歓迎
「イッテーな。ホント何なんだよ」
制服に着いた埃を払う。登校初日だと言うのに新品の制服が汚れてしまった。
零を吹き飛ばした集団はもうどこにも居なくなっていた。
「あの赤髪の子を追いかていたのか。誰なんだろう?」
さっきぶつかった子を思い出す。ぶつかる寸前に見えた左胸のバッチ。そこには「Ⅰ」のバッチが付けられていた。この学校ではその学年の数字のバッチを付けることになっている。そのことから彼女も零を同じ新入生ということになる。
「部活の勧誘か何かか」
となると彼女は特待生か何かなのかもしれない。
「まぁ、考えてても分からないから教室に向かおう」
校門を潜る。ここから新しい生活が始まるんだと新鮮な気持ちになる。乗降口に続く道をしかっりと歩んでいく。その途中には桜の木があり今も咲き乱れ新入生である零達、新学期を迎えた在校生達を歓迎している。その他にも小さな花壇がありそこから大きな木が植わっている。その木は生徒を乗降口に導くように植えられている。
「入学おめでとうございます」
乗降口に向かう道の真ん中辺りに差し掛かったところで声が降ってくる。優しい女性の声に聞こえた。声のする方をを見上げても誰もいない。あるのは青い空。
零が少しの間、空を見上げていると
「驚かせてすいません。私はこの学校の教師で柏木と言います」
その場に居ないが声はする。多分、魔法で声を届けているのだろう。
「いえ、大丈夫です」
「それなら良かったです。それで、え~と・・・本校の新入生、桑島 零君ですね?」
「あっ、はい。そうです」
「それなら、これをどうぞ」
そう言うと空から1枚の紙がヒラヒラと零の目の前に降りてくる。
「これは?」
「はい。それはあなたのクラスです。まだ時間かあるのでその教室に荷物を置いて少し待っていてください。講堂もその紙に書かれているのでその通りに行ってください」
「分かりました。ありがとうございます」
「いいえ、それでは改めて。我がメルキオール学園へようこそ」
そう言って声の持ち主である柏木先生の気配がなくなる。零は貰った紙に従い自分のクラス。1年E組に向けて歩き出した。
零は紙に書かれた目的地に向かっている。紙に書かれた地図は普通に書かれたものではなくやはり魔法が使われていた。マップには矢印。そして、矢印の周りには幾つもの四角いものが描かれている。零が向きを変えるとその矢印も向きを変えていた。即ち、矢印は零自身。しかも零が向いている方向も分かる。周りの四角いのは教室だろう。
そして、矢印を導くように1本の線が通路に沿ってある。その線の辿り着く先には1年A組とある。ここまで書かれていて迷う方がおかしい。
そのマップは1箇所を拡大できたり学校全体を見ることが出来たり行きたい教室の検索機能も付いている。最早、紙ですらなく小型の端末となっている。
マップに従い1―Eへとやって来る。
ガラガラガラッと扉を開く。
教室には数人がいた。友達と話をする人、携帯をいじる人。
黒板に目を向けると座席表が張り出されていた。それに従い自分の席へと向かう。
自分の席に着いてもすることが無かった零は自分の携帯を取り出し時間が来るまで携帯をいじる事にした。
しばらくするとメールが届く。差出人は『桑島 綺羅』。
「姉さんか」
メールを開く。
『学校に着いたかな?
学校が違くなった分、寂しくなるけど頑張ってネ(´p・ω・q`)
何かあったら連絡してね!すぐに駆け付けるからね(*^▽^*)』
「まったく、姉さんは心配性だな」
でも、このメールのお陰で勇気付けられたのは間違いない。
『ありがとう、姉さん
その時はよろしくね
でも、大丈夫だから心配しないで』
送信完了。
(大丈夫、俺1人でも何とかやれるからさ)
この学校でどんな事が起きようと自分の力で乗り越えて見せる。そう自分に言い聞かせる零だった。