第0精霊
神様はその日、地球という惑星にうっかり落し物をしてしまったんだ。
それは神様からすればとても小さなことで僕たちで言えば一円玉を落としたとか
小さくなった消しゴムを落としてしまったみたいな感覚なんだろうけど
僕たちにとってそれは命が危険にさらされることになる原因になるんだ。
(……ここは……)
目の前には一つの炎が揺らめいていた。
周りには何もなくただ無限に広がってる何もない空間。
『おい、いい加減に俺を目覚めさせろよ。三人の中で
目覚めてねえのは俺だけじゃねえか』
(……お前は誰だ)
『俺か? 俺はな』
「ふぇ? ……夢かよ……変な夢見てた」
少年が目を覚ますとそこはさっき夢で見た場所ではなく
いつもの見慣れている天井がある自室だった。
彼の名前は神崎友春、どっかの小説みたいに何か特殊な
人間とかはない。ごく普通の高校一年生である。
今日から夏休みが明け学校が始まる日でもあった。
「あ~だりぃ~。何で夏休みが一カ月しかないんだよ。
三ヶ月くらい作ってほしいっつ~の」
そんな事をしては十月くらいまでが夏休みという事になるのだが
まあそんなのは放っておいて。
友春は寝ている間に汗をかき若干濡れている寝間着を
脱ぎ捨てると床に散乱している服の中から
Tシャツと学校の制服を取るとちゃちゃっと着替え一階へと降りて行った。
「あ、おはようお兄ちゃん。今日も凄い寝癖だよ」
「ああ、おはよう彩加。寝癖はめんどいからいいや、今日の朝飯はなんだ?」
「も~。今日の朝食は納豆ご飯だよ」
「うぃ~」
一階に下りると台所にエプロンを巻いた少女がいた。
彼女は神崎彩加、友春の妹でありこの家の台所の全権限を
持つ人物である。
「「いただきます」」
友春は納豆のパックを乱暴に開け中に入っているタレと辛子を
ぶち込むとこれまた乱暴にかき混ぜいれたてのご飯にぶち込んだ。
「そう言えば中学は馴れたか?」
「うん、まあそこそこは。お兄ちゃんの方こそどう?」
「俺は普通だ。もし何かあったら言えよ? 俺が解決してやるからな」
「うん! そうする」
彩加は笑顔を浮かべた。
友春はふとニュースキャスターの言っている事に耳を傾けると
最近の事が朝のトップニュースになっていた。
『次のニュースです。先日お伝えしたとおり超常現象についてです。
先週からエジプトではスコールの時期ではないのにも拘らず土砂降りの
雨が降り続きそれにより川が氾濫を起こし分かっているだけでも20人
もの人が行方不明となっています』
超常現象、三十年ほど前からある事件を境に頻繁に起きている常識では
考えられないような気象、事件などが総称してそう呼ばれていた。
例を上げると空から大きな氷が降ってきたり高層ビルが突然として崩れたり
などがあげられる。この事から政府はとある組織を結成。
それが超常現象解析委員会、通称『超解』
この組織は政府から独立した機関であり独自の技術を用いて
超常現象により破壊された家屋などを二日もあれば完璧に修復してしまう。
さらにここは超常現象が起こるメカニズムなども解明し完璧なる
予測法を確立させ莫大な富と人命を保有していた。
ちなみに超常現象はレベルで分けられており一~五段階で分けられている。
「最近、変な事ばかり起きるな~彩加、水とって」
「……動き出したわね、となると」
彩加は画面を見ながらブツブツと何かを呟いていて
友春の声が聞こえないのか普段ならすぐに反応する筈が
今回は反応しなかった。
「お~い、彩加~」
「え、あ、ごめん。お水ね。ちょっと待ってね」
「お、おう」
すぐにいつもの様子に戻ったので友春は深く考えないようにした。
「今日は何時くらいになるの?」
「始業式だけだからそんなに遅くにはならないけど」
「そっか、じゃあこっちでご飯食べるの?」
「ああ、そうなるな。ご馳走さん、じゃ行ってくる」
「うん、いってらっしゃい」
友春は使い終わった食器を台所に置くとカバンを持って学校へと出かけた。
「よー! 心の友よ! 元気してたか!?」
突然、後ろから抱きつかれ、友春は少し前のめりになったが足に力を入れて
こけることはなかった。
「抱きつくな暑苦しい。俺はゲイじゃない」
「なんだよ~昔は日向~とか言って抱きついて来てくれたじゃないか~
は! まさか、これがうわさに聞く倦怠期か!?」
「一人で言ってろ。俺が興味あるのは」
「妹だけだ、だろ?」
「分かってるなら言わせるな」
歩いている友春に抱きついてきたのは荒田日向。
幼稚園の頃からの腐れ縁でそれから何故かずっと一緒の学校である。
「で? お前は何を聞いてるんだ?」
「聞くか? いい歌だぞ」
「どれどれ」
日向が友春からイヤホンを受け取り耳につけて聞くと
そこからは友春からすれば最強のアーティストの声が聞こえていた。
「……妹が歌ってる声を録音して聞いてるシスコンは初めて聞いた」
「何を言う! 彩加の歌声に文句をつけるっていうのか!? ああ!?」
日向が言った事に友春は真面目にキレており日向は
馴れているのかいつものように払った。
「な訳ねえよ」
「ならよろしい」
二人が教室に入った頃には結構な数の生徒が来ていた。
ある者は頭のいい奴に宿題を見せてもらっていたりある者は
寝ていたりとしていたが大半は友達と駄弁っていた。
二人が座ったのと同時にチャイムが鳴りジャージを着た女性の
教師が入ってきた。
「お~しお前ら! さっさと座れ~。そうしないと、ぶち殺すぞ~日向を」
「なんで俺何すか先生!」
「文句を言う奴はぶち殺すぞ~」
彼女はこのクラスの担任の柊裕子、何もしゃべらなければ
超絶美人なのだがいかんせん口も悪く男勝りでさらに服装は
いつもジャージで校外学習もこのジャージで来ており噂では
先生が私服を着ているところを見たことがある生徒は皆無だとか。
それの所為か今年で二十四だが一切恋愛沙汰は無し、それどころか
そういう情報すら聞かない。
しかし意外に頭もよく面倒見も良いため生徒からは慕われている。
※噂では警察のお世話になったことが多いとか。
「つう事で最近、変態がいるから気をつけてな~。つう事で授業を始め」
するといきなりジリリリリリリというけたましいサイレンの音が
教室に響き渡り、その音が止むと放送が聞こえてきた。
『レベル四クラスの超常現象の予兆を感知! すぐさま
地下シェルターへ避難すべし! 繰り返す!』
「つう事で全員移動するぞ~」
生徒達は教師の指示に従い地下に設置されているシェルターへと移動するのだが
「あ? おい、友春はどうした荒田」
「あいつならさっき忘ものしたからって言って出て行きましたけど」
「あの馬鹿!」
「ちょ! 先生!? どこに行くんですか!?」
「先にお前たちは行ってろ!」
そう言い裕子は外へと向かっていった。
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