隣国国王への折檻状の中で勝手に竜王になっていました
ごめん間違って前のをあげてしまっていた
交換しました
本当にごめんなさい
そして、決行日の朝を迎えた。
空は快晴、絶好の折檻日和だ。
「ようし、全員良いわね」
私は後ろに揃う、飛竜騎士団の面々に問いかけた。
「「「おう!」」」
全員が返事してくれた。
「今まで好きにしてくれたギンガルメの奴らに竜王国の恐ろしさを見せてやるわ」
「あなたたち、こんなことしていいと思っているの?」
「そうだ。これが捕虜に対する扱いか!」
私の前には縄で縛られてひとくくりにされた兄嫁や全権大使が喚いていた。
「ふんっ、我が国に余計なことをするからよ。その身をもって詫びると良いわ」
「な、何をするつもりなの」
兄嫁が悲鳴に近い声を上げた。
「ようし、行くわよ」
私は兄嫁を無視すると、ドラちゃんに騎乗した。飛竜隊の全員が飛竜に乗り込んだ。
「ドラちゃん、その汚らしいものを咥えて」
「えっ、ちょっと、待って、きゃあーーーーー」
ドラちゃんは縄を咥えるとそれを引っ張って空に浮かび上がったのだ。
「「「ギャーーーーー」」」
騎士や全権大使が悲鳴を上げるが知ったことではない。
この竜王国インスブルクに余計な事をしようとしてくれたのだ。
私は許す気は無かった。
「ドラちゃん、発進!」
「キャーーーーー……」
ドラちゃんが加速してくれて、縛られた兄嫁の悲鳴がして、途切れた。
早くも気絶してくれたみたいだ。
まだ始まったところなのに……
ドラちゃんは50人を咥えても平然と飛んでくれた。
後ろに100騎の飛竜騎士団が続く。
100騎の飛竜の大軍の行軍する様はきれいで、壮観とした眺めだった。
「ようし、皆、そろそろ飛ばすわよ」
私はそう言うと、ドラちゃんの高度を上げた。
ぐうーんとドラちゃんは高度を上げてくれる。
「ギャーーーー」
全権大使の声が響いたが、途中で聞こえなくなる。
奴らも気を失ってくれたみたいだ。
私の後ろに100騎が続く。
国境を越えたが、当然ながら、迎撃に上がってくる奴らはいない。
制空権は完全に我らの元にあるのだ。
ギンガルメの王都はあっという間だった。
王都の上に着くと、私達は高度を落とした。
「キャーーーー、止めて、下ろして」
気がついた兄嫁が叫ぶ。
「おい、それはインスブルクに嫁に行かれたコーデリア様では」
「どうしたんだ?」
「何でインスブルクの飛竜隊に吊るされているの?」
庶民達が騒ぎだした。
私は左右に合図した。
大量に刷った印刷物を飛竜隊の面々が空から配る。
「何々、貴国の姫はあろうことか義父の国王に対して、夫である王太子をたきつけて、反逆させた。
それを我が国の陛下が裏から手を引いていたって」
「それに対してこれより、こちらの湖に送り返すので、そちらで罰してほしいって、陛下はなんてことされたんだ」
庶民達が騒ぎ出した。
私達はギンガルメの主城の前の湖の上空に陣取ったのだ。
「な、何事だ!」
「陛下、危険でございます!」
「ええい、あれはコーデリアでは無いか!」
湖の前の広いテラスにギンガルメのハワードが言うところのくのがめついデブ国王が現れたのだ。王は回りの護衛を退けて、テラスの先に出てきた。
私はハワードに合図した。
ハワードを乗せたチャーリーが、テラス上空に近づく。
「おい、何か来たぞ」
「どけっ!」
そう叫ぶとハワードは白い布を掲げて、飛び降りてくれた。
「何やつだ」
「ええい、控えおろう! 俺様はリデイアーヌ様の軍使であるぞ」
「何だと」
「金髪の山姥のか」
「無礼な」
そう叫ぶや、ハワードは無礼な事を叫んだ騎士を居合いで斬り捨てていた。
「ギャーーーー」
男が倒れ込む。
「貴様、良くも」
「貴様ら、それが軍使様に対する態度か」
ハワードは剣を抜いて、斬り合いを始めてくれたんだけど。
「だからハワードは軍使は無理だって言ったのに」
レックスがブツブツ言っている。
私もそう思ったけれど、ハワードが絶対に行きたいって言うからしたのに!
本来は私がやるつもりだったのだ。
それは危険ですって皆して止めてくれたんだけど……
「そうだ、ハワード、そのまま国王まで斬り殺せ!」
エイブなんて余計な事を言っているし、こいつら元々国王を退治して占拠するつもり満々みたいだった。
それで短気なハワードを行かせたのか!
私は失敗したのを知った。
「ハワード!」
私が叫んだ。
「はっ」
一応、ハワードは叫ぶや、宙返りをして、国王の護衛を蹴飛ばして、国王の後ろに回り込むと国王の首に剣を突きつけたのだ。
「読め!」
そして、折檻状を広げて、国王に強要した。
「何故俺様が」
「死にたいのか」
剣先が国王の首を傷つけて
「ヒィィィィ」
と国王が悲鳴を上げる。
「お前らは少し下がれ」
やむを得ず、回りの騎士達が少し下がった。
「折檻状だと、爬虫類の親方のくせに生……ヒィィィィィ」
剣が更に国王に食い込んで国王は悲鳴を上げた。
「さっさと読め」
「予は竜神様の化身、竜王国国王、リディアーヌである」
「えっ」
国王が読んだ文章に私は唖然とした。
そんなことは一言も私は書いていないのだ。
「ちょっと、国王って何よ。私は一言も認めていないわよ。そもそもそんなのどこにも私は書いていないわ!」
「うーん、ハワードの奴はおっちょこちょいですからな。他の書面を間違えて持って行ったのかも知れませんな」
レナードが平然と言ってくれるんだけど、その割にハワードは慌ててもいない。
「思い違いも甚だしい聖女教の走狗と化した名前だけのギンガルメ国王に告げる」
青くなりながらギンガルメ国王は読んでいるんだけど。
「というか、何で折檻状が2通あるのよ」
私が文句を言うと、
「いやあ、姫様の作られた文章は誤字脱字が多かったので、宰相のマトライが清書しましたのじゃ」
「はああああ、清書って元と全然違うじゃ無い」
私は切れていたんだけど、
「神聖なるインスブルク王国に身の程知らずにも手を出そうなどと思い上がりも甚だしいわ。罰として、ギンガルメ国王は王としての扱いを取り下げて、竜王国の男爵位に降格させるものとする」
「はい? どういう事なの、レナード」
「どうもこうも、姫様は占拠を嫌われましたからな。ここはやむを得ず、命を助けてやって、男爵位への降格で許してやったのです。姫様のとても慈悲深いお心で」
レナードが何か言ってくれるけれど、絶対に変だ。そもそも竜王国って何だ? インスブルクのことでは無いのか? 私はとても不吉な予感がしたのだ。
「しかし、二度目はないと思うように。予から慈悲深くも忠告しておいてやる。予にもう一度逆らおうとした時は、その方を処断するものとす。竜王国初代国王リディアーヌ」
「き、貴様等。この長い歴史のあるギンガルメ国王様を男爵位に降爵するだと! それも爬虫類の親玉風情が」
「そうか、貴様はこの場で殺されたいのだな」
すうっとハワードの目が鋭くなった。
「えっ、いや、少し待て」
「リディアーヌ様をなんと言った」
「いえ、素晴らしい人だと常々思っております」
「そうだ。ならよろしかろう」
ハワードはそう言うと、国王を離したのだった。
いや、ちょっと待て! 全然良くない!
何故いつの間にか私が国王にならないといけないのよ。
絶対におかしい!
でも、私は叫んでいる暇なんて、次の瞬間、無くなってしまったのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございました
重臣の思惑で勝手に国王にされてしまったリディです。
リディが国王になった方が良いと思う方はブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾