辺境伯の嫡男視点 従妹を助けるために悪徳教会に殴り込みをかけました
私はノール辺境伯の嫡男、ハワード・ノールだ 。リディアーヌ様の一番の家来だ。
誰がなんと言おうがそうなのだ。
卒業パーティーでボケナス王太子がリディアーヌ様のエスコートをしないってなった時に、俺は歓喜してエスコート役に立候補した。絶対にリディアーヌ様のエスコート役をやるつもりだったのだ。しかし、同じく立候補ししてきたレックスの野郎に、剣術勝負で後一歩及ばず負けてしまったのだ。本当にいくら後悔しても、後悔しきれなかった。今回は絶対に勝てると思ったのだが、負けてしまった。レックスの執念に負けたのかも知れない。レックスの野郎は本当にリディアーヌ様命だ。リディアーヌ様が王太子に気絶させられた時は、俺達が必死に止めなかったらあの王太子を殺していたと思う。
あいつは日頃は良いやつなんだが、リディアーヌ様が絡むと人が変わるのだ。
俺も人のことは言えないが。
仕方が無いから俺は生徒会長と交渉して送辞役を譲ってもらったのだ。決して生徒会長を脅したとかいうことはない。何か文句を言ってきたから剣の柄に手をかけたのは事実だが、決して抜いてはいないから脅したことにはならないのだ。
俺様の送辞の言葉を聞いてリデイアーヌ様が涙を浮かべておられたから、俺は生徒会長を脅した、いや間違えた、生徒会長から譲ってもらった甲斐があったというものだ。
そして俺は今、リデイアーヌ様について、元ギンガルメ王国にいる。
今、会議室では、リディアーヌ様に諦めさせる会議が開かれていた。リディアーヌ様とレナードの爺様とインスブルクの宰相とエイブ、それとレックスが中で喧々諤々と、リディアーヌ様に王になれと詰め寄っているのだ。
俺はリディアーヌ様が王になろうが無かろうが、どちらでも良い。世界の支配者はリディアーヌ様なのだから、ぼけなす王太子のようにリディアーヌ様に逆らうような不届き者が出れば、今度は俺自らが成敗するだけだ。
俺とアーチはその会議室の扉の前で護衛していた。
「おい、ハワード大変だぞ」
そこへ慌てて、チャーリーが駆け込んできたのだ。
「どうしたんだ?」
俺はチャーリーから紙を渡された。
それは父からだった。
モスリムにいる母方の従妹のエリザベスが聖女教会に捕まったと記されていたのだ。
「おい、チャーリー、魔女裁判って何だ?」
「うーん、俺もよく判らないが、教会に都合の悪い奴らを拷問して司祭達が楽しむとんでもない儀式だと聞いたことがある」
「何だと」
俺は可愛い従妹が司祭達に拷問されているのを知って完全にきれた。
そういえばベティも王妃に拷問されて傷だらけになっていた。それをあの可愛いエリザベスがされているのかと思うと許せなかった。
「チャーリー、モスリムにいる従妹が聖女教の司祭共に拷問されているらしい。頼む。助けに行きたいから俺を連れて行ってくれ」
「姫様には伝えなくて良いのか」
横にいたアーチが聞いてきた。
「非常事態以外は人を入れるなとレナードのじいさんが言っていたからな。なあに、リディアーヌ様のお手を煩わせるまでも無い。俺が一人で行って薄汚れた教会の司祭共を成敗してやる」
「しかし、俺の時もあれだけ一人で勝手に動くなと注意されたじゃないか」
「お前、エリザベスはこんなに小さいんだぞ。そのエリザベスが拷問されているかと思うと俺は1秒も惜しい」
そう叫ぶと俺はチャーリーを無理矢理連れ出したのだ。
「ハワード、後で姫様に怒られる時は一人で怒られろよ」
「恩に着るぜ。兄弟」
俺がそう言って飛竜のチャイにまたがったチャーリーの後ろに飛び乗ると、
「俺はお前の兄弟じゃねえ」
ブツブツ文句を言いつつ、チャーリーはチャイを飛ばしてくれた。
「しかし、そんな小さい子供を魔女裁判にかけるなど、教会は悪魔だな」
「本当だ。奴らは許せん。リディアーヌ様がそのような輩は退治して頂けると思うが、手始めに俺様が一太刀浴びせてやる」
俺は怒り狂っていた。
俺は学園に入るまではちょくちょく従妹の家に母に連れられて遊びに行っていたのだ。学園に入ってリディアーヌ様と知り合ってからはどこに行くにもご一緒して、従妹の家にも行かなくなったが。最後に従妹に会ったのは5年くらい前の話だった。
従妹は会うたびに剣を教えろだの、俺の冒険した時の話を聞かせてほしいだの、俺に話しかけてきた。まあ、おしゃまな女の子で、俺を恐れもせずに寄ってくる珍しい子供だった。
だからか俺も可愛がったのだ。
その子を拷問にかけるなど、本当に許せん。
俺が焦っているのが判ったのか、チャーリーは無理して、チャイを5000メートル級の高山の上を飛んでモスリムへの最短ルートを進んでくれたのだ。
飛竜で飛べばあっという間だった。
モスリムの街並みが見えてきた。
「どこに行けば良い?」
「あの尖った尖塔が教会だ。あの中にエリザベスが捕まっているんだ」
「どうする? チャイを付近の森に隠してから潜入するか」
「いや、一秒でも大事にしたい。中央突破。あの尖塔のステンドクラスをぶち破ってくれ」
「本気か?」
俺がそう言うとさすがにチャーリーは一瞬戸惑ってくれた。
「俺を下ろしたら、後は戻ってくれて良いぞ」
「そういう訳にも行くまい。ええい、ままよ。俺らもできる限りやってやる。チャイ。ドラみたいにあのステンドグラスをぶち破れ」
「ピーーーー」
チャイは鳴いてくれた。
「おい、飛竜だ」
「飛竜がいるぞ」
下に見慣れない、教会所属の騎士団と思われる連中が叫んでいた。
そのまま一気にチャイは教会のステンドクラスに突っ込んでくれたのだった。
ガシャーーーーン
大音響と共にステンドグラスが木っ端みじんにはじけてチャイは教会の中に降りてくれたのだ。
「キャーーーー」
シスター達が逃げ惑い、騎士が剣を抜いた。
「悪魔の使いめ」
俺は飛び降りるや、俺に斬りかかってきた騎士を一刀両断したのだ。
中では飛竜とチャーリーが暴れてくれていた。
「ここは任せて、早く行け」
「恩に着るぜ」
俺はチャーリー達に手を振ると
礼拝スペースから教会の奥に駆け込んだのだ。
出会い頭の騎士を斬り捨てて、横に固まった司祭らしい男に剣を突きつけた。
「ヒィィィィ」
男は悲鳴を上げた。
「二度と言わねえからよく聞け。領主の孫娘のエリザベスはどこだ」
「領主の孫娘?」
「しらばっくれるな。貴様らが魔女裁判などと言う下らんものをしている場所はどこだと聞いているんだ」
俺は剣を男の首筋に押しつけた。
一部切れて血が流れ出す。
「や、やめてくれ。地下だ」
「案内しろ」
俺は男を強引に案内させた。
途中で出くわした騎士達は次々にぶった斬って行った。
「ここです」
「本当だな」
俺は扉を蹴破ると男を部屋の中に突き飛ばしたのだ。
「ギャー」
中で剣を構えて待っていた騎士に司祭は斬られていた。
俺は中に駆け込むや、その騎士二人を斬り捨てる。
中には水槽の上に吊り下げられたずぶ濡れの娘とその前で座っている偉そうな男と周りには10人くらいの男がいた。それと滑車の前にいる下男二人がその娘を上げ下げしているみたいだった。
「な、何やつだ!」
偉そうな男が言ってくれた。
「貴様、人に名を聞く時は自ら名乗る常識も知らんのか? だから世間知らずの教会の奴らは嫌いなんだ」
「何だと。貴様、モスリム伯爵の手のものか」
「ふんっ、仕方が無いから礼儀しらすの奴らに名乗ってやろう。俺様は竜姫リディアーヌ様の一番の騎士、ハワード・ノールだ。俺の従妹のエリザベスを救いに来た」
「あはははは。一人でやってくるなど、飛んで火に入る夏の虫だな」
「余計な事は良い。エリザベスはどこにいる」
「お兄様」
ずぶ濡れの女が声を上げてくれた。
「えっ、お前、めちゃくちゃ大きくなっていないか」
俺は驚いた。水に何回もつけられたであろうエリザベスは小さい子供だと思っていたのが、何か背が高くなって、出るところが出て服が透けて見えていた。
「ふんっ。もう一度女を水につけてやろう」
男がそう言って滑車を握っていた男に命じようとした時だ。
俺はそのままエリザベスのつり上げられている所に飛んだ。
剣で鎖を切るとエリザベスを抱え。そして、そのままエリザベスを抱えて滑車を操作していた二人を踏み台にして着地した。
「ギャー」
踏み台にされた男達は悲鳴を上げたが、知ったことでは無い。
エリザベスをこのような酷い目に遭わせたのだ。即座に斬って捨てられなかっただけ感謝すべきだ。
「お兄様、良かった、助けに来てくれて」
エリザベスが泣き出した。
「俺様が来た限りはもう大丈夫だ。この頭の腐った坊主達はすぐに俺様が成敗してくれてやるからな」
俺はエリザベスを抱きしめて言ってやったのだ。
「ふん、それはどうかな」
威張った男が合図すると扉から白い鎧を着た聖騎士達がなだれ込んできた。
「ふん、辺境伯の息子か。貴様もこれで終わりだ」
男は笑ってくれた。
俺は剣を構えたが、さすがの俺もこれだけの敵をエリザベスを抱えて退治するのは難しかった。
俺は進退窮まったのを悟ったのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ハワードとエリザベスの運命やいかに?
続きは明朝です。








