第39精霊
「な、なんなんだよ! そのエネルギーの量は!」
「………サクヤの反応が消えた?」
友春はエックスに怒鳴り散らすがエックスは
友春など、無視して別の方向を見ていた。
すでに彩加と友春の体は恐怖からガタガタ震えていた。
今までに感じたことのない量のエネルギー、そして勝てないという
圧倒的なまでの敗北感が彼らの中にはあった。
「……ひとまず」
―――――フッ!
「き、消えた!」
一瞬にしてエックスが先ほどまでいた場所から消えてしまい、友春は
左右を見回してエックスを探すと後ろにエックスがいた。
「返してもらったよ」
「あ、あれ!? お前いつの間に!」
エックスの手には友春が所持していた緑色の
宝石のようなものが彼の手に握られていた。
(見、見えなかった……どんな速さなんだよ!)
エックスはどこかからか残り二つの石を転移させてくると
口角をニンマリと上げて三つの石を見つめた。
「ようやくだ! これで僕の力は全て解放される!
これで僕はどんな存在にも負けない存在に」
―――――ドオオォォォォォン!
突然、エックスに向かって何本もの落雷が落とされた。
「友春さん!」
「よ~友春~」
「友春君」
友春の隣にハモンとエルンスト、そして加奈が降り立った。
二人ともボロボロの状態だったが喋れているあたり特に致命傷があるわけでもないらしい。
「まったく、人の話を邪魔しないでくれないかな?」
ハモンと加奈の雷を直撃してもなお、エックスには傷一つなかった。
「おぉ! 初めてみるねえ、エックスの霊解放は」
エルンストはエックスの真の姿にどこか興奮した様子で見ていた。
「そろそろ死のうか」
――――――ドシャッ!
「ん? ……サ、サクヤ!」
エックスが友春たちに向かって攻撃をしようとした瞬間、
背後に何かが落ちる音が聞こえ、振り返るとそこには胸に穴をあけ
大量の血で桃色の服を染めていたサクヤだった。
「サクヤ! サクヤ!」
エックスは持っていた石を三つとも投げ捨ててサクヤの元に駆け寄った。
「な、なんだ? いったい何が」
友春は目の前で起きている光景が一向に理解できなかった。
突然、サクヤが血だらけの状態でエックスの後ろに放り込まれた。
そこまでは分かったのだがなぜ、サクヤがそうなったのか、
誰が放り込んだのかが分からなかった。
「やあ、友」
「ゆ、優さん!?」
後ろから自分の名を呼ばれて振り返ると、そこには何故か優がたっていた。
「優! あんたなんでここに!」
「開けてもらったのさ」
一瞬、そのことに不信感を感じたが友春はすぐにその不信感をぬぐい去った。
自分たちが所属している組織には精霊が何体か在籍している―――そのことを思い出したからであった。
「友。その石をこっちにくれないか」
「あ、はい」
友春は優に言われて、近くに転がっている石を取り優にそれを渡そうとした。
「ダメだ友春! そいつは人間じゃない!」
「へ? さく」
「やれやれ」
――――――ザシュッ!
「お兄ちゃん!」
「友春!」
彩加と桜の叫びが聞こえた瞬間、突然、自分の右腕の感覚が無くなった。
友春は不思議に思っていると彼の耳にボトッと何かが落ちた音が聞こえて
そちらの方を向くとそこに落ちていたものは…………自らの腕だった。
「いやぁぁぁぁぁ!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ! うあぁぁぁぁぁ!」
「友春!」
彩加は兄の悲惨な光景に叫びをあげ、友春は凄まじい痛みに叫びをあげ、
桜はそのどちらともを助けるべく叫び、ハモンとエルンストは突然のことに何もできなかった。
「う、腕が! 腕が!」
「友春! 意識をしっかり持て!」
切断された友春の肩から夥しい量の血が噴き出していた。
「これだよこれ。この石が欲しかったんだ」
「優! なんでお兄ちゃんを!」
彩加は涙を流しながら優に怒鳴り散らすが優は彩加の叫びなどお構いなしに
三つの石を恍惚な表情を浮かべて眺めていた。
彼女の右腕は友春の血液らしき赤色の液体がビッシリと付着しており
着ている白衣も真っ赤に染まっていた。
「さあ、私の力よ。戻ってくるんだ!」
優は石を三個とも空高く放り投げるとそれぞれの色に対応した
輝きが発せられ、優の中に取り込まれた。
「来た来た来た! アハハハハハハハハハハハ!」
――――――ドオオォォォォォォォ!
優が高笑いする中、突然彼女めがけて隕石のようなでかさの球体が
彼女に何発もぶつけられた。
「よくも……よくもサクヤおぉぉぉぉぉぉぉ!」
エックスは気を失っているのか目をつむっているサクヤを姫抱きにして、
涙を流しながら優を睨んでいた。
「うわっ! な、なんて威力だ!」
桜は目の前で起きた凄まじい衝撃波を姿勢を低くしてなんとか
飛ばされずに済んでいるが友春と彩加の二人も桜が押さえているためか
普段の力が出せずに今に、飛ばされそうでそれはハモンたちも同じだった。
―――――ピッ! ピッ!
「がっ!」
一瞬、光が点滅したかと思うと突然
エックスが口から血を吐きながら膝を地面に着いた。
『弱い弱い。偽物の王よ』
爆煙から誰かの声と、誰かの影が写り込んだ。
「ゆ、優。あなたは一体なんなの!?」
彩加は爆煙に隠れている優に向かって、叫ぶと突然、強い風が吹き荒れ
煙を全て余所へ持って行った。
「なっ! なによあれ!」
彩加たちの目の前に現れた優の姿は異様なものだった。
先ほどまで黒髪だった髪は赤色に変色しており、右腕には炎がメラメラと
燃え盛っており左腕は完全に氷と化していた。
「僕が偽物って言うのはどういう意味なんだ!」
『うん、そこら辺を説明しよう』
完全に覚醒した優は子に場にいる誰にも負けないという自信があるのか
どこか、気の抜けた声音だった。
『まず、私は精霊であり精霊の祖だ。全ての精霊という存在は
私が力を少しずつ分離させて作ったものなのだよ』
「仮にそうだとしても一体、なぜ私たちを作ったざんすか?」
『それは暇つぶしであり、人間の可能性を見つけるためでもあった……とでも言っておこうか』
ハモンの質問に優は、表情を一切変えることなくそう言い切った。
「じゃ、じゃあ私たちの組織を作ったのも暇つぶしだったっていうの!?」
『あぁ、私はもうかれこれ数万年以上生きているのでね。ちなみに言えば
超解を作ったのも私だ。正確にいえば、作らせたのだがね』
優の言っていることに全員が、驚きを隠せないでいた。
今まで二つの組織は対立していたにもかかわらず、その創設者は
同一人物だと言われればその組織に所属し、事情に内通している
者ならば誰しもが驚いて仕方がないといえよう。
『そして、今君が纏っている霊装も私が考案したものだよ』
優は桜を指さしながらそう言うと纏っている服のようなもののポケットから
USBメモリのようなものを取り出して、それを彼女に向かって投げた。
「……これは?」
『それは霊装の設計図だよ。世界がのどから手が出るほど欲しがっているね。
もうそんなもの完全に力を取り戻した私にとって意味のないものだよ』
「じゃ、じゃあ!」
友春は未だに激痛に蝕まれている体に鞭を
うちながらも、立ち上がって優に一つ質問した。
「じゃあ、精霊に人間を襲わせたのもあんただっていうのか!?
それになんであんたは力を失っていたんだよ!」
『質問の多い子だ。まず、一つ目はYesと答えておこう。シヴァに
人間界を襲わせたのは私だよ。そして、二つ目に関しては宝探しさ』
「宝……探し?」
友春は優が言ったことを理解することが難しかった。
そして、ようやく理解した。
こいつは数万年も生きている生物……だから、自分で力を封印し
三つの石を宝にして精霊たちに探させた。
「そんな……そんなことが通じると思うのかよ! お前が暇つぶしって言った
ことでどれだけの人がこの地球からいなくなったと思ってんだ! お前が!
お前が精霊なんか生み出さなかったら桜も! おれの両親も死なずに済んだんだ!」
―――――――ゴオオォォォォォォ!
「お兄ちゃん! ダメ!」
彩加は炎を噴射して飛び立とうとしている
友春に手を伸ばすがその行動を起こすのが少し遅かった。
「おおぉぉぉぉぉぉ!」
『やれやれ、めんどくさい』
「うらぁ!」
―――――ドオオォォォォォ!
友春が優を殴りつけると、彼女を膨大な量の炎が包み込んだ。
「ハァ……ハァ……」
片腕を切断された状態で行動を起こしたためか、友春は肩で息をしていた。
「これで」
『これで終わりかい?』
「う、ウソだろ」
優の声が聞こえた瞬間、炎が一瞬にして消え去りそこから指一本で
友春の拳を止めている優の姿が現れた。
『炎のパンチはこういうものだよ!』
――――――ボコォォォォォ!
「がぁ!」
優は右腕の炎を燃え方を激しくさせ、そのまま友春の腹部を殴りつけると
友春は血反吐を吐きながら彩加たちのもとへ送り返された。
「お兄ちゃん!」
「友春!」
殴り飛ばされた友春を桜と彩加は慌てて近寄った。
「エックス様!」
すると、上から声が聞こえ全員が見上げると
上から紫色の鎧を着た精霊―――トレースだった。
「トレース!」
「これはいったい」
『よし、面白いものを見せてあげよう』
優がそう言って指をパチンと鳴らすと、彼女の後ろにエックスたちが
よく知っている数体の精霊が現れた。
「な、なぜ貴様らがこちらではなくそっちにいるのだ!」
トレースが叫ぶのも無理はなかった。
なぜなら、優の後ろに立っている精霊たちはエックスに忠誠を誓い、
部下として傍にいた六柱たちだった。
『この子たちはすべてを知っていたのさ。
そこにいる青年が偽物の王であるということを。さ、話はおしまいだ。
この世界にも用はないな、潰すとしよう』
優がそう呟いて、指をパチンと鳴らすと突然、立っていることすらままならないほどの
揺れが彼女たちに襲いかかってきた。
「お、おいおい。冗談はよしてくれ」
空を見ていたエルンストは顔を引きつらせながらそう言った。
そういうのも無理はなかった……なぜなら、今、友春たちがいる世界の
空にひびが大量に走っていたからだ。
『この世界は直につぶれる。逃げたければ逃げればいい、行くぞ』
そう言い残して六注のうちの残っている三人とともにどこかへと消え去った。
「ひとまず、私たちもここから帰るわよ!」
加奈の一言で全員がいっせいに走り出した。
新年一発目の更新です……やはり、一次創作は難しいですね。
まぁ、毎日更新していないからだということもあるのですが
見てくれている人が二次創作に比べて断然低いですね。
ま、あと最終章だけなのでもう少し付き合ってください。




