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ほしのごしそんさま。  作者: ひろつー。
ホシのご子孫さまたち
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ホシのご子孫さまたち

   第十三章  ホシのご子孫さまたち

 

 そして、刻任紫音は思う。


 そんな状況の中、思う。

 自分はこれまでずっと、周りに流されて生きてきた。風に吹かれるままに、水に流されるままに、時の過ぎゆくままに。

 『植物系男子』のあだ名のとおり、自分の意志で物事を決めたコトなんて正直なかった。


 だってその方が楽。だってその方が無難。

 これまではそれで何の問題もなかった。至って平穏無事な人生だった。

 それで大きく自分や他の人を傷つけたコトも無かった、ハズ。

 『植物系』と呼ばれてもしょうがないと納得していた。実際その通りだったから。


 そう。これまでは。


(でも本当に僕は、このままで良いのだろうか? それで本当に僕は“生きている”と言えるのだろうか?)

 優しい親と教師に勧められて――近所の高校に、進学した。

 超女好きの親友に勧められて――クラス一の美少女に、告白した。

 未来から来た子孫に勧められて――隣のクラス一の美少女に、告白しようとした。


 そして、今。


 人生で初めての、かつ人生最大の抜き差しならない状況下で。

 ヒトの運命と存在が左右されるという、この究極の土壇場で。

 再会した双子の妹に勧められて――どちらかを、選ぼうとしている!


 ……この数ヶ月の内に出逢った彼女たちは。

 全員が全員。それぞれが自分自身の意思で、強烈に“生きて”いる。

 そして自分も、彼女たちの様に―――――――――いや。

(僕は僕に。刻任紫音は刻任紫音に。今回だけは。今度こそは。自分自身の意志で、決めるんだ! そして、自分自身で護る! もう僕は、『植物』なんかじゃないっ!)

 そう―――――――――

 


(――――――僕は、『人間』刻任紫音に、成るんだ―――――――――)



 差し出したその手が、強い力で、ぐっと掴まれる。


 眼をつむっていた星崋と瑠琉奈は、その感触に同時にびくっと肩を震わせる。


 次の、瞬間。


 腕を手前に引かれ、浴衣のふたりは前のめりにバランスを崩す。


 そしてその頬を、優しく誰かに支えられ―――――――――

 


 ふたりの可憐な花弁の様な唇は――全く同時に、誰かひとりに奪われた。

 


 犯人(ホシ)はもちろん――『刻任紫音』。



 上から見たら三角形を作る様に。

 紫音は星崋と瑠琉奈の頬をくっつけ、ふたり同時に口づけを敢行したのであった。

 さらに、隣り合っていた星崋と瑠琉奈の唇まで、しっかりとくっついてしまっていた。


 紫音とイオの、親族同士でのハプニングをノーカウントとするなら――それは、三人同時のファーストキス。甘くとろける様な柔らかい感触が、三人それぞれの唇に伝わる。


 とある真夏の夜の、小さな大三角形。


 驚きのあまり一瞬眼を開いてしまった星崋と瑠琉奈は、やがてその状況を呑み込むと――ゆっくりと無抵抗に両眼を閉じた。



「「………………………………………………………………………………んっ」」



 ふたりの甘い吐息がかかり、紫音はその唇をゆっくりと離す。と同時に、星崋と瑠琉奈の膝からがくりと力が抜ける。それを両腕でしっかりと抱きとめた紫音は――最後の花火が打ち上げられた、夏の大三角形が輝く夜空へ向かって、こう宣言した。



「僕は! 刻任紫音は! 双芭星崋さんと萌木ルルナさん、ふたりとも好きだっ! 同じくらい好きだっ!! だから、ふたりとも僕のモノ! だから、ふたりとも僕の将来のお嫁さんになって――両方の子孫を残してもらうんだああああああああああぁぁぁぁあああああ――――――――――――――――――――――――――――――っっっ!!!」



「――――――――――――――――――――――――な…………ッッッ!?」

 『ダークライオン』刻任委音は、絶句した。

 あの弱虫だった兄が。あの、自分ひとりでは下着さえも決められなかったお兄ちゃんが。

 今、まるで戦国武将か中世の王の様に。自分の好きな女は両方手に入れると言っている。

 なんて、我侭。なんて、自己中心的。なんて、傲岸不遜。


(――でもそんなコトが、赦されるハズがない! そんな答えが、正解のワケがないッ!)

 重婚が禁じられている、というこの国この時代の事情もあるにはある。だがそれ以前に、

(――そ、そんなコトッ。『宇宙の歴史』自体が赦すハズが―――――――――)



「は、はい……。わ、わたくしは、瑠琉奈さんと一緒なら、それで、いいです…………よ?」

「オ、オレも、いや、わ、わわわたしも、星崋と一緒なら、それが、いいです…………ぜ?」



 紫音にしなだれかかったまま、真っ赤な顔をした浴衣の少女ふたりは、しおらしい声を絞り出した。


 ――がちゃっ! がちゃり! かた、かた、かた、かた、かた、かた………………


 『黒乃時空管理者(ブラックキャッツ)』のエースである委音には、その音が聴こえていた。これまで別々に廻っていたふたつの異なる『刻の歯車』が噛み合い――一緒に廻り始めた音を。



「――まッ……………………まさ、か……………………? まさかッ! 『平行宇宙(パラレルスペース)』が――そのどちらも消滅しないまま、ひとつの『新宇宙(ネオユニヴァース)』に統合されただと……ッ?」



「イオちゃんっ!」

「リオッ!」

 消滅が回避され、透けていた身体が元に戻ったイオとリオに気付き、星崋と瑠琉奈がふたりを抱き起こす。

「ナ……ナン、ダ……?」

「ウ、ウチラ……助かったン、カ……?」

 そして紫音は、まるですっかり元のヘタレに戻ったかの様に、へなへなと情けなく尻もちをついて地面にへたり込んだ。


「……良かっ……た……、ふたりとも。あ、あは! あははははははははははははは!」



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