王太子視点 ついに問題児の婚約者を婚約破棄して断罪するときが来ました
俺の名前はエイベル・シュタイン、このシュタイン王国の王太子だ。
シュタイン王国は大陸南部にある大国だ。農業も商業も発展していてとても豊かな国だ。でも、その大国の王太子である俺の婚約者が北の辺境の小国インスブルクの王女というのが俺には不満だった。婚約者を国外から迎え入れるなら、普通は北の大国の帝国や周辺のインスブルクよりも大きな国の王女を迎え入れるべきであろう。なのに、祖父は何をとち狂ったのか、外遊先で我が国の人口の5%にも満たない小国の王女を俺様の婚約者に決めてきたのだ。
父も母も不満だったが、国王の祖父には逆らえなかったみたいだ。
「あのような小国の王女では我が国には何のメリットもないではありませんか」
母など折に触れては、呟いていたくらいだ。
祖父がその小娘の何を気に入ったのか全く判らなかった。姿絵を見てもどこにでもいるような普通の女の子だ。まあ、少しは運動神経が良いみたいだったが、それだけだ。祖父の道楽に付き合わされる俺の身にもなってほしかった。
時が経てばこの話はご破算になるだろう。俺は楽観していたのだ。
しかし、祖父は考えを変えなかった。それどころか
「エイベル。絶対にリディアーヌを手放すなよ。あの子は特別だ。絶対に王家に取り込むのだぞ」
祖父は俺にそう言ってくれたのだ。
そして、16になって王立学園が始まり、そのリディアーヌがインスブルクからやってきた。
「エイベル様、お初にお目にかかります。インスブルクから参りました、リディアーヌと申します」
リディアーヌは俺の前でカーテシーをしてくれた。
まあ、多少は可愛げのある女だとは思ったが、その入学試験の成績を聞いて目が点になった。なんと学園の最下位だったのだ。普通王族がそんな点数を取るのはあり得なかった。そんな馬鹿で、これからこのシュタイン王国の王太子妃としてやっていけるのか? 俺は頭が痛くなったのだ。
父も母も眉をしかめていた。
「はっはっはっは、まあ、勉強なぞ出来なくても問題なかろう」
でも、祖父はそれを聞いて平然と笑っていたのだ。
学園始まって以来初めて王女が学園の底辺クラスのEクラスに入ったのだ。
そして、学園が始まると、何をとち狂ったのか、普通の貴族令嬢は部活に入るなら手芸部とか文芸部なのに、リディアーヌは剣術部に入ったのだ。
「一体どういうつもりだ?」
「護身術の練習ですわ」
俺が聞くとそのように言ってくれたのだが、絶対におかしい。
それに比べて公爵家の令嬢のアラベラは可愛げがあった。リディアーヌと比べて編み物の腕も一人前だった。成績もそこそこAクラスでは俺に次いで良い。家柄も公爵家だ。大国の我が国はあえて他国から王女を娶らなければいけないこともないのだ。それにインスブルクなんて小国の王女が嫁いできたところで我が国に何のメリットがあるのだ?
これもそれも全てはもの好きな祖父が原因だった。両親も祖父が亡くなるまで静かにしておきなさい、と完全に俺の味方だった。
祖父が死ぬまでは俺も我慢していたが、死んでからはこれ見よがしに公然とアラベラを連れ歩くようになった。
それに対してリディアーヌはアラベラに文句を言ったみたいだが、辺境の小国の王女よりも我が国の公爵家の人口の方が多いのだ。当然アラベラの方が地位は高い。
「小国の王女風情がとやかく注意するな」
俺はリディアーヌに釘を刺したのだ。
リディアーヌはその時は引き下がったようだが、今度は配下の平民共を使ってアラベラに嫌がらせを始めたらしい。本当に許せなかった。最近は剣術部の部長となってアラベラによると徒党を組んで学園内を闊歩しているらしい。俺は見たことがないが、アラベラも虐められているそうだ。
その上平然と俺を批判しているらしい。
「小国の王女の分際で、可愛いアラベラを虐め、俺を批判するとは絶対に許さん」
俺の我慢にも限度があった。
俺は卒業パーティーでアラベラをエスコートすることにした。ついでにその公の場でリディアーヌを婚約破棄してやるときめたのだ。そして断罪の上国外に追放してやるのだ。
今まで態度のでかかったリディアーヌも誰に逆らってきていたかよく判るだろう。その時に泣いて謝ってきても手遅れだ。
リディアーヌと徒党を組んでいた騎士志望の男達も配属先は北方に送ってやることにした。
そんな時にだ。またしてもリディアーヌは問題を起こしてくれた。
自分が勉強せずに順位が最下位なのに、これは教師陣の陰謀だと徒党を組んで騒いでいたのだ。俺はあまりのことに注意した。謝ってきたがもう俺の我慢も限界だった。
もう少し可愛げがあれば俺の側室として置いてやっても良かったが、日頃の行いが悪すぎた。もしそんなことをすれば今度は逆にアラベラが又虐められるのは確実だ。
俺は断罪の時に周りのもの達が騒ぎ出さないように釘を刺す意味で剣術部に顔を出した。なんとリディアーヌはほとんど剣術も出来ないくせに皆に稽古をつけているではないか! 本当にもう笑止だった。男の中に入れば威張れるとでも思っているのか?
現に俺様が剣で対戦したら、一瞬で倒してしまった。なんか本当にあっけなかった。
「これでいい気になっていたリディアーヌも少しはましになるだろう」
と俺様が言ったら、それに切れたアーチボルトとか言う騎士志望の男が、あろうことか俺様に剣の鞘を投げつけてくれたのだ。もう、今までどういった教育を受けてきたのだ?
普通は王太子にそんなことをすれば処刑だ。まあ、学園内であるから大目に見てやったが、後で騎士団長に話してこいつはインスブルクとの国境の地に送ってやることにした。
「エイベル様。大丈夫でしょうか?」
明日の卒業パーティーを前にアラベラが不安そうに俺にすり寄ってきた。
「大丈夫だ。当日は騎士団の面々も参加させる。絶対にアラベラに腕一本触れさせん。リディアーヌがいかに抵抗したところで騎士団の前ではたいしたことは出来ない」
俺はアラベラを安心させるためにその肩を抱いていた。
明日で全て終わる。そこでやっと俺は俺様にふさわしくないリディアーヌを婚約破棄の上断罪できるのだ。俺は明日がとても待ちどおしかった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
お待たせしました。
ついに卒業パーティーに突入です。
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