第31精霊
「最近、売上が全盛期と同じじゃないか」
日下部邸のある部屋ではやや痩せ気味だが筋骨隆々の男性と加奈が話をしていた。
「父様、売上は下がってもいません」
「へ理屈は良い」
加奈の父親―――日下部総司は日下部グループのトップに立ち世界に名を知らしめている凄い人物であり
日本でもっとも金を稼いでいるとも言われている。
従業員は計り知れないほどそこで働いており実績は常に前年度を上回る会社であり
また、それが総司のモットーでもあった。
「それに聞いたぞ。どこの馬の骨とも知らない男とデートをしていたらしいな」
「そ、それは」
「その男は誰だ……よもや愛しているとでも言うまいな」
総司の言葉に加奈は慌てて否定を現す。
「そ、それはありません!あ、あの男は……」
普通に愛していませんを言おうとするのだがそれ以上口が動かなくなってしまった。
「愛していないのなら、まあ良い。お前は私の地位を継ぐ者だ。
一般人となど付き合うな。お前の男は私がきめその男と結婚し
跡取りを産んでもらわねばならぬ」
「で、ですが」
「黙れ!」
部屋に総司の怒号が鳴り響いた。
「もしも来月の業績がこれと同じなら…分かっているな」
「……はい」
加奈は肩を落とし部屋から出ていった。
「………私は…道具何かじゃない!」
加奈は顔を歪め壁に拳を打ちつけ自室へと戻り何かの準備を始めた。
「あ~筋肉痛だ」
エルンストと激しく戦いあってしまい超解の支部を壊滅させてしまった友春は
瓦礫撤去などを3日も手伝わされた為全身が筋肉痛になっていた。
「全く、お兄ちゃんたら」
「ほんとざんす」
「おうふっ!」
友春は彩加とハモンからマッサージを受けていたが案外心地いいらしい。
「超解に正体がばれたりしたらどうなるか分かってるの?」
「大丈夫だって。俺の知り合いが絶対に言わないって
約束してくれたし桜の部隊も助けてくれたお礼だって事で言わないって言ってたし」
「その桜って言う人は信じるに値する人物なんすか?」
「ああ、信じるに値する人だよ」
すると来客を知らせるインターホンの音が家に鳴り響いた。
「あ、私が出るざんす」
ハモンが一階へと降りていき来客を迎えに行ってくれた。
「あ、そうだ。新しく組織に入った人がいるの」
友春がいない間にも彩加は精霊と闘い続けており先週に
人間に協力すると申し出て彩加の属する組織に入ったという。
「小さな女の子精霊でね。確かシロっていう名前だった」
「へ~会ってみたいな」
すると階段の方からドタドタと慌てて上ってくる音が聞こえてきた。
「お邪魔するわよ」
「か、加奈さん!?」
突然、部屋のドアが開いたと思うと入ってきたのは
先日デートを終えたばかりの日下部加奈だった。
何やら大きな荷物を抱えている。
「あ、あんたは!」
「知ってるのか?」
「ええ、この人は元々私たちの組織にいて三体の精霊の内の
ハルピュイアが宿っている裏切り者の女よ!」
「………は?」
友春は彩加の言っている事に理解が追いつかなかった。
「いやいや、そんな訳」
「その子の言う通りよ」
加奈はポケットから緑色のメモリを取り出し友春に見せた。
「私はハルピュイアを宿し君達の組織に入った。でも、
超解の方が楽しそうだったから裏切ったの」
「な、なんで」
友春の問いに加奈は顔を歪めて答える。
「なんで?そんなの決まってるじゃない!精霊をぶった切れるからよ!」
加奈は大きな声で叫ぶとメモリを手首に当て緑色の鎧を身に纏った。
「か、加奈さんがハルピュイア?」
『そう、さあ、戦いましょうよ』
キィィィン!
加奈が友春に斬りかかろうとした瞬間に彩加の青色のジャベリンが2本の刀を防いだ。
「優!お願い!」
彩加がそう叫ぶと空から天井を突き破って光線が彩加と加奈に当てられ
2人をどこかへと転移させた。
2人が転移させられたのは広い海の上だった。
「あら、お譲ちゃんが相手?」
「そうよ。お兄ちゃんが出る幕はないわ」
彩加がジャベリンを振り回すと海の水が水柱になり彩加の周りへと集まっていき
その形を徐々に変えていき4体の水の龍が完成した。
「曲芸にすぎないわ」
「曲芸かどうかはその身で確かめなさい!」
4体の龍が加奈に放たれるが加奈は刀身が赤い2本の刀で水の龍を切り刻むが
水で生成されているのですぐにまた再生し加奈に襲いかかった。
「この海の上ではレヴィアタンの力を持つ私は最強よ!」
さらに加奈は海水を集め3体の龍を作り出し加奈に向けて放った。
「じゃあ、私も」
加奈が刀を交差させるとその交点からバチバチと音をたてて電気が発生し
次の瞬間には耳をつんざくような落雷が落ちてきて雷の龍へと姿を変えた。
「行くわよ!」
加奈が動き出すと同時に雷の龍も水の龍へと向かっていった。
「はあぁ!」
キィィィン!
2本の刀とジャベリンがぶつかり合い金属音を鳴らすとともに火花を散らした。
「どんどん行くわよ!」
加奈は刀を凄まじい速度で動かし彩加に反撃の暇を与えないような速度で
攻撃を追加していく。
「くっ!」
彩加は一度加奈から距離を取ろうとするが
「させないわよ!」
「な、なにこれ!?」
加奈の刀の刀身が電気となって伸びていき彩加に巻きついた。
「ビリビリするけど我慢しなさい!」
バチバチバチバチィ!
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!」
加奈が刀身に電気を伝わせ電流を流しこみ始めた。
「アハハハハハハハ!貴方じゃ相手にならない!そろそろ死になさい!」
一体の雷の龍が彩加に放たれるが彩加も水を集め今度はそれを凍らして
氷の龍を作りぶつけるが初めは均衡状態であった二つは徐々に雷の龍の方が
氷の龍を押していっていた。
「グゥゥゥ!」
「アハハハハハハ!消えろ!」
雷の龍が氷の龍を押しきり彩加を飲み込み大爆発を起こした。
「…ふふふ、真っ赤な英雄の登場ね」
ボオォォ!
爆煙の中から炎が加奈に向かって放たれるが加奈は刀で防ぎ
爆煙の方をじっと見ていた。
「彩加を殺させはしない」
そこには炎を身に纏った友春が妹である彩加を抱きしめ立っていた。
こんばんわ~。感想くだしゃいね~
あと11日ほど経ったら始業式だよ~(泣)




