第12精霊
今回の話で動物を傷つけているシーンがあります。
小説内だけの出来事です。
実際にしないでください。
「……」
一人の少女が立っていた。
少女の周りは大きな穴が開いており周りには砕けた武装などが転がっていた。
先程まで霊装を纏った者達と交戦をしていたのだ。
しかし、所詮は人間が作ったもの。
いくら頑張ろうが精霊である彼女、ハモンに勝てる筈がなかった。
「あの人間達の所為で動物達が逃げてしまったざんす。
うんうん逃げてしまったざんす。さてどうしましょう」
ハモンは降りしきる雨の中呟いていた。
「……やつに会うざんす。うんうん会うざんす」
そう言いハモンは落雷と同じ速度で移動を開始した。
ファーブニルに会うために。
今日の天気はとても悪い。
雨が降りしきり空は厚い雲に覆われ先程から雷が鳴り響いている。
今日の学校はこの天気と落雷の危険性を考慮し急きょこの地区の
学校は休校となった。
歩いている者などあまりいなかった。
店もほとんどが閉まっておりたとえ開いていても客足はさっぱりだった。
そんななかをファーブニルに憑かれた少年、神崎友春は傘をさして歩いていた。
妹である彩加は艦に行っており家には誰もいないので暇なので出てきたわけである。
『珍しいな。めんどくさがりのお前がこんな天気悪い日に出かけるとは』
メモリから友春の頭に直接ファーブニルが話しかけてきた。
最初は変な感じがしたが今ではもう慣れた。
「なんとなくね、歩いてみたかったんだ」
それから何も話さず歩いていると電柱の傍に段ボール箱が置かれていた。
「………まさかね」
王道中の王道である捨て猫、もしくは捨て犬か?と思った友春は
中をのぞくとそこには予想通り猫がいた。
「にゃ~」
「……仕方がない。今日一日だけだぞ」
「にゃ~」
「仕方がないざんすね~…一日だけざんすよ?
うんうん、一日だけざんす」
隣から、しかもごく最近に聞いたことのある声、独特なしゃべり方が聞こえ
隣を向くとそこには……
「……ハモン」
「ん?ファーブニルざんすか……」
妙なところで出あってしまった2人は何も話せないでいた。
「……ひと先ず家に来いよ」
「は?何言ってるざんすか?今ここで戦うざんすよ!!!!」
ハモンは全身からバチバチと電気を発するが友春はそれを手で止めた。
「止めとけ。お前、猫を抱えてる状態で電気を出したら猫が逃げちまうぞ」
「あ………」
「にゃ~」
「良いからひと先ず来いよ。暴れてないんだし、俺が戦う理由はない。
猫も拭かないといけないし雷猫も拭かないといけないからな」
「っ!!!誰が雷猫ざんすか!!!」
そう言いながらもハモンは渋々彼の後をついていった。
家に着いた二人はさっそく二匹の猫を風呂場に連れていき
洗面器に温めのお湯を注ぎこみそこに猫をチャポンとつからせた。
猫は温かいのか嬉しそうに鳴き声を何度も上げた。
「なんでこんなに温いお湯ざんすか?もっと熱い方がいいざんすよ。
うんうん、良いざんすよ」
「馬鹿言うな。いきなり熱いお湯じゃ駄目だ。熱いお湯よりも
ぬるま湯のお湯の方が温まるからな」
「そうざんすか……なんすかこれは?きゃぁ!!」
「ハモン?」
「うぅ。濡れたざんす~」
ハモンは恐らく何も知らずにシャワーのノブを回したのか
全身にシャワーを浴び、髪の毛から来ているものまで全部が濡れた。
{……かなりエロい}
「うぅ、気持ち悪いざんす」
「ちょ!おい!!」
いきなりハモンはその着ている服の様なものを消失させた。
「何いきなり裸になってんだ!!!服を着ろ服を!!」
「服?服って何なんざんすか?」
ハモンは知らない事を言われ裸のままでズズっと友春に近づいた。
友春は見ない様に目をそらすもののやはり彼も男。
あらわになっている形の綺麗な胸をちらちらとみていた。
「ヒ、ひとまずタオル持ってくるからシャワーでも浴びてろ!!!」
友春は我慢の限界が来たのかシャワーをハモンに浴びさせ
さっさと服を着せようとタオルと服を取りに行った。
「こうで良いざんすか?」
「ああ、それで良いよ」
ハモンはすっきりした後、バチバチと体から電気を発して
その熱で水分を飛ばし友春が持ってきた服を着て
猫二匹を連れて居間に入ってきた。
友春は準備していた猫の餌を二匹に食べさせていた。
「ま、こいつらも大丈夫だろ」
「そうざんすか、良かった~。うんうん、良かった」
ホッとしているハモンの顔は精霊ではなく普通の人間の
女の子じゃないのかと疑いたくなるほどだった。
「お前、動物好きなのか?」
「好きざんすよ。人間は嫌いざんすが」
「なんでだよ」
「人間は動物達を傷つけるざんす。そんな奴らはこの地球
から消えればいいざんす。うんうん、良いざんす」
「……つまりお前はあれか?動物を傷つけた奴にしか攻撃をしてないと」
「そう思いたければそう思うざんす」
少し気になった友春は自分の部屋に入り彼女に気付かれない様に
艦にいる優に連絡を取った。
『どうかしたかな?友』
「少し調べてほしいことがあるんです」
『言ってみたまえ』
「ハモンが襲った地域について詳しく調べてほしいんです」
『ほ~。それは又何故だい?』
「……なんとなくです」
『良いだろう。少し待っていたまえ、5分で終わらせよう』
「分かりました。5分後にまたかけなおします」
そして五分後もう一度友春は優に電話をかけた。
『ちょうど五分だ。ハモンが襲った地域は色々とあったが
そこに共通点があった』
「共通点ですか?」
『ああ。まあ、役に立たんと思うがね。奴が襲った地域は
全て開発され生態系が崩れた、もしくはそこに住む動物達が
何らかのダメージを受けたところだけだった』
「そうですか……ありがとうございました」
友春は電話を終えて部屋に戻ると鬼の形相をしたハモンが立っていた。
「どうしたんだ?ハモン」
「やっぱりお前も他の奴らと同じだったんざんすね!!
私を精霊というだけで殺しにくる!!!」
「は?なんのことだよ」
「惚けないで欲しいざんす!!さっき貴方が電話していたのは
特殊な電波を使っているところだったざんす!!私は電気を使える
ざんすからそんなのもわかるざんすよ!!!」
「落ち着けよ、俺はお前を殺す気なんか」
「嘘ざんす!!信じた私が馬鹿だったざんす!!」
ハモンはバチバチと電気を発して戦闘を行おうとしたが
友春に床に組み伏されて身動きが取れなくなった。
「くっ!この野蛮」
「俺は絶対にお前を殺さない!!!」
「っ!そんなの信じないざんす!!」
「本当だ!!さっきの電話は調べてほしいことがあったから
少し特殊な所にかけてただけだ!!!お前は動物を傷つけた奴しか
攻撃してないんだろ!?お前がそれ以外で戦闘したのは襲われた時だ!!」
「な、なんでそれを」
「俺はお前の動物を愛する心を信じる!!お前は他の精霊とは違う!!
俺はお前が人間を殺さないって信じる!!だからお前も俺を信じてくれ!!」
「……本当ざんすか?」
「ああ、俺はお前を信じる。口だけじゃどうとでも言えると
思ってんなら俺がお前を裏切ったら俺を殺せ」
「……信じていいざんすか?」
「あぁ、信じてくれ。俺もお前を信じる」
友春の真剣な目を見てハモンは少し考え、彼を信じることにした。
それから、色々と話した。
雨もやんだのでハモンは家を出ると言い出したので
友春は玄関まで送った。
「じゃ、またな」
「もう、会いたくないざんすがね」
「ハハ、そう言うなよ」
お互いに皮肉りあいながらも二人は別れた。
「精霊を信じる人間なんてあの人だけざんす」
ハモンがブラブラと歩いていると前に数人の塊が見えた。
その集団は楽しそうに大声で笑っていたがハモンは特に気にも留めずに
横を通り過ぎようとしたが出来なかった。
何故ならその集団は先程の雨で出来た水たまりに猫の顔を埋めていたからである。
「うっわ!!見ろよ!!めちゃくちゃあばれてるぜ!!!」
「はははははは!!やっば!!おもしれぇ!!!」
「な、何してるざんす!!!」
ハモンはその集団を押しのけてその猫をすぐに助けるが
その猫はぐったりとしていてピクリとも動いていなかった。
「なんだよ~いいとこだったのによ~」
「うほぉ!!めっちゃ可愛いじゃん!」
「なあ、俺たちとさお茶しに」
一人の若者がハモンの肩に手を触れようとした瞬間
静電気の様なものが起こり思わず手を引っ込めた。
そしてハモンはブツブツと何かをつぶやいていた。
「我の名、ハモンなり」
「へ~ハモンちゃんか。もしかしてハーフ?」
「我の名において力の全ての開放を命ずる。雷、ことごとく我が
刃となり、雷、我が楯となりて全てを滅ぼせ!!!!!」
その瞬間、ハモンを中心に幾何学的な文様が数キロにわたって
広がり、空から凄まじい量の落雷が地面に落とされた。
その威力は一発で道端に止めてあった車を破壊する威力だった。
「全てを破壊せよ!!!!!ハモン!!!!」
彼女の顔はひどく悲しいもので目から大粒の涙を流しながら町を破壊し始めた。
こんばんわ~如何でしたか?
それでは!!!!!