新学期の朝
また、新しく書き始めました。悠夢 小説第三弾。
零の成長を温かく見守って下さい。
ヨロシクお願いします。
カーテンの隙間から零れる光が目に当たる。だんだんと眠気が覚め現実の世界に呼び戻される。目をゆっくり開き頭もとにある時計を見る。時刻は6時を回った所。
ゆっくりとベットを出る。まだ、寒さの残る空気に体が震える。
カーテンを開けると外はほんの少し暗さが残っているがジョギングをする人や犬の散歩をする人がちらほら目に入る。
今日から4月。新学期の始まりである。
真新しい制服に腕を通す。今まで着ていた中学の制服と違うせいか新鮮な気分になる。
2階から降りリビングへと向かう。リビングはキッチンと繋がっている為、キッチンで朝食の準備をするリズミカルな音がリビングに向かう廊下まで聞こえてくる。
「おはよう、母さん」
リビングに入り母親に挨拶する。
「おはよう、零。今日も早いわね」
母親も息子に挨拶を返す。
「母さん、手伝うよ」
と、腕捲りをする。
「いつもありがとうね」
母親もその言葉に甘え手伝ってもらう。
零は慣れた手付きで進める。今時、料理が出来る男子はそう珍しくないがなかなかの腕前である。
零は母に指示されずとも料理を作っていく。零には何を作るのかが分かっている。その為、次に何をどうするかを手際よく進める。
「零、そろそろ二人起こしてきてくれる?」
一通り作り終わり零にお願いする。
「うん、分かったよ」
嫌気を感じさせないでそれに応じる。あたかも零の日課のように。階段を上り目的の人物が眠る扉の前で止まる。
「理奈、入るぞ」
寝ているかもしれないが一応ノックをし部屋の中に入って行く。すると、一羽の緑色の小鳥が零に近づいてくる。
「おはよ、カトレア」
と、カトレアと呼んだ小鳥に挨拶する。カトレアは妹の理奈が買っている鳥である。
理奈の部屋は必要最低元のベット、タンス。部屋の角に勉強机がある。色物はあまり無く女の子の部屋としては少し物足りない。
「理奈、起きろよ。朝だぞ」
ベットに近づき声をかける。
「ん・・・・・・」
声に反応し女の子の可愛らしい声が漏れる。少女はゆっくりと目を開け零を見つける。
「おはよう、お兄ちゃん」
可愛らしい少女が布団から顔を出し寝ぼけた感じで零に言葉を返す。寝ていたせいで綺麗なセミロングの髪がボサボサになっている。
「おはよう、朝飯出来るからそろそろ起きろよ」
「うん、分かった。すぐに行くね」
目を擦りながら言う。零も理奈が起きたことを確認し部屋を出る。
そして、もう一人が待つ部屋の扉の前に立つ。
「姉さん、入るよ」
妹の理奈と同様にノックをするが返事はない。姉の綺羅の部屋は一言で言うと女子の部屋。所々可愛らしい物が置いてある。理奈とは対照的である。
「姉さん、朝だよ」
「・・・・・・」
声をかけるが返事は返ってこない。その代わり寝息だけが聞こえてくる。仕方ないと思いベットに近寄り綺羅の肩を軽く叩いて起こす。
「姉さん、朝だって。朝飯も出来てるよ」
「・・・・・・」
さっきよりも大きめに言うが全然起きる気配がない。
これではダメだと思いさらに強く揺すり大きな声で起こす。
「姉さん、起きろって!朝だぞ!」
さすがの綺羅も目を覚ました。
「もう~何?」
甘えた声で言ってくる。
「もう朝だよ!姉さん!」
「ヤ~ダ。まだ、寝かせて~」
さらに甘えた声で言ってくる。これが彼女の台詞なら抱きしめてあげたいところだが、相手は姉。そんな気にはならない。
「いいから起きろって!」
布団を剥ぎ取り腕を掴み強引に上体を起こす。
「イヤだ~。ま~だ、ねむい~」
ユラユラと上体が揺れ零の方にもたれ掛かってくる。
「ちょっ、姉さん!」
もたれ掛かったついでに零に抱きついてくる。
「ねむい~。零も一緒に寝ていいからもうちょっとねかせて~」
抱き枕のごときがっしりと零に抱きつきそのままベットに倒れこむ。
「寝る訳ないだろ!」
そんな零の訴えにも応じないまま零に絡みつきまた、夢の中へと戻って行く。
「姉さん、マジ起きないと怒るよ」
綺羅にがんじがらめにされ身動きができないでいる零が優しく言う。しかし、その言葉の中には怒りも籠っていた。
「はっ」
零の言葉に文字通りはっとする。
「零、お姉ちゃんのことキライになっちゃう?」
まだ、夢と現実の間にある意識で聞く。
「うん」
その答えに綺羅の意識が覚醒する。
「そんなのイヤ~」
そんな変な叫びが桑島家に木霊する。今日から新学期。零にとっては高校初の日と言う新しい日と言うのにいつもと変わらない日常が始まる。そんな感じで桑島家の、零の日常が始まる。