもやみたいなものだし、第一、朝方に出るものだ。こんな真昼間に、あんな濃い霧が出るとはな」

 住職が腕を組みながらニュースを眺めている。

「うちの神社、お父さん大丈夫かな?」

「なあに。地震や津波じゃないんだ。晴れるまでじっとしていれば何もない」

 あの霧が単なる自然現象なら害はないだろう。だが、このタイミングで妙だった。さっきから連絡の取れなくなった愛奈といい。

 その時、窓を突風が叩いた。それに混じって(輝馬どの!)と八百万の声が聞こえた。いつもと違って切羽詰まっている感じがした。輝馬は一人で部屋を出ると、耳を澄ませた。

(号外の風の便りだ。大変な事が起こった)

(どうしたの?)

(ナギニが反乱を起こした)

(ナギニ? まさか、人形の)

(我々、八百万に決起を訴えている。彼奴の力で命が与えられた物もおる)

(あの霧もナギニの仕業なの?)

(左様。あの中では恐ろしい事が起こっている。まったく信じられん。人の世を変えるつもりだ)

(ちょっと待って、あそこには愛奈が、僕の妹が……)

 風はやんだ。遠く空では雲が近づきつつあった。テレビでは全国で天気が崩れてきているらしい。注意報、警報の知らせが増えている。

 輝馬は携帯でもう一度、愛奈に連絡しようと思った矢先、着信がタイミングよく鳴り響いた。相手は愛奈だった。

「もしもし、愛奈、大丈夫か?」

(お兄ちゃん……助けて、パパとママが……)

「何があったの。今どこにいるんだ?」

(魂を取られちゃった。わたしもあいつに……きゃっ!)

「愛奈?」

 輝馬は何度も呼びかけるが反応はない。だが、誰かの息遣いが聞こえた。何となく、その主が妹ではない気がした。

「誰だ?」

(来るがいい)

 くぐもったような、女の声だった。

「お前、ナギニか?」

 小さく笑う声がする。

「おいっ!」

(来ぬと、この子が死ぬぞ)

 愛奈がこいつのそばにいる。おそらく逃げられない状態にあると分かった。

「愛奈に手を出してみろ。絶対に許さないぞ。元の人形に戻してやる」

(なら来るがいい)

 それだけを言い残して、通話が途絶えた。輝馬の頭は混乱していた。

「相沢くん?」

 幸弥が心配そうに見つめていた。

「悪いけど、僕は今から梅田に帰らないといけない」

「そんなニュースで見たでしょ。今は危ないよ」

「愛奈がいるんだよ。あの霧の中で」

「福田さんから聞いたよ。でも、きっと何ともないよ」

「それが問題でさ。僕が行かないと変な事が起こってしまう。おじさん達には黙っていて」

 輝馬は荷物を取りに戻ろうとした際、幸弥が行く手を塞いだ。

「ダメだよ。行かない方がいい」

「危ないのは分かってる」

「なんかおかしいよ。あの霧もそうだし、相沢くんの様子も変だ。今の電話はなんだったの?」

 やっぱり聞かれていたらしい。

「家族が心配なだけさ。無事が分かれば連絡するから。幸弥はあの二人に上手くいっておいてくれ」

 輝馬は門をくぐって、寺の階段を下りかけた時、幸弥がまたついてきた。

「僕も一緒に行くよ。僕も家族が心配だから。それに――」

「それに?」

「美紀ちゃんに怒られる時は一緒に怒られてほしいから」

 彼女に黙って抜け駆けしたと分かれば、笑ってすませてくれるはずがない。

「ああ、そうか。分かったよ、一緒に行こう」

 二人は長い階段を急いでおり始めた。

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