シュタイン王国侵攻作戦を発動させました
使者は私に張り飛ばされて壁に突き刺さっていた。体がピクピクしていた。
「リ、リディアーヌ様、何も自ら手を下されなくても……私には手を出すなと言われたのに……」
ハワードはなんか泣きそうになっていた。
「使者を張り倒すなんて……」
「さすがリディよね」
「やっぱり、我慢できませんでしたのう」
アーチとベティは呆れてくれるし、レナードはやっぱりという顔をしてくれたし、レックスは無言で頭を押さえていた。
「レナード、この不届き者を直ちにエイベルの頭の上に返して。見ていたくもないわ」
私は失態を誤魔化すために思わず叫んでいた。
「本当に姫様も人使いが荒い」
文句を言いながらもレナードは手をかざして使者を転移させてくれた。
エイベルめ、人に余計な使者を送ってくれて、もう許さないんだから。
私はその時、丁度エイベルが軍の兵士を前にして訓示をしていたとは知らなかった。
その訓示の最中にドラクエ男爵が頭の上から落ちてきてその下敷きになって大変だったらしい。
それをレナードが後で教えてくれて、私は大笑いしたのだ。
ふんっいい気味だ。
「陛下さすがです」
「そうですか。ついにシュタイン王都に進出ですな」
「陛下、時は来ましたな」
「初代様の夢を叶える時が参りましたな」
侵攻組は大喜びを始めたんだけど……
「姫様、あれほど準備はまだだと申し上げましたのに」
マトライは渋い顔だ。
「陛下。我ら家臣一同、陛下のご指示に従います」
「「「陛下」」」
辺境伯はじめ、侵攻組が私の前に跪いてくれたんだけど……
もうこうなったら仕方がない。エイベルの奴、余計な使者を送ってくれて。そんなにシュタインを滅ぼしてほしいんなら、滅ぼしてあげるわ。
私は決意したのだ。
「マトライ、直ちに侵攻作戦の準備を」
私は嫌そうな顔をするマトライに命じたのだ。
「はっ、陛下の仰せのままに」
「「「「「おおおおお」」」」」
群臣から一斉にどよめきが上がった。
「陛下万歳」
ハワードが叫んでくれた。
「リディアーヌ様万歳」
「竜王陛下リディアーヌ様万歳」
「「「「万歳! 万歳! 万歳!」」」」
皆万歳三唱してくれた。
そして、直ちにシュタイン王国侵攻作戦が開始された。
そこからが早かった。
マトライは直ちにシュタイン併合計画を出してきた。
侵攻に反対していた立場からすると早すぎる。絶対に内々に計画を建てていたのだ。
それに基づいて、伝令が次々に発せられた。
そして、その伝令はシュタイン国内の貴族にも送られたのだ。
内容はシュタイン前国王の私への未来の王妃就任要請の三顧の礼から始まり、息子が無能だと思ったらその方が中心になって国を運営してほしいと頼まれていたので、直ちに軍を率いて駆けつけてほしいというものだった。
「『この前国王陛下の恩に報いる気があるなら』って、前の国王が天国で聞いたら怒らない?」
私は白い目でマトライを見た。
「さあ、どうでしょう。元々姫様を王妃に迎えるのに、前国王が3回、姫様のご機嫌を取られたのは事実です」
「そうです。最初は嫌だとだだをこねられていた姫様が、王宮の料理長の作るケーキを好きなだけ食べていいと言われたら即座に行くと言われた薄情さには臣は驚きましたぞ」
レナードが忘れたい黒歴史を話してくれた。
「本当に食べ物で釣られるなんて……俺の想いはケーキに負けたのか」
レックスが何か言っていたが、遠くてよく聞こえなかった。
「レックス何か言った?」
「おおおお、姫様の食い意地に負けたレックス殿ですな」
「いや、レナード様、止めてください」
本当に嫌そうな顔でレックスをレナードに手を振っていたんだけど。なんだったんだろう?
「確かに軍を一から立て直してほしいとか、息子が愚鈍で愚策を出してきたら思いっきり張り倒してでも矯正してほしいとは言われていたけれど、乗っ取って良いとは言われていなかったと思うわよ。それに、あれと仲直りする気は毛頭ないわよ」
「確かに。レックス殿の方がましですな」
私の言葉にレナードが言ってくれた。
私はエイベルの顔を見るのももう嫌だ。なんで代わりにレックスの名前が出てきたか判らないけれど、あれに比べたらレックスの方が百倍ましだ。
レックスが王配?
まあ、それでもいいかも……
見た目も凜々しいし、私に足りない統治能力や細かいところに気配りできる性格も良いし……
そう考えると理想的だ。
「まあ、そうね」
私が頷くと
「「「おおおお」」」
と言うどよめきが起こった。
「良かったですな。レックス殿。十年来の恋が実るかも知れませんぞ」
「いやいや、例えばの話ですって」
レナードの言葉にレックスが赤くなっていた。
「リディアーヌ様。リディアーヌ様はレックスを選ばれるのですか」
とても悲しそうな顔でハワードが叫びだしたんだけど……
「何を言っているのよ。エイベルに比べれば百倍はましって言うだけよ」
「そうですか。例えばの話ですよね」
勝手にハワードは納得してくれたんだけど……
私の顔は何故か赤くなっていた。
「大変でございます。シュタイン軍の先鋒が国境手前の街に現れました」
そこに伝令が駆け込んできたのだ。
「判ったわ。こちらの軍も直ちに国境に出すわよ」
私は頭を振って余計な考えを頭から追い出すと、直ちに命じたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ついに決戦の時来たり。
続きは今夜です。
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