第13精霊
友春がトイレから出てきて一眠りしようとベッドに横たわった瞬間に
地響きが家に伝わり本などが崩れてしまった。
「な、なんだ!?地震か!?」
驚いて飛びあがった友春は窓を開けて外を見るとさっきようやく
やんだ雨がより激しく降り注ぎ、何本もの落雷が町を襲っていた。
「まさか!!」
まさかと思った友春はメモリを持って慌てて家を出た。
「あぁもう!!なんなのよこれは!!」
霊装を纏い暴れている精霊のもとに行こうとしている桜は
突如、地面から噴き出すように出ている何かに進路を阻まれていた。
「桜!!これ蹉跌よ!!」
「はぁ!?蹉跌って何よ!!」
「それは後で教えるから今は精霊を潰すわよ!!」
「それが出来るならさっさとしてるわよ!!」
先程から武装を使って何度も斬り倒しているがどれだけ倒そうとも
また新しく蹉跌が吹き出しそれを斬り倒すイタチごっこをしていた。
「あぁもう!!桜!!あたしが道を開くからあんたは行きなさい!!」
「分かった!!!」
桜の同僚の一人が巨大なバズーカを呼び出すと極太のレーザーを
射出して一瞬だけ道を開けるとその一瞬のうちに桜は猛スピードで
突っ切って精霊のもとへと向かった。
「はぁ、はぁ」
友春は暴れているであろうハモンを探しに走り回っているが
まったく見つけられずにいた。
「どこにいるんだよ、まったく」
すると向こうの方で落雷が落ちたのでそちらのほうに向かうと
そこに子猫を抱えたハモンの姿があった。
「いた!!ハモン!!」
「あぁぁぁぁ!!!!」
ハモンは電気を使って蹉跌を手元に引き寄せて鞭のように撓らせて
友春にぶつけようとするが友春はそれを伏せてかわした。
「ハモン!!ハモン!!」
『無理だ。もうあいつはお前の声は聞こえていない。
ああ、なった以上は力づくで止めるしかない!!』
「……分かった」
友春は自らにメモリいるファーブニルを流し込むと全身から
炎が噴出し全身を覆うと赤色の甲冑を着た友春が現れた。
「っしゃ!!行くぜ!!」
友春は手に炎を集め球状にしてハモンに投げつけるがそれは
蹉跌の壁に阻まれハモンに届くことなく爆発した。
「がぁ!!!」
ハモンが唸り声の様な声をあげると彼女の周りにある蹉跌が
何本もの柱のように立ち上り友春に襲いかかってきた。
「これでも喰らえ!!」
友春は拳に炎を集め、蹉跌に向かってマシンガンのように炎の玉を連射して
向かってくる蹉跌の柱にぶつけるがぶつかってもすぐに蹉跌が補給され
形を形成し止まることなく彼に襲い始めた。
「一旦空にあがるぜ!!!」
友春は足の裏から炎を噴射させて上空に上がるが蹉跌も友春に
向かって上空に上がりだした。
「げぇ!!追いかけてくるし!!」
友春がどれだけ縦横無尽に空を動こうが蹉跌は正確に友春に向かって
来ており振り切る事が出来なかった。
『後ろだ!!』
「げ!!やば!!」
後ろからも来ている事に気付いた友春は避けきれないと判断し
炎を自分の周りに噴出さして繭のように自らを覆わせた。
その炎の繭ごと蹉跌が襲い掛かり地面にぶつけた。
「イタタタ」
なんとか起き上がった友春だが額が切れており血が流れていた。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
落雷の勢いはさらに強くなっており友春の手には負えない状況になっていた。
「っ!!どうしたらいいんだよ、この状況!!」
『……憎い』
「え?今なんか言ったかファーブニル」
『何も言っていないが』
『…憎い憎い!!』
「ハモンの声なのか?」
「ぐぉぉぁぁぁおぉぉ!!!」
「やっば!!」
ハモンは砂鉄を集めて一つの大きな球を作り友春に向かって放り投げた。
友春が慌てて炎で迎撃しようとした時、後ろから蹉跌の玉に水が辺り
炸裂した。
「み、水?……遅いんじゃねえの?」
「そんなこと言わないでよもう!!」
後ろを向くとそこには青い服にフロストジャベリンを持った彩加が立っていた。
「で、今どういう状況なの?お兄ちゃん」
「えっと、今暴走中だ」
「おぉぉぉぉぉぉ!!!」
「邪魔よ!!!」
彩加はハモンが飛ばしてきた蹉跌の弾丸をフロストジャベリンを振るい
氷の龍を放出して凍らす事によって砕いた。
「彩加……砂鉄を頼む」
「え?ちょっとお兄ちゃん!?」
友春は向かってくる蹉跌を彩加に任せて自分はハモンに向かって走り出した。
「おぉぉぉぉ!!!」
「お兄ちゃんの邪魔はさせないんだから!!」
ハモンは向かってくる友春めがけて蹉跌の弾丸を放つが
彩加の氷の龍によって全て防がれた。
「ハモン!!!!」
友春はハモンのもとに辿り着くと自分とハモンの周りに炎の壁を
作って周りからは見えない様にした。
『憎い憎い!!!!』
暴走しているハモンの頭の中には動物を傷つける人間を
憎むことしか浮かばなかった。
『人間を信じた私が馬鹿だった!!人間はみな同じだ!!!』
「そうとも限らないぜ?」
「ファーブニル!!!」
突然、ファーブニルがハモンの中に入ってきた。
「何の用ざんす!!」
「俺は用はないんだが友春があるからついでに俺も来たわけだ。
この地球上に存在している人間が全員、動物を傷つける訳でもないんだぜ」
「違うざんす!!所詮、クズはクズ!!皆同じざんす!!!」
ハモンはファーブニルの言っていることには耳をかさずに彼に
落雷を落とすが炎によって防がれてしまった。
「じゃあ、あれか?誰かが人を殺したって言うだけで全人類が
殺人鬼になるのか?」
「そ、それとこれは違うざんす!!!」
「いいや、違わねえよ。お前が言ってるのはそれと同じなんだ。
ごく一部の馬鹿な人間がしたことを他の人間がすると思うのか?
じゃあ、人間は確実に滅亡するな」
「どういう意味ざんすか!?」
「だってそうだろ?誰かが人を殺したら全人類が人を殺し始めるんだぜ?」
「………」
ハモンは自分の言っていることの矛盾点をファーブニルに
言い当てられて何も言い返せずに黙りこくってしまった。
「何故」
「あ?」
「何故、ファーブニルは人間に力を貸すざんすか?」
「ん~そうだな~……人間の可能性が見えたからかな?」
「意味が分からないざんす。うんうん、分からないざんす」
「まあ、今は分からなくていいさ。俺はもう帰るわ」
そう言い炎となって消えたファーブニルに代わって友春が目の前に現れた。
「……な、なんだここ」
友春はいきなり出た空間に驚いているのか辺りをキョロキョロと見回していた。
「友春さん……」
「……ハモン」
それから二人は何も話さずに沈黙が流れたが
その沈黙を破ったのは友春だった。
「なあ、ハモン。何があった」
「……人間が子猫を殺そうとしていたざんす。それで」
「そっか……」
すると友春はいきなりハモンに近づいていき彼女の金色
の髪を優しく撫で始めた。
「友春…さん?」
「良かった。ハモンはそいつらに怒って暴走したのか…
よかったよ、本当に。何もなしに暴れてるんじゃなくて」
友春は本当にうれしそうに微笑みながらハモンの頭を撫でつづけた。
撫でられている彼女は今まで軽蔑していた人間に触れられても何も嫌な感じはしなかった。
むしろもっと撫でてほしい、嬉しいという気持ちが心の底から溢れ出して来た。
その感情は精霊である彼女にとっては感じたことがないものだった。
「……友春さん。お願いがあるざんす」
「なんだ?」
「もう一度人間を信じさせてくれませんか?」
「あぁ!!任せろ!!!」
溢れ出していた蹉跌が突然、止まりさらには落雷までもが止んだ。
「落雷が止まった?」
不思議に思っていた彩加だが突然、二人を覆っていた炎の壁がはじけ飛んだ。
「お兄ちゃん!!」
その中からハモンをお姫様だっこしている友春が現れた。
先程までの荒々しいものはハモンからは感じられず、
すやすやと眠っていた。
「ふぅ~。どうにか終わったな、帰るか」
「うん!!」
戦いを終えた2人はひと先ず艦にハモンを連れていくために
待機している場所まで移動していった。
「な、何あれ」
その光景を見ている者がいるとも気付かずに。
こんにちわ~ケンです。
如何でしたか?今日は暇何で連続更新です!!
感想待ってまーす!!