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ほしのごしそんさま。  作者: ひろつー。
エピローグ
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エピローグ

 さあ、最終話ですっ! 張り切ってイッちゃいましょうっ!

挿絵(By みてみん)

   エピローグ


 ――数日後。


 夏休みの真ん中に一日だけ設けられた、九星高校の登校日。

 市道を走り去る一台のリムジンの運転手は、黒いサングラス越しにうっすらと笑みを浮かべた。


 学校への道のりを歩く刻任紫音の両側には――短い黒髪の清楚な美少女と、明るくウェーブした髪の派手な美少女。


 紫音の右側を歩いていた黒髪の少女が、

「ねえ、紫音くんっ」

「何? 双芭さん」

「……わたくしのことは、下の名前で呼んで下さい」

「う!? うん。えと、せ、“星崋さん”?」

「……はいっ!」

 そしておもむろに紫音の片腕を抱え、

 ぎゅうっ!

 その華奢な身体を押し付け、嬉しそうににっこりと微笑んだ。


 それを見ていた左側の明るい髪の少女が、

「なあ、紫音」

「何? ルルナさん」

「オレの名前、漢字でこう書くんだぜ? ホラ、オレの生徒手帳見て、覚えてくれよ」

「あ。 “瑠琉奈”って、こう書くんだね。いい字だね、うん、覚えたよ」

「……よしッ!」

 そしておもむろに紫音の片腕を抱き、

 ぐにゅっ!

 その豊満な身体を押し付け、幸せそうににっこりと微笑んだ。


 このとんでもない――この学校の男子生徒なら、いや、地球上の男という生き物なら誰もが羨むに違いない両手にレアメタル状態の中、刻任紫音は思考する。


(ああ、やっと。やっと僕は。女の子を、このふたりを好きになれたと思う。僕はもう、『植物系男子』なんかじゃない。『人間』になれたと思う。そして、僕とこのふたりから繋がる未来は――)


 そんな幸せそうな三人の背中を、少し後方で離れて見守る制服姿。

 それは、『マダあたしは目的を達成していないゾ!?』との理由で、しばらくはこの時代に居座る事にした、



 ――刻任イオ。



 この統合された『新宇宙(ネオユニヴァース)』は、文字通り新しい宇宙。

 イオにとっては『過去』であり、紫音たちにとっては『未来』となる悲しい出来事が、上手くすれば回避出来る可能性はある。

 しかし。それ以外の歴史に影響を与えない様に、となると困難を極める事は明白だ。下手をすると、また自分自身の消滅などの深刻な事態を招きかねない。


(……デモ。全く気に入らないケド。アノ妹ヤロウの言った通リ、未来へ向けて前を向いて生きていれバ、あるいハ……)

 残念ながら今現在、元の時代に残したイオ特製アンドロイドからの時空通信によると、そういった状況に変化は無い。

 そしてイオは、変わらず貧弱な自分の胸をしげしげと眺め、ぽつりと呟く。


「……コレで、良かったのカナ…………?」


 この身体には、紫音以外にも星崋を始めとした、それこそ星の数ほどの様々な先祖の血が流れている。当たり前と言えば当たり前の事実を、ようやく強く認識した刻任イオ。



「『星乃(スター)継承者(サクセサー)』、カ……」



 さらにイオは、祖父である『究極(アルティメット)科学者(サイエンティスト)』――刻任レオン博士とその後継者である自分の頭脳の由来を、密かに解き明かしてもいた。


 それは、刻任委音。


 勿論、自分たちは彼女の直系の子孫ではない。でも、双子の兄である刻任紫音の中にも、彼女と共通の遺伝子は確かに存在していた。

 ただ兄の中では発現せず、静かに眠っていただけ。

 そしてその脅威の遺伝子は、『究極(アルティメット)頭脳遺伝子(ブレイン)』――双芭星崋の遺伝子と融合して更に高次元な物へと昇華し、隔世遺伝としてレオンの代で発現した。


 つまりは、そういうこと。委音との直接戦闘中に失敬した髪の毛から解き明かした事実。


(果たしてあたしハ、コノ奇跡の様に紡がれた星の数ほどの遺伝子ヲ、未来へと繋げるコトが出来るのカナ? いつかあたしのご先祖さまたちの様ニ、コノ宇宙のドコカにいる、『運命のヒト』を見付けテ)


 しかしその事実を、《時間(タイム)跳躍(ジャンプ)》を行使して確かめる事は出来ない。何故なら、イオが居た時代より未来へ《時間(タイム)跳躍(ジャンプ)》を成功させた人の例は、まだ記録が無いのだから。

 そして何より。それは、自分の『運命のヒト』探しは、自分の手で。自分の力で……。


(…………………………………………………………………………サテ)

 途端に、イオの瞳が凶悪な色へと変貌する。


「――グフフのフ!! 紫音のヤツ、『僕はふたりとも同じくらい好きだよ~ん!』なーんて宣ってるケド! ホントのトコロはドウなのカ? ホントはドッチがより好きなのカ? あたしの非合法オリジナル《マキナ》――《恋愛(ロマンティカ)格付器(レーティンガ)》で、包み隠さず暴いてやるカラッ!」


 イオの高速でのコードサイン形成に応えて、星の腕時計型 《マキナイト・コア》――『シリウスⅡ』が妖しく輝き、イオの眼前にイオにしか視認出来ない3Dスクリーンが展開される。

「じゃあマズ、第二位カラ! グッフフフフフフフフフのフ…………フ? フタリッ!?」

 思いもよらない格付け結果に、動転するイオ。


(フタリ!? エ、エエエェエエ!? セイカもルルナも九百六十レーティンガデ、同点二位!? ジャ、じゃア一位ハ? シ、紫音のヤツ! 『僕は女の子にじぇーんじぇん興味ありましぇ~ん!』なーんて詠ってたクセニ! マ、ママママダ他にも好きな娘ガ――ッ!?)


 そこでイオは、ふと思い当たる。まさか、まさか紫音が一番好きな娘とは――

(モ、もしかシテ! あのボク口調の妹ヤロウカ!? ソウ言えバ、消え際に『またね♥』ナーンテ意味深なコトホザいてたシ! マ、マサカあたしに隠れて逢い引きヲ……ッ!?)

 イオの脳裏に、双子兄妹の禁断の逢い引きシーンが展開される。

「ジッ、自分と同じカオを好きになるなんテ、全くどうかしてるゾ!? ヘンタイじゃないカ? ソ、ソンな禁忌! たとえ神さまご先祖さまが赦してモ! ご子孫さまであるコノあたしがゼーッタイに赦さナ………………………………………………………………ア」


 続いて九百九十レーティンガで第一位に表示された、名前と顔の立体映像。

 それを見たイオは、その場で完全に固まり……、その顔が、火星の様に真っ赤に染まった。



 ――ソ、ン、ナ。



「ア、アハハのへ。マッ、マサカ、ソンナ、コト。コ、壊れてんのカナ? コレ」

 イオはいつか観たクラシック映画よろしく空中の3Dスクリーンに向かって四十五度チョップをかますが、その震えた左手は空しく宙を切る。


(ド、どどどどどどうしヨウ……? コ、コレじゃあ元も子も子孫もナイッ! レ、れれれれれれ恋愛禁止、恋愛禁止…………ッ!)

 当の紫音はふたりに寄り添われたまま、後方で錯乱しているイオにはまるで気付かず、どんどんと先へ進んで行ってしまう。


 さらにイオは、思い当たる。じゃあ、『自分』は? はたして自分はどうなのか?

(コノ《恋愛(ロマンティカ)格付器(レーティンガ)》ハ、本人に自覚のない深層心理内での恋心マデ、正確に表示するコトが出来るハズ……)

 そして震える指で、恐る恐るコードサインを形成すると、そこには――――――


 とんとんっ。


「どッワアアアアアアアァァアアア――――――――――――――――ッ!? (ぷすっ)」

 全く不意に肩を叩かれ、驚きの絶叫と共にその方向を振り向いたイオの頬に、誰かの人差し指が深々と突き刺さる。

「………………………………オ!? オマエハッ!?」




「初めましてやナ! ウチは『刻任リオ』! 紫音とイオノ、えート、三つ子の妹ヤ! コレまでチョット家庭の都合で月……イヤ、カンサイって国で別々に暮らしとったケド、今日カラ一緒ヤ。そういうワケデ、みんなよろしゅう頼むデ!」


 ――騒然。

 刻任紫音の妹が、増殖した。その事実に、ホームルーム中の教室内は大騒ぎとなった。


「えぇーっ!? 紫音君にまだあんな可愛い妹がいたなんて!?」

「しかもまたソックリ!? 三つ子だって? か、関西弁?」

「それに何だ!? あ、あのデカい……ッ?」


 やはりどうしても最初にそこに眼がいってしまう健全な男子高校生諸君。

 教壇の担任女教師の横に立った刻任リオは、そんな出来事は日常茶飯事とばかりに全く気にも留めない。しかし、


「アレ? アホのご先……ルルナはドコヤ?」

 どうやらリオは、瑠琉奈も紫音たちと同じクラスだと勝手に思い込んでいたらしく、その姿を探してキョロキョロと教室内を見渡している。


 後ほど本人から語られる刻任リオが戻って来た理由。それは、

『イヤー、ウチの《マキナイト・コア》――『ザ・ムーンⅠ』の調子が悪くってナ! 《時間(タイム)跳躍(ジャンプ)》の途中で危うく遭難しそうになっテ、慌てて引き返して来たんヤ。ひょっとしてイオ、オマエなら直せるんちゃうカ? それにコノ時代のお宝にも興味があったシ……、正直チョット高校生とかもやってみたかったんヤ! ナハハのハー♪』

 でもさらに本音は――やはりアホなご先祖が心配になった様であった。


 紫音の隣の席で、双芭星崋は驚きの表情を浮かべていたが、やがて何か納得した様な表情に変わり、紫音の方を向いて微笑む。


 ちなみに紫音と星崋、瑠琉奈の関係はまだ校内では知れ渡ってはいない。今朝学校に近づいた時、『さ、さすがにちょっとマズいよな?』との瑠琉奈のひと言で、ふたりは紫音から離れて校門をくぐった。星崋は少し、不服そうであったが。


 その星崋の斜め後方の席で、十一、二歳くらいの外見の少女――神無月カンナが、『ほほうこれは面白くなってきましたっ』とばかりにニヤニヤと笑っている。


 さらに少し離れた席で、

「ヤッベェー超可愛い! ……んだけど、俺、関西弁苦手だーどうするよ!?」

 と、おそらくは無駄な苦悩をしているチャラ男、白鳥圭。


 彼は気絶したまま花火会場に置き去りにされた後は怒り心頭だったが、成功報酬として小学生の頃に瑠琉奈に巻き上げられた昆虫や恐竜のトレーディングカードを返却してもらい、たったそれだけで機嫌を直していた。


 紫音から、ふたりと同時に付き合う事になったとだけ聞かされた彼はしばらく絶句した後、『バッ、バカなッ!? テメーこの野郎ッ! ありえねー何だそのギャルゲーみたいな美味し過ぎる展開は!? さ、さすがは俺の弟子といったトコかー!?』と、紫音に手荒い祝福を敢行し、『でもまー。ドコの馬の骨だか知らねーヤツらに持ってかれちまうよりも、紫音だったら安心かー! どーせお前何にも出来ねーだろー?』と、同時に何故か無理矢理納得していた。


 紫音の後ろに座った刻任イオは、親の仇を見る様にリオの胸の辺りを睨みつけている。

 だがその口元は微妙に緩んでおり、本当は嬉しいのか嬉しく無いのかは判断出来ない。


 そして最後に。刻任紫音は、思う。


 自分の名前が書かれた黒板の前に立ち、こちらの視線に気付いて呑気に手を振った挙げ句、中指と小指を立てた未来風ピースサインを繰り出しているもうひとりの子孫は、ひとりめと同じく明らかに超の付くトラブルメーカーだろう。


 そして星崋と瑠琉奈との、不思議な三角(?)関係。


 甲斐性なんておそらくゼロの自分に、果たしてそれが維持出来るのだろうか?

 今日も、いやこれから当面、間違いなく今まで以上に大変な毎日になるだろう。


 そして、今回の件で。

 未来というものは、確かに定められた絶対不変のモノではなく、何かのきっかけで変わってしまいそうな脆く儚いモノだと実感した。


(――なんて、人生だろう)


 でも。

 それでもいいと、紫音は感じる。

 自分の人生は自分で決めて、課題は自分で解決し、道は自分で切り拓いていく。

 そう。これからは、自分の力で、自分の意思で。今という時から繋がる未来を確かなモノに。

 だっておそらくそれが――『生きている』という証なのだから。

 そして、もうひとつ。



(以前さんざんバカにされたけれど……。女の子にキスしたら、ちゃんと子孫が出来たよ。しかもふた組も。――ねえ、母さん)




「ワリーなオマエら。オレの補習が終わるまで教室で待っててもらってよ!」

「大丈夫です、瑠琉奈さん。わたくし、先ほどまで生徒会に顔を出していましたから」

「オー、“アホのご先祖”! ウチも紫音とイオに校内を案内してもらっとったカラ、退屈せーへんかったデ!」

「アホアホ言うな“バカ子孫”! 気分悪い! それにな、学校ん中で『先祖』言うのヤメろ! 今は他に人がいねーケド、一応秘密なんだろうが」

「分かったデ! “アホのルルナ”」

「表へ出やがれ!」


「ウルさいゾ!? 紫音が起きちゃうダロ?」


「あ……、悪いイオ。紫音、席に座ったまま寝ちまってんのか?」

「うふっ。紫音くんの寝顔、とっても可愛いですね?」

「ホンマカー? ナンか机に突っ伏したままヨダレ垂らして薄ら笑いしとるシ、正直キモいデ。えっちな夢でも見とるんちゃうカ?」

「紫音にはそーいう欲求が無いっテ、お昼ゴハンの時に説明したダロ?」


「(……ちょっぴり、残念です……)」


「「「―――エ!?」」」

「な、何でもありませんっ! 瑠琉奈さん、一緒に、が、がんばりましょうねっ!?」

「おう……………………ぅあ!? 何だ星崋、い、“一緒”って!?」


「だって瑠琉奈さん。紫音くんにそういう興味がないのでしたら、わたくしと瑠琉奈さんが一緒にお勉強して、その、子孫の為に、が、ががががんばらないと……っ!」


「ああ、そう……………………なのかッ!?」


「それに、最初も一緒でしたから、その……、最後までずっと、ずっと一緒ですよねっ?」


「ゔ!? ゔあゔあゔあゔあゔあゔあ……ゔあッ!? は、鼻血がッ!?」

「だ、大丈夫ですかっ? ……はい瑠琉奈さん、ティッシュです」

「すまねえ星華……」

「っタク、昼間っカラいったいナニを想像したんヤ? コノ“エロ先祖”」

「何だと!? やっぱりテメーは一度キッチリ躾けて……」


「ウルさいって言ってるダロ!? コノ“バカ親子”!」

「お!? 親子じゃねえ……ッ」

「ウルさいのはソッチやデ、コノ“ペッタンコ姉貴”」

「ヤンのかコノーッ!!」


「ちょ、ちょっと皆さん、本当に紫音くんが起きてしまいますよ?」

「ぐ……。そ、そうだ! オイ誰か、マジックとか持ってねーか?」

「グフフのフ! ソウくると思っテ、ちゃんとホラ、用意しといたヨ?」

「さすがだなイオ、いい仕事だ。コレって油性か?」

「設定されたヒトにしか見えない、特別製だヨ」

「? まあいいや。おい星崋、あのな……」


「えっ? 瑠琉奈さん、よろしいのですか?」


「いーから、オマエから書けよ。コレはおまじないってヤツだよ」

「はい、ではわたくしから……」

「次はオレだな……」

「次はウチやデ……」

「! あ、あたしモ……」


 そう。それはモノをなくさない為のおまじない。

 呑気に眠る紫音の顔には、落書き(額に“肉”でなく“草”とか)と共に四人の名前が寄せ書きの様に書かれていた。


 それぞれにとって。全員にとって。


 『大切なヒト』を。『大切な絆』を。


 もう、一生、二度と、絶対に、永遠に、無くさない様に。



 ――かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた、かた……



 この無限に広がる時空の何処かで。


 『刻の歯車』は、今日もゆっくりと廻り続ける。

           

                                   ――了




 皆さま、ご完読ありがとうございますっ!楽しんで頂けましたでしょうか?

 すでにお気づきかもしれませんが、本タイトルの『ほしのごしそんさま』というのは、何もメインヒロインのイオだけのことではないのですねっ! 星の数ほどのご先祖さまの血を引いているのは、他の全てのキャラクター、そして現実世界の私たちも‥‥。

 残念ながら、お別れの時間が近づいてまいりました。皆さまの心に何か少しでも残すことが出来たのなら本望ですっ! いつの日か、またお会い出来たら嬉しいですっ! それでは皆さま、ごきげんようっ! さようならっ!


 ――追伸っ! この物語のヒロインのひとり、『鋼鉄の瑠琉奈』たちの異次元同位体が大活躍する別のお話、『ザ・ムーンテイカー!』のほうも、ぜひチェックしてみてねっ♪ 

 http://ncode.syosetu.com/n7826cg/

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