第20精霊
「おおおぉぉぉ!!!」
「ふふ、無駄です」
友春の攻撃は全て桜によって防がれていた。
炎の弾丸を作って大きいものや小さいもの、速度が速いもの遅いもの
など種類はバラバラの物を何発も放つが一発も当たらなかった。
「くそ!!」
「ふふふ、貴方程度では倒せませんよ」
「うるさい!!」
ゴオオォォォォォォォォォォォ!!!!
友春は炎を噴射させてサクヤに高速で近づき炎を纏った拳で
殴ろうとするがそれが当たる前に桜によって攻撃を防がれた。
「今度はこちらの番です」
サクヤが腕を友春に向けると大量の桜が友春に向かって放たれた。
「ちっ!」
友春は身をよじって桜をかわすが掠れた部分の鎧が砕けて
鮮血が舞った。
「おやおや、案外その鎧は見かけ倒しみたいですね」
「黙れ!!!」
ドオオォォォォォォォッォン!!!!
「がはっ!」
友春は大量の桜を腹部に当てられて血反吐を吐きながら地面に叩きつけられた。
「がはっ!げほっ!げほっ!!」
「と、友春!!」
友春を心配した雪原が慌てて近づいてくるが友春は小さな炎を
地面に当てて近づけないようにした。
「くるな!」
「で、でも!!!」
「ふふふ、弱いですね。ファーブニルの戦闘能力は
こんなものではありませんでしたよ?」
「っ!うるせえ!!」
ゴオォォォォォォォッォオ!!!!
友春が地面に腕を叩きつけると地面から火柱が立ち上がっていきサクヤに向かっていった。
「ふふふ、喰らってあげます」
ボオオォォォォォォオオ!!!!
そのまま火柱を喰らったサクヤ姫は炎に包まれた。
「やったか?」
友春は炎をしばらく見つめていたが突然
ボオオォォォォン!!!!
そんな破裂音の様な音がして桜が溢れ出して炎がかき消された。
「なっ!」
「ふぅ~。こんなちっぽけな炎、桜でかき消せます」
「な……あ…」
友春は今まで出会ったことがないほど強大な存在に体を震わしていた。
「くふっ☆じゃあ、そろそろ止めを」
ドオオォォォォォォォォンン!!!!
突然サクヤに雷が落ちたかと思うと今度は氷の龍が3匹降り注ぎ
サクヤを凍りづけにした。
「お兄ちゃん!!」
「友春さん!」
「ハ、ハモン!彩加!」
上を見上げるとそこには雷を纏ったハモンとレヴィアタンを纏った
彩加が空中に立っていた。
「だ、大丈夫でざんすか!?」
「あ、ああまあ」
ガッシャーン!!!!
氷から桜があふれ出てきて氷がそんな音をたてて割れた。
「ハモンに…レヴィアタン…そしてファーブニル。ふふふ、
裏切り者が勢ぞろいですね。御蔭で探す手間が省けました」
「サクヤ姫様…」
ハモンはかなり複雑そうな表情をしていた。
以前まではハモンは精霊側だったのにも拘らず今は人間についている。
「エックス様は嘆いておられましたよ?大切な部下を失ったと」
「わ、私は友春さんに教えられたざんす!信じれる人間もいるって事を!!」
「あらあら、人間はみなクズ…それが貴方の持論
だったはずなのに…これで心置きなく殺せます」
サクヤ姫が手を構えた瞬間
ズボォォォ!!!!
「え?」
「ふふ、まずは一人目」
ブシャァァァ!!!
友春の胸を腕で貫通さした後に抜くとそこから
大量の血液が一気に流れ出てきた。
友春は血しぶきを上げながら地面に倒れ伏した。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!お兄ちゃん!!!」
「サクヤァァァァァァァァ!!!!我の名において力の全ての開放を命ずる。
雷、ことごとく我が刃となり、雷、我が楯となりて全てを滅ぼせ!!!!!」
バチバチバチチチチチチチチチ!!!!!!
ハモンを纏う雷の威力が数段に増し辺りの地面から蹉跌の柱が
まるで踊っているかのように動き出した。
「あらあら、霊解放だなんて。ふふふ、懐かしいです」
「黙れ!!!!」
ヒュッ!!!!バゴォォォォン!!!!
ハモンが動き出した瞬間地面が大きく抉れ光の速さでサクヤに向かっていくが
桜によって進路を阻まれてしまった。
「邪魔だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ハモンは辺りに雷を拡散させて一気に桜を弾き飛ばすが先程までいた
場所には既にサクヤの姿はなかった。
「ふふふ、もうファーブニルは助かりません。直に貴方達に
部隊が派遣されます。殺し専門の部隊がね。それではごきげんよう」
サクヤは桜に包まれながら消失した。
「お兄ちゃん!!しっかりしてよ!!お兄ちゃん!!」
彩加は傷を凍らせて少しでも血を流させないようにしようとするが
一向に出血の勢いは止まらず地面を真っ赤に染め上げていた。
すると彩加と友春を包み込むように空からビームが照射された。
『彩加!私達が拾う!そこにいるハモンも一般人も連れて来てくれ!!』
耳につけていた無線から優の声が聞こえてきてハモンは慌てて
ひどく狼狽している雪原を抱きかかえてビームの中に入り艦へと転移した。
艦に転移し医療チームに友春が渡されてから数時間が経つが
未だに手術室から友春が姿を現すことはなかった。
むしろ医者、ナースの数が増えていき彩加達の不安が増幅していった。
「……私の所為だ……私がもっと早くついてたらお兄ちゃんは!!」
「違うざんす。彩加さんの所為じゃないざんす。うんうん、ないざんす」
「……ハモン」
彩加はハモンに肩を抱えられて涙を流していた。
そして涼子も同じだった。
必死に友春が助かるのを祈りながら手術が終わるのを待っている。
「……ねえ……これなんなの?…ここはどこなの?」
突然送られてきた雪原は見たこともない場所にひどく狼狽していた。
「ここは精霊との対話、和平を目的とする組織っす」
「なんで精霊なんかと対話なんかする必要があるのよ!!
精霊なんか皆殺しちゃえばいいじゃない!!!!!」
それを聞いた涼子が鬼の形相で雪原に詰め寄った。
「それは聞き捨てならないざんす。全ての精霊が悪な訳じゃないざんす!
実際にこの組織には何人もの精霊が協力してくれてるっす!!
全部が全部の精霊が悪いわけじゃないざんす!!!!」
「そ、そんなのウソよ!!せ、精霊は皆……皆」
雪原はハモンを見ながら言葉を濁した。
彩加を慰めているハモンを見ると先程自分が言っていた
ことが声を大にして言う事が出来なかった。
そしてハモンは自分の命も助けてくれた。
桜が自分にまでこないように蹉跌で覆って防御壁を作ってくれた。
「ああもう!!何が何だか分からないじゃない!!!」
雪原はヤケクソ気味に壁を蹴ってソファに座った。
そして全員が寝かけの頃に手術は終わった。
「お、お兄ちゃんは!!!!」
「ああ……何とか一命は取り留めた」
「良かった」
「だけど」
彩加がほっと一安心をついた直後に医者からの言葉で地獄に送られた。
「二度と動くことができないだろう」
「えっ?」
医者は続ける。
「友春君は胸を貫かれた直後に体内に桜を何枚か
入れられていたみたいで内臓のほとんどが傷つけられていたんだ。
生命維持装置がなければ生きながらえることもできないし
……残念だが……もっても1年だ」
「い、一年?……来年に……お兄ちゃん…は……死……ぬ?」
彩加の心を支えていた大きな物が取り除かれ
まるで高く積み上げられている積み木を一番下から
取るような感じで抜き取られ一気に瓦解し始めた。
「彩加!!!」
あまりのショックから体が本能的に意識を
シャットアウトして情報を拒んだ。
こんばんわ~




