第2精霊
「あ、お兄ちゃん」
「さ、彩加!?なんでここにお前が!?」
「彼女はこの組織の研究課の所長だぞ」
優はさらっと驚きの事実を告げるが友春はそんな場合ではなく
今の状況に頭の処理能力が付いていけていなかった。
「え、ええ!?いやいやまだ彩加は13ですよ!!」
「何を言っている彼女はもう10歳のころからここにいるぞ」
「ど、どういう意味だよ彩加!!」
友春は彩加の両肩を揺すりながら彼女に問いかけるが
彼女は全く答えようとしなかった。
「なんとか言えよ彩加!!」
「……ごめんねお兄ちゃん」
「そうじゃなくて!!俺が聞いてるのは何で
今まで黙ってたのかを聞きたいんだよ!!!」
「そこまでだ友」
「どいてくれよ!!今俺は彩加と!!」
すると何人かの黒い服を着た警備員の様な男たちが
数人集まって来て友春を拘束してある場所まで連れて行った。
「優、ファーブニルをお願い」
「任せろ」
「おい!離せよ!!おい!!」
友春はある部屋に連れていかれて椅子に無理やり座らせられ
縄で縛られていた。
「まあそんなカッカするな。友」
すると部屋の中に優の声が響いたと思うと
目の前の壁だと思っていた場所が突然開きそこには
優と何人かの白衣を着た研究者がいた。
「なんなんだよ!!彩加は俺の知らないこと知ってるし
俺は俺でなんか変な所に拘束されてるし!!!」
「むぅ!変な所とは何だ、変な所とは」
「思いっきり変なところじゃねえかよ!!一般人を
無理やり拘束してる時点で変な組織じゃねえか!!」
「さっきも言ったがもう君は一般人じゃない」
「はぁ?だから!!」
『なあ、助かりたいか?』
「だから何なんだよお前は!!」
『言ったじゃねえか、俺はファーブニル』
「お前も精霊かよ!!」
「副所長、これは一体」
目の前の部屋では友春が誰もいないのにも関わらず
一人で大声を出して喋っていた。
「まあ、多分ファーブニルとでも話しているんだろ、
それであれの準備はできているか?」
「ええ、ばっちりです」
優が近くにいた男性に尋ねると男性はポケットから彩加が持っていた
ものとは色違いの物を取り出した。
彩加のは青色に対して男性が持っていたのは赤色のUSBメモリの様なものだった。
「よし、あ~聞こえてるか?友」
『聞こえてますよ!!』
優はマイクを通じて部屋の中にいる友春と喋りはじめた。
「ひと先ず今の状況を説明しよう。君には一体の
精霊が憑いている。名前はファーブニルだ」
『それで?どうするんですか?』
「ふむ、実はなそのまま君に憑かせているとふとした拍子に
ファーブニルの力が解放されて甚大な被害が出てしまう」
『じゃあなんですか?他の物にでも移し替えるとか言うんですか?』
「お、勘が鋭いな。その通りだ」
優は友春のいる部屋に入り彼に赤色のUSBメモリの様
なものを見せると友春は少し驚いていた。
「え?それって」
「何だ知ってるのか?」
「色違いだけど彩加の部屋にあった」
「そうか…まあ、これを手首にあててみろ」
「は、はぁ」
友春は言われるがままにUSBメモリを手首にあてると
メモリが赤く輝きだし体の中から何かが抜けていく感覚がした。
「うむ、これで力が暴走することはない。余分な力は
このメモリの中に入ってある。緊急時はこれを体のどこかに
触れさせれば吸収された力が体に入る」
「はぁ~で、その緊急時って?」
友春が優にそう尋ねると優はさも当然のように彼に言った。
「決まってるじゃないか、精霊との戦闘時だ」
「は、はぁ!?お、俺精霊何かと闘いませんよ!!」
『おいおい!いい加減なこと言っちゃいけねえよ』
「メ、メモリが喋った!!」
『メモリの中で俺が話しているんだ、それはどうでも良い。
お前は俺が憑いた以上精霊と闘ってもらう』
「ふ、ふざけるなよ!!あんな化け物と闘えるわけねえだろ!!」
「まあ、落ち着け友」
「この状況で落ち着けるか!!」
すると部屋の中に彩加が入ってきた。
「どうしたのお兄ちゃん!!」
「彩加!!帰るぞ!!」
「ちょ!」
友春は彩加の手を掴み部屋から出ていった。
「どうしますか?副所長」
「彩加がいるから大丈夫だろう」
『おい!おーい!!』
「何だファーブニル」
『俺をこんな所に置いてけぼりにするな!!』
「ほほ~う」
『な、なんだよ』
優はニヤニヤしながらファーブニルが入っているメモリを
床に置いて部屋から出ようとすると叫び声が聞こえてきた。
『ちょ!ちょっと待てぇぇぇぇ!!!!話聞いていたか!?
俺も一緒に運びやがれってんだよ!!!』
「その様な命令口調で言われたらやる気が削がれるな~」
『……は、運んでください』
「ん~聞こえないな~」
『運んでください!!!』
「よろしい」
優はファーブニルの言った事に満足したのか満面の
笑みを浮かべるとメモリを手に持ち部屋から出ていった。
「お兄ちゃん!!お兄ちゃんてば!!!」
彩加は未だに自分の手を取りどこが出口なのかも
分からないのに歩いている友春に何度も声をかけるが
一向にこちらを向く気配はなかった。
「ねえってば!!」
「うるさい!!」
「お、お兄ちゃん」
友春はここ数年大声をあげて怒ったことはなかった、少なくとも
彩加の目の前では。しかし、目の前で大声で怒っている友春を
見て彩加はかなり驚いていた。
「何で隠してたんだよ!!何で言ってくれなかったんだよ!!」
「そ、それは……」
「……悪い、言い過ぎた」
友春は壁に沿って置かれていた椅子に座った。
それから数分間、二人の間に沈黙が流れ始めた。
「…巻き込みたくなかった」
「え?」
「お兄ちゃんを巻き込みたくなかったの!!」
彩加は目から大粒の涙を流し大声で叫びながら
友春の胸に飛び込んできた。
「さ、彩加!?」
「お兄ちゃんを巻き込みたくなかった!!だから…言わなかったの」
「……さ」
友春が彩加に話しかけようとした時突然施設内に
警報が響き渡った。
『精霊の反応を確認。職員はすぐさま持ち場につけ』
それを聞いた彩加は慌てて走っていった。
「……俺はどうしたらいいんだよ」
友春はそう言いながら椅子に座った。
こんばんわ~如何でしたか?
感想お待ちしておりま~す




