第45精霊
涼子に話し終えた友春はしばしの休憩をはさんで自分たちが初めてであった
場所である桜の木の下に茜を呼び出していた。
「ごめん……待った?」
集合場所に来た茜の眼はひどく腫れており、頬には涙が流れた跡のようなものがついていた。
「……いや、良いさ。さ、座れよ」
友春に言われて茜は友春の隣に座り込んだ。
「いや~季節が春だったらあの時と同じような状況だったんだけどな……
今は残念ながら夏の終わりごろだからな……桜なんかねぇな」
友春はそう言って苦笑いを浮かべながら綺麗な桃色の花びらが付いていない
寂しい木を見上げた。
この桜の木はこの街の復興のシンボルでもあり、精霊被害が相次ぐ中で
どれだけ周りの街から火の手が上がり木に燃え移ったとしてもまた春には
綺麗な桜を咲かせることで有名な木だった。
木の幹には炎で焼かれた跡らしきものが色濃く残っていた。
「……嫌だよぅ」
突然、茜の悲哀に満ちた声が聞こえてきて友春は茜に視線を移すと彼女は
眼からボロボロと大粒の涙を流して友春にしがみついていた。
「友春が死ぬなんて嫌だ! いっぱい話したいことあるのに!」
友春は茜の乱れっぷりに一つ、ため息をつきながらも彼女の頭を優しく二度三度、撫でた。
「そうだな……俺もお前と話したいことが山ほどある。だから、俺は
必ずお前の前にもう一度、生きて現れる。約束する。この桜の木に」
友春は茜の手を握り締めながらそう言うと茜は涙でグシャグシャの顔を
上げて友春の唇のちょっと、左にそれた部分にキスを落とした。
「あの日から好きです…………もう、加奈さんからも告白されていると思うけど
……すべてが解決したらこの返事をください」
「……あぁ。約束する。生きて、お前の前に現われてお前に告白の返事を必ずする」
そう言って友春は彼女の頭を二度、三度撫でた。
友春が決意を固めている頃、ユウが指示した場所には多くの人たちが集まっていた。
みな、奴隷になって生きた方が良いという決断をした者たちだった。
「ひぇぇ~。見てみて! 人間がいっぱい集まってるよ!」
シロは空中に浮きながら六柱の者たちに抱きついて、はしゃいでいるが眼下に人間を
見ているその目はまるで、ゴミを見るかのような目でありほかの精霊たちも同じだった。
無論、ユウも同じだった。
「……やはり、人間に猶予を与えたのは間違いだったか…………ま、どのみち
全ての人間を殺すということには変わりはないがな」
ユウはテレビの前で奴隷になるものは生かすというような旨を話したのだが
それは人間を試すための試練のようなものだった。
仮に人間が今、持っている全兵力をユウたちにぶつけてくれば少しは
ユウの考えにも変化が表れるはずだった――――――しかし、ほとんどの人間は
精霊という存在の危険さを肌で感じており、誰の頭の中にも戦うという
選択肢は存在しておらず、奴隷になるという選択肢しかなかった。
「さあ、最後の晩餐を楽しむがいい。人間どもよ」
そして、翌日。
「みんな、準備は出来たか?」
友春のその一言に彼の賛同者たちは皆、首を縦に振り肯定を示した。
皆、その手には何かしらの武器を握っていた。
しかし、それはあくまでも人々を守るための道具であり、決して精霊を倒すための
道具ではなかった。
「桜。お前のところの部隊で人々の安全を守ってくれ」
「ああ、任せろ。久し振りの隊長らしい仕事だ」
桜は肩を二度、三度ぐるぐると回しながら嬉しそうな表情を浮かべてそう言った。
桜の部隊だけではない―――――桜が所属している超解の隊員、全員が今、友春という
人類最後の希望のもとに集まっている状況だ。
友春がユウに負ければ人間の絶滅は確定し、勝てば生存。
究極の賭けだった。友春が勝つかユウが勝つか――――――だが、それは神崎友春という人間を
一切知らない素人の考えであり、彩加たちからすれば賭けでも何でもなかった。
ただ単に、人類最後の希望の勝利を確信している――――――ただ、それだけ。
そこに疑いなどという無粋な感情は一切存在していない。
皆が皆、友春の勝利を心の底から確信していた。
「まさか、私たちが人間などに手を貸すとは。キヒッ!」
「……サクヤ、トレース。よく見ておきなよ。人間の末路を」
「「はい」」
エックスたち、精霊も友春のもとに就いていた。
「んじゃ、行こうぜ! 人間の未来を救うために!」
その一言の直後、皆の気合いのこもった声が響いた。
人間VS精霊の最後の――――――――本当に最後の究極の戦いが始まる。
さー! どんどん、更新していくぞぉぉぉぉぉ!




