第16精霊
ある都道府県で一体の精霊が血だらけになりながら地面を這いずりまわっていた。
自慢の武器は使い物にならなくなるほどボロボロになり長く、黒色の髪はまるで
燃やしたようにちりじりになり体のいたるところからは切り傷がついていた。
「はぁ、はぁ…なんなのよあいつは…あんなの勝てっこないじゃない!
ひとまずあのお方に連絡を」
「誰に連絡をするのかにゃ~」
「っ!!!!」
後ろから先程まで戦っていた人物の声が聞こえ慌てて後ろを振り返った瞬間、
片腕が吹き飛び血しぶきが舞った。
「あぐぁぁぁあぁぁぁあ!!!!う、腕が!!!」
腕を切った人物は精霊の血しぶきを浴びて真っ赤に染まりながら喜びに打ち震えていた。
「あはははははは!!!もっと聞かせてちょうだい!!!貴方達のその叫び声を!!」
その三十分後、超解の発明した霊装を纏ったメンバーが精霊出現との
報告を受けて現場に駆け付けたのだがその現場は悲惨なものだった。
「ま、まじかよ」
一人の女性隊員が目の前のあまりに悲惨な光景に苦悶をたらした。
それもそのはず、目の前には既に肉塊となった元精霊が倒れ伏していたからである。
「同族争いですかね?隊長」
「そんなのは聞いたことがねえけどよ、逆にこいつに同情してしまうぜ」
「ふぁぁぁぁ~…眠いっす」
母艦で涼子は眠いのを我慢して解析に精を出していた。
かれこれ二日くらいはろくに眠れていない…いや、気付かないうちに
寝ているんだろうがそれでも足りなかった。
「えっとUSBは…」
涼子は二日かけて解析した努力の結晶ともいえるUSBメモリを
書類やらなんやらでぐちゃぐちゃになっている机の上を探していた。
「えっと…あった、あった」
『お、おい!!お~い!!俺だ!!!』
「ふにゃ~これを保存すればお終いっす~」
『バ!!!止め』
涼子がファーブニルが封印されているメモリだと気付かずにPCに刺した瞬間、
母艦にけたましいサイレンの音が鳴り響いた。
「ふぇ?なんすかなんすか!?」
半分眠りかけていた脳がけたましいサイレンとともに覚醒した。
「おい涼子!!!お前何をしたんだ!!」
「友ちん!!あっしにもさっぱり」
するとどこからか焦げくさいを通り越して蒸気の様なものがモクモクと
どこからか出てきた。
「ん?なんだこの匂い……お、おい!!
PCから煙が上がってるぞ!!!!」
「う、うわ!!な、なんでですか!?」
『さっさと俺を抜け!!!このPCどころか回線すら焼き尽くしちまうぞ!!!』
何故かPCの画面にファーブニルが映っていたがひとまず
PCからメモリを抜きとって大事には至らなかった。
「あぁ!!!あっしの二日間の努力の結晶が!!!」
優は急いでPCを立ち上げようと電源ボタンを押すが一向に起動せずあの世へと召された。
「そ、そんな~…あっしの努力の結晶が!!」
「は~全く涼子は何をしてるんだ」
事後報告を受けている優は大きくため息をつきながら始末書を書かせていた。
「すみません…あっしの所為で解析結果はすべておジャン…は~」
「そ、そんなに落ち込まなくても。あの時は二日間も
寝てなかったんだろ?だったら仕方がねえよ」
「いいや、仕方がないわけじゃあない」
涼子を励まそうとする友春の言い分に優が異議を唱えた。
「ここは普通の会社じゃないんだ。例え支障のないデータでも
精霊に関するデータは非常に重要だ」
「はい…分かってます」
「ここ最近そればかり聞くのは私の気のせいかな?」
ここ最近、涼子はしょうもないミスを連発していた。
「最近気が緩んでるんじゃないのか?」
「ちょっと言いすぎじゃないんですか優さん。そりゃ、ここは
他とは違うんでしょうけど誰だってミスくらい」
「良いっすよ、友ちん。あっしがいけないんで。
すみませんでした。すぐに、解析を再開します」
優に頭を下げると涼子はすぐさま自室に帰っていった。
「……友」
「はい」
「一個指令を出そうか。言わなくてもわかるね?」
「勿論」
そう言うと友春はすぐさま涼子のもとへとかけていった。
「ふん……メモリを挿すとファーブニルの炎が転移したか……可能性はあるね」
そう呟くと優もまた自室の研究室に戻っていった。
「はぁ~」
涼子は自分の部屋に戻ると備え付けられているベッドに横になった。
「最近調子悪いっすね~」
最近の自分は本当におかしい。
今までならミスりもしなかった簡単な事を間違えてしまったり今日の様に
重大なミスをしてしまったりと絶不調だった。
するとドアがこんこんとノックされた。
「どうぞ~」
「お邪魔しま~す」
入ってきた人物の声を聞いて涼子の心臓はドクンと大きな音をたてた。
入ってきたのは友春だった。
「よ!邪魔するけどいいか?」
「ちょ!!ちょっと待って下さい!!あっち向いてて下さい!!」
「ん?……あぁ、干してるやつのこと?大丈夫、俺は気にしないから」
そう言い友春はサムズアップをするが涼子からすればもう恥ずかしいを
通り越しているわけなので無理やり後ろを向かせて干している下着を回収した。
「うぅ、恥ずかしくて気絶しそうです」
「別に俺は気にしないんだがね~」
「あっしというよりも女の子は皆気にするんす!!!」
「俺は彩加のでもう慣れてるぞ」
「デリカシーというものを作ってください」
それから何分か楽しく会話していると友春が突然
「涼子、明日休みか?」
「え、ええまあ」
「よし!!じゃあ、明日遊園地に行くぞ!!」
「……はぃぃぃぃぃっぃぃぃぃぃぃ!?」
突然遊園地に行くぞと言われ涼子はひどく乱れたが意義は認めないだとかで
明日の朝に友春の家にまで来いとのこと。
「明日の服どうするっすかね」
必死に考えてる涼子の姿を他の職員がほのぼのと眺めていた。
こんばっぱ~如何でしたか?それでは!!!!