降霊魔術
「おお、見える、見えるぞ! わたしはオスカル・・・・・・オスカルの・・・・・・」
コージマは切羽詰っていた所為で、魔術師を呼び寄せ、降霊術まがいなことをおこない、オスカルの霊を呼ぼうとしていたようであった。
「お、おばさま。いったい何を・・・・・・」
「わたしは、わたしは、オスカルの霊だ!」
魔術師は声色を変え、知りもしないオスカルの口調をするので、てんで似ていないじゃないか、とアレンシュタイン家を訪れたゼップルは鼻で笑うのであった。
「ゼップルさん、この先生がね、オスカルの霊を呼んで、事件の日に何があったのか、教えてくださるそうなんですよ」
「オスカルの霊? そんな、ばかな・・・・・・」
「かーっ!」
ゼップルはしかめツラをしつつ、いきなり叫びだした魔術師に驚いて、肩を震わせた。
「おかあさん・・・・・・ぼくは・・・・・・殺されたんです!」
「オスカル、本当にあなたは、オスカルなの・・・・・・」
ゼップルはナンセンスな茶番劇だ、とその場を去ろうとしたが、この一言によって魔術師の信憑性を百八十度も反転させることになる。
「おかあさん、証拠だよ! その証拠は・・・・・・金色に光るメダル! 「N」の文字! そいつがやったんだ」
「N? Nとはいったい」
ゼップルはポケットに手を突っ込んだまま、青ざめ、驚愕する。
「どうしたの、ゼップルさん」
どう返答すべきか迷ったが、
「い、いえ、なんでも」
と答えておく。
「おい」
次に魔術師に小声でささやいた。
「なぜメダルのことを知っているんだ」
魔術師はまだトランス状態のようで、目つきがまどろみ、宙に足の浮いているような、とあらわせばちょうどよいかもしれない。
「ぼくは、殺された本人だからね」
「やかましい、仕事が済んだらとっとと帰れ」
小声でののしり、ゼップルは魔術師を追い返す。
「おばさま。ぜひお話が」
ところがコージマは不機嫌になってしまい、ゼップルに鋭い視線を送っていた。
「ゼップルさん、なぜあなたはわたくしの邪魔をなさるんです」
「でも聞いてください。あれは詐欺ですよ、本物なんかじゃありません」
「どこに証拠が」
コージマに尋ねられて、ゼップルは言いよどんでしまった。
彼女はここぞとばかりに言いたいことを自信たっぷりまくしたてる。
「ほらごらん。だからいったでしょう・・・・・・伯爵様にこんなことを申しては、なんなんですけれど・・・・・・息子の代わりとして思ってしまっている以上、厳しく言ってしまうことも多々あるかと。あなたはまだ若いわ。それゆえの勢いもあるでしょう、それで怒りっぽいのでしょう」
「・・・・・・違います」
「どう違うの」
ゼップルはポケットから右手を抜け出せずにいたため、コージマは怪しんだ。
「あら、それはなんですの」
コージマが手を伸ばして、ゼップルの腕をつかもうとした刹那にゼップルは、
「失礼します」
飛び出すように邸を出て行ってしまった。
「ゼップルさん・・・・・・」
不安そうに両手を組むコージマの姿が、そこにはぽつんと取り残されていた。
昼ドラかよ・・・・・・_| ̄|○
というか、あらすじと全然ないようちゃうやないかい、と思われるかと思うんだけどね・・ゆるせ・・