第34精霊
彩加が家で宣言をしてからはや一週間が経過した。
以前は家に電話が入り安全であることが確認されていたのだが今回は
本格的に家出をしたのか家に電話すら入らず情報は全く入ってこないので
怪我をしていないかなどの安否情報が全く分からにいた。
「彩加ちゃん見つからないですね」
「ああ……」
艦でも彩加の捜索は行われているのだが何故か一切情報が入ってこなかった。
レヴィアタンの反応を追跡しようとしても全く反応が出なかった。
「ところで最近の友の方はどうだ。あっちの方が重傷だろう」
「ええ、友春は学校でもどこかソワソワしていて普段の友春じゃないです」
一度、茜は心配になったので友春のクラスに行ってみると、
普段通りに見えるが1分に3回くらいのペースで携帯を
パカパカ開いては電話が来ていないかを確認していた。
「……彩加」
一方その頃、重症患者の友春さんはと言うと、学校が終わった放課後に
外を歩き回り彩加がいないかを見回っていた。
時折、仲のいいおばさんなどに彩加の事を聞いてみるがどれも空振りだった。
「あ~なんで怒ったんだろ」
『理由は分かってるじゃないか。お前が彩加を邪魔者扱いした。それだけだろ』
「……そうだな。俺なんかこの世にいない方がいいよな」
『おいおい、そんなこと誰が言ったよ』
「良いんだ。止めないでくれ。どうせ俺が悪いんだ、彩加の
気持ちに気付いてやれなかったクズの兄貴の俺が悪いんだ」
『あ~友春さん?もしも~し!』
彩加がいなくなったことにより極端なまでのネガティブ思考に陥ってしまっていた。
「は~誰か彩加の居場所知ってる人いないかな」
「あたいが知ってるぜ」
「そうだよな。知ってる人なんか………エ、エルンスト!」
急に第三者の声が聞こえたかと思うと友春の目の前に黒いローブを
来て死神を感じさせる精霊のエルンストが立っていた。
「な、何の用だ!」
「待て待て、あたいはお前と闘いに来たんじゃ
ないんだよ。まあ、戦いたいんだけどな」
「じゃあ、なんで」
「あたいはエックスを裏切ったんだよ」
「…は?」
目の前の精霊の言っている事に友春は理解が追いつかなかった。
エックスと言えば精霊の頂点でありまたエックスの命で精霊は人間を
襲っているというのに目の前の精霊は裏切ったといった。
「なんかさ~最近あいつ闘ってくれないんだよ。それに
あんたと闘っている方が何百倍も面白いからな!」
「そ、それで彩加はどこに」
エルンストに訊こうとした瞬間に友春の携帯が鳴った。
「はい、もしもし」
その頃家出を決行した彩加は家から下着やらなんやらを
一ヶ月分持ちだし優の別荘に住んでいた。
何故、別荘にいるのかと言うと組織に入った時点で彩加はまだ小学生、
万が一の時の為に優が彩加に自分の別荘の鍵を渡していたので
別に衣食住に困ることはなかった。
そしてこの別荘家主が家主なだけに、半ば要塞化している。
家の中にはトラップが仕掛けられており家全体を覆うように妨害電波を
ビンビン出しているのでテレビや携帯、ネットなどは使えないという
デメリットはあるが敵対組織などに位置を知られないという利点があった。
「ふん!お兄ちゃんのバーカ!」
ドゴォォォン!
彩加は別荘の地下室にあるサンドバッグに友春の写真を張り付けてそれを
何度も殴ったり蹴ったりして、写真がボロボロになれば事前に用意していた
コピーを貼り付けまたボコボコに殴っていた。
ちなみに、本物の写真は使わなかった。
彩加曰く「命と同じくらいに大切なものなんだから!」らしい。
「ハァ、ハァ。お兄ちゃんのボーーーーーケ!」
渾身の一撃を写真に叩きこんだ彩加は床に寝そべって息を整える。
「ハァ、ハァ、ハァ」
『凄いわね~。人間の女の子ってみんなこうなの?』
レヴィアタンはあの優しい性格+極度のブラコン…と言うか惚れている
男と喧嘩するだけでここまで変わるのかと驚嘆していた。
「さあね!お兄ちゃんが謝ってくるまで絶対に帰らないんだから!」
『それ以前に貴方が一人暮らしなんて出来るの?』
「出来るもん!」
『じゃあ、あの部屋の状況は何よ』
彩加がこの別荘に住み始めてから早一週間、家は凄まじく汚かった。
床に下着やら服やらが散らばっており布団はグチャグチャ髪の毛も
毎日、友春に梳かしてもらっていたのでどうやっていいのか分からず寝癖が凄まじい。
料理はそこそこ出来るが後片付けが究極にできず台所には皿が散乱していた。
「そ、それは」
『今まで友春に全部やってもらってたでしょ?洗濯、
炊事諸々の家事を貴方は手伝ったことがある?』
「だ、だってお兄ちゃんがしなくていいって」
『たとえあの子がそう言っても普通は何かしら手伝うはずでしょ?
掃除機をかけやすいように物を退けたりとか、食べた後の食器は
台所にまで持っていくとか。ずっと甘えてばっかり』
レヴィアタンの言う事に彩加は何も言い返せなかった。
『貴方、小学生の頃ほぼ毎日お友達と遊びに行ってたでしょ?』
地味に彩加は小学生の頃、ずっと家で兄と一緒にいるだけではなく
学校が終わればすぐに友達の家に行って遊びに行き、帰りは迎えに来てもらっていた。
『友春だって遊びたい年頃なのにそれを我慢して家事をしていたのよ?
それに学校の行事ごとには全部行ってくれたでしょ?体育大会があれば
平日でも学校を休んでまで、来てくれてお弁当を作ってくれて。授業参観
があれば学校を早退して見に来てくれたり懇談も、、
制服の洗濯も、み~んな友春がやっていてくれたじゃない』
「……」
『彩加があれが欲しいといえばアルバイトをしてまでお金を貯めて買ってくれた』
「え?あ、あれは援助金から出したって」
『援助金は生活費だけでしょ?』
過去の精霊被害により両親が死んでしまった子供たちには、施設に入れて
国が成人するまで面倒を見るというのが政策であるのだがその施設は
年齢で分けられていた。
『あの子は貴方が離れたくないって言ったから
施設ではなく援助金の方を選んだ』
「お兄ちゃん……」
レヴィアタンの話を聞き彩加は目から大粒の涙を流して泣いていた。
先程までの友春に対する怒りなどもうなかった。
早く会いたい、会って謝りたい――――そんな感情が彼女の心の中を支配していた。
「……電話する。お兄ちゃんに」
『そうしなさい』
彩加はポケットからレヴィアタンが宿っているメモリをテーブルの上に置き
電話をしようと受話器を取ろうとした瞬間
―――――――ピンポーン
「誰だろ」
客が来たことを知らせるインターホンが
鳴ったので彩加は受話器から離れ玄関を開けた瞬間!
「んん!い、嫌ぁ!」
「君には一緒に来てもらうよ」
突然、口にガーゼを当てられて喋れなくされると
目隠しをされて担がれ何かにいれこまれた。
「ここか」
先程の電話で優から彩加の居場所を伝えられた友春はひと先ず
エルンストとともに別荘に来ていた。
「お邪魔しま~す♪」
「ちょ!おい、勝手に……なんで開いてるんだ…まさか!」
頭に最悪のヴィジョンが思い浮かんだ友春はエルンストを突き飛ばして
家の中に入ると案の定玄関は荒れていた。
『ん?友春、レヴィアタンが近くにいるぞ』
ファーブニルに言われ部屋の中に入ると確かにメモリがテーブルの上にあった。
『よかった!友春大変よ!』
「さ、彩加になにかあったのか!?」
『彩加が!彩加が攫われたの!エックスに!』
こんばんわ~如何でしたか?
そろそろこの作品を終わらせることにしました。
この章で最後となります。それでは!




