第41精霊
「ねえ、ユウ様! 人間はどうするの!?」
人間が認識できない空間に身を潜めていた六柱の生き残りたちとユウは
人間界をこれからどうするかについて考えていた。
自らの力で生み出したらしき紅色の玉座に座り、ユウの膝にはシロが座っていた。
「そうだな……そろそろ人間にも飽きたころだ。滅ぼそうか」
「やった!」
人間からすればあまりにも理不尽な決定にシロ達、六柱は嬉しそうに口角をニンマリと上げた。
「お兄ちゃん。あ~ん」
「あっ! ズルイっすよ! 友ちん! あ~んっす!」
「あら、じゃあ私も」
「ねぇ~友春ぅ~。私の作ったのも食べて~」
今、友春は病室で男の人生最大の夢でもあるハーレム状態で朝ごはんを食べていた。
彩加、加奈、茜、涼子。誰がどう見ても美人だと言うレベルの美少女達が
今、一人の少年を中心にしてその周りをスプーンを持って囲んでいた。
友春も満更ではないらしく、少々ニヤつきながら口元へ持ってきてくれる
食材を口に入れて咀嚼した。
「まったく! お兄ちゃんの食事を手伝うのは妹の役目なのよ!」
「違うっすよ! 食事を手伝うのは妹の役目じゃないっす!」
「二人が喧嘩している間にあ~ん」
「「ずるい!」」
その光景を見ていたエルンストとハモンは呆れたような表情を浮かべて
病室の端っこでチマチマと食事をとっていた。
「そう言えばハモン。サクヤの容態は」
友春が入院しているこの病院には精霊であるはずのサクヤも入院していた。
本来ならば入院させずに殲滅させるのが人間なのだが形はどうあれ、友春たちは
エックスによって助けられたようなものなので彩加がこの病院に入院をさせた。
「一命は取り留めたざんす。今はエックスとトレースがサクヤの
看護をしているざんす。うんうん、しているざんす」
「そうか」
友春がハモンの質問に答えた直後、勝手にテレビの電源が入った。
「な、なんだ?」
友春が怪訝そうに画面を見ていると画面の奥に映っているどこかのテレビ局のスタジオだろうか、
そこから空間が歪み、そこから一体の精霊が現れた。
『このテレビを見ている諸君。私は精霊の祖のユウという。
私は数万年前からこの地球に存在し、君たち人間を観察してきた。
ハッキリ言って君たちには失望した。あたかも地球を自らの物とし、
動物を殺し、植物を殺し、さらには同族で殺し合いまでも始めた。
よって……私は君たちを滅ぼすことにした』
その発言を聞いた瞬間、友春を含めた者たちの顔が驚愕に染まりあがった。
『猶予は与えない。今すぐにでも滅ぼしたいところだが……三日の猶予を与えよう。
我らの奴隷となれ。この条件をのめる奴は私が指示する場所まで来るがいい。
来た奴は生かしてやる。来ない奴は誰であろうと殺す。以上だ』
その発言を最後に、テレビの画面は砂嵐となってユウたちの姿は消えた。
病室の空気は最悪なものだった。誰も口を開こうとはせずに、思い悩んだような
表情をしていた。
「お、お兄ちゃん」
「……おそらくユウさんのもとに行った人たちも殺すんだろう」
「じゃあ、どうすれば」
茜の発言に友春はさも、あたりまえのことを言うように軽くこういった。
「簡単じゃねぇか。あいつらを倒せばいい。人間の底力を見せてやろうじゃねぇか」
「で、ですが相手はエックスすら一撃で倒した奴ざんすよ?」
「僕がなんだって?」
第三者の声が聞こえ、そちらのほうを向くとドアに身を任せてエックスが
もたれかかっており、その隣にはトレースに肩を抱かれたサクヤの姿もあった。
「エックス。何か用か?」
「用が無ければこんなところには来ないよ。ファーブニル。僕も協力しよう」
エックスの提案に友春たちは口をあんぐり開けて驚きを露わにしていた。
つい、数日前まで自分たちと戦っていたエックスが人間に協力するという内容と
等しいものを言ったのだ。無理はない。
「ファーブニル……いや、ここは友春君と言おう。君はどうやら精霊の力に
順応する体質を持っている。現に君は一時的とはいえレヴィアタンとファーブニルの
二つの精霊の力を宿した。ここにいる精霊の力を全て君に注ぎ込めば勝てるとは思わないか?」
「ふざけないで!」
エックスの提案に彩加は怒りをあらわにして怒鳴り散らした。
「つい数日まで私たちを滅ぼそうとしていた奴の提案を飲めっていうの!?
それにここにいる精霊の力を一人の人間の体に入れたら何が起こるかも分からないじゃない!」
「そうだね。最悪、崩壊してオジャンだ」
「エックス!」
彩加はエックスの発言に完全に理性を失い、青色のメモリを自らの手首に
刺そうとしたが後ろから腕を掴まれて阻止されてしまった。
「彩加。やめろ」
「お、お兄ちゃん」
「エックス。その提案に乗ろう」
またしても、病室にいた人物の顔に驚愕の色が浮かんだ。
「お、お兄ちゃん! なにが起こるか分からないんだよ!?」
「それでも…………彩加が、みんなが生きている今を……あいつらには壊させねぇ」
そう言う友春の表情は決意に満ち溢れたものだった。
「…………お兄ちゃんのバカ!」
そう言って、彩加は目から大粒の涙を流しながら病室から出て行ってしまった。
「……加奈さん。茜、涼子……彩加を頼む」
「まかせて」
加奈と茜、そして涼子は出て行った彩加を追いかけるべく病室から出て行った。
「エックス。何を企んでいる」
もう一つのベッドにサクヤを寝かしているエックスにそう尋ねると
エックスはサクヤの髪を撫でながら質問に答えた。
「何も企んじゃないさ。僕はあのユウって奴が気に食わないだけさ。
この僕があいつの駒になって手のひらの上で踊らされているのがね」
「そうかい…………で? 俺の中にここにいる精霊の力を入れれば最終的にどうなる」
「死ぬね」
エックスは友春の質問に何の躊躇いもなく最悪の結末を言った。
友春は、ふぅっとため息を一つついてベッドに横になった。
(死ぬ……か……彩加を置いてし死ねねぇな)
決断しなければならない――――――今から三日後には死ぬか生きるかが決まるのだから。
こんばんわ~。いかがでしたか?




