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ほしのごしそんさま。  作者: ひろつー。
僕のご子孫さま
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僕のご子孫さま

   第十一章  僕のご子孫さま


「ハア、ハア…………ヤ、やったカ……?」


 イオは残された二枚の翼でふらふらと飛びながら、呼吸を整えていた。

 地上では花火の見物客たちが、『新作の花火だ!』とか叫んで盛り上がっている。


(簡単にくたばるヤツじゃナイだろうケド、行動不能ぐらいには出来たカナ? ……デモ)

 もう、ほとんど動けない。もはや、《時間(タイム)跳躍(ジャンプ)》も《空間(スペース)跳躍(ジャンプ)》も使えない。

 無理もない。七つの標的を並列操作し、さらにそれぞれを倍加させたのだ。

(あたしの『ヴァイタル・エナジー』は残り僅かダ。ソウ、モウあたしハ――)


 花火の残滓が消え。

 月明かりが、無情にも浮遊する漆黒のシルエットを再び照らし出す。


 無傷――ではない。

 三角形の耳型アンテナを持つ前衛的な形状のヘルメットはひび割れて、ジジジ……と変なノイズを発生させ、背中に八枚あった筈の黒い翼はイオ同様、下の半分が失われている。


「――サスガハ、太陽系一ノレベルヲ誇ル『火星立工科大学・大学院首席』トキトウイオ。ソシテ、『マキナの父=刻任レオン博士』ノ血ヲ引ク者。《マキナ》ノ扱イハ、実ニ秀逸ダ」

「うグ…………」


「――ダガ! 宇宙ノ生マレデハ、『ヴァイタル・エナジー』ノ総量ガ乏シイヨウダナ? ボクノ勝チダ!! トキトウイオ!」


「ぐハッ!?」

 翼が四枚になり、その瞬間飛行速度は激減したとはいえ、ふらついた獲物を捕らえるには十分すぎた。

 一瞬で間合いを詰めたダークライオンの左手が、イオの細い喉を掴んで締め上げる。


「――一緒ニ来テモラウゾ? トキトウイオ。ソシテオマエハ――」


(苦しイ。苦しいヨ)


 薄れていく意識の中。イオは、いつか行った海で溺れかかった時の事を思い出す。


(助けテ。助けテ助けテ助けテ助けテ助けテ! ……助けてヨ――――――――紫音)


 星の輝きを失いつつある瞳から涙の粒がぽろりと零れ、流星の様に地上へ向けてきらきらと落下する。


(デモこんなトコロに、誰も助けに来られるワケガ――――――)



「僕のイオに、手を出すなあああああああああああああああああああああぁぁぁぁあああああ―――――――――――――――――――――――――――――っっっ!!!」



「――ガッ!?」


 突然真横からヘルメットを殴打され、動揺したダークライオンはイオから手を離してしまう。そして自分をこの空中で殴った犯人の方を向き――眼を疑った。

「い、いたたたたた……」

 殴った左手の拳を押さえながら、この不可視領域(インヴィジブルフィールド)内で浮遊しているのは――



 刻任紫音。



 その背中には、不出来ながら四枚の灰色の翼が輝いている。

 そして、生まれて初めて人を殴ったかの様に痛そうにしている少年の左手の小指には、


「――星形ノリング!? ……トキトウイオノ《マキナイト・ビット》カ!?」


 紫音は、《空乃(エアリアル)(ウインガ)》や《不可視(インヴィジブル)障壁(スクリーン)》等の高度な《A (クラス)マキナ》は、イオから一切習ってはいなかった。その難易度は、一朝一夕で会得出来るレベルではないからだ。

 教わったのは、B (クラス)の《(アンテ)重力場(グラビティカ)》まで。それも、本当に《マキナ》を行使してしまうといつ指輪が壊れるのか分からなかったので、指でコードサインを形成する練習だけ。

 しかし。


 刻任紫音は、イオがこの時代に来てからの一挙手一投足を、全て鮮明に覚えていた。

 その細い指先で形成される複雑なコードサインも――全て。


 それを陰ながら反復練習し、彼の器用な指先で、この場に於いてほぼ完璧に再現した。

 そして、いくら『マキナの父=刻任レオン博士』の祖父とはいえ。本番一発で《A (クラス)マキナ》の平行起動をやってのけ、自分を助けに来てくれた先祖の姿をちらりと確認したイオは――紫音の両膝の傷から流れる血に気が付いた。

 つまり。一度失敗して墜ちたのだろう。次も失敗したら命の保証は無い。

 それでも、



『僕が君を、護るよ。(君の、先祖として)』



 その単純極まりない約束の言葉を思い出したイオは、満足そうにうっすらと微笑むと――力尽きたかの様に地表へ向けて落下を始めた。

「い、イオっ! そうだ、えーと、《(アンテ)重力(グラビ)》…………うわっ!」

 紫音は、いつか階段から落ちた自分を助けて(?)くれた様にイオを救おうとするが、まだ打ち上げられていた花火のひとつが紫音のすぐ側でドンッと破裂し……驚いてコードサインの形成に失敗してしまう。

 慌てて紫音は慣れない飛行でイオの後を追うが――間に、合わない!


「イオ――――――――――――――――――――――――――――――っっっ!!!」


 そして、川の水面にイオの身体が叩き付けられる――寸前、黒い影がその姿をさらった。

「ダ、ダークライオン……さん!? あ、ありがとうござい、っていや! イオを返せっ!」

 気を失ったイオを両腕で抱え、空中に静止するダークライオン。その眼前までへろへろと飛んで行った刻任紫音は――――――――――――――


 信じられないモノを、見た。


 先ほどの紫音の一撃で完全に割れたのか、それとも何かしらの制御が失われたのか。

 これまで被っていた漆黒のヘルメットは消失し、代わりにそこに在ったのは―――――



 同じ顔。



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