地下牢に突入したら不敵な笑みを浮かべた兄嫁が待ち構えていました
私が敵の敗走を聖剣をしまって見送っている時に、第三部隊がやってきた。
後は第三部隊に任せて、私は竜谷に戻ることにした。
次は王宮の解放だ。
お兄様と対峙しないといけない。
なんか憂鬱だ。
でも、このままの状態を続けるわけにはいかない。
私も覚悟を決めないと……
私が竜谷に戻るとレナードとマトライとエイブが膝を付き合わせて額を寄せて、何やら悪巧みをしていた。
「ここは、もう、姫様に王について頂くしかありますまい」
「さよう、姫様は元々竜姫様なのだからこの国の王は当然姫様がなるべきで」
「当然そうなりますな」
「ピー」
悪巧みする三人に呆れた私の代わりにドラちゃんが咳払いならぬ咳鳴きしてくれた。
ぎょっとして三人は私を見たが、
「これはこれは竜姫様、お早いお戻りで」
宰相のマトライが早速跪いてくれるんだけど……
「三人が寄って何を悪巧みしているのかしら」
私が呆れて言うと、
「また、悪巧みなどと人聞きの悪い」
「さよう、三人そろうと文殊の知恵とも言いますからな」
「我々は当然のことを話しているだけで」
三人は言い訳してくれた。
「つまらない相談は良いから、突入する算段はついたの?」
私が聞くと、
「陛下と王妃様は姫様が捕まっていた牢に入れられているみたいです」
「まあ、陛下としては竜姫様を閉じ込めたのですから因果応報ですな」
「さようでございます」
三人が好きなことを言ってくれるけど。
「三人とも二人は一応は私の両親なんだけど」
私がむっとして言うと、
「当然でございます」
「姫様は竜神様からは生まれていらっしゃいません」
「いやいや、実は竜神様のお腹から生まれられたかも知れませんぞ」
三人は更に好きなことを言いあってくれた。
「判ったからもう良いわ。で、突入の作戦は?」
「姫様がドラの助に乗って突入、我らがそれに続きます」
なんとも身も蓋もない作戦なんだけど……
「まあ、それが一番被害が少ない攻撃かと。儂が先頭で行っても良いですが、反逆者どもの命の保証はいたしませんからな」
レナードの答えに私は首を振った。そう、レナードなんて先頭にしたらお兄様も兄嫁も全員殺しかねない。私はできる限り被害は少なくしたかった。
「その案でいいわ。私の突入と同時に全王宮を制圧。ギンガルメの奴らは全員捕まえる」
「お任せください。既に王宮は極秘に完全に包囲しています。王宮の中にも手のものも多数入れました。後は姫様が合図賜ればすぐに攻撃できます」
「判ったわ。これ以上被害が出ないようにさっさと攻撃を開始します」
私は頷いた。
私はついてきたそうにしているレックスとハワードを無視してドラちゃんにまたがった。
「よし、攻撃開始よ」
私がそう叫ぶと
「ギャオーーーー」
ドラちゃんが雄叫びを上げてくれた。
ゆっくりとドラちゃんが浮かび上がる。
それと同時に飛竜達も次々に飛び上がった。
「クォォォォ」
「クォォォォォォォォォ」
飛竜達も次々に鳴いて合図し合う。
そして、私を先頭にして、各部隊が編隊を組むや、一斉に動き出した。
全100騎、それが一斉に飛ぶ様は壮観だった。
私も全軍率いるのは久しぶりだ。
そのまま谷を突き進み、王宮の裏庭に出る。
「姫様だ」
「姫様が帰られたぞ」
「竜姫様のご帰還だ」
そこを警備していた兵士達が手を振ってきた。
ここは私のそのまま、王宮の建物をぐるっと回って、前回、離脱するために南面巨大ステンドクラスをぶち壊した所にドラちゃんを向かわせる。
そこは応急処置としてガラスが張られていた。
バリン
巨大な音がしてガラスをドラちゃんは頭で突き破って王宮内に突入した。
「ぎゃああああ」
「何だ?」
「グゥアアア」
そのまま警備しているギンガルメ兵達をドラちゃんがはじき飛ばしてくれる。
そのまま、ドラちゃんは低空飛行して次々に私達に剣を向けてくる騎士達を弾き飛ばしてくれる。
その横には第一飛竜部隊の面々が飛竜から攻撃してくれる。
逆らう奴は飛竜騎士団が斬り倒す。
容赦は無かった。
竜神様の王宮を他国の騎士達が汚したのだ。全面降伏するか、死して詫びるかのどちらかだ。
飛竜隊はこのインスブルクの王宮にたむろするギンガルメの騎士達を瞬く間に制圧した。
私はそれを見届けると、ドラちゃんをそのまま地下に突き進ませた。
「ギャッ」
地下牢の最初の鉄格子は弾き飛ばた。
牢番も弾き飛ばす。
そして、一気に地階に降りると私の入れられていた牢の鉄格子に向かう。
「竜だぞ」
「おのれ」
「ギャー」
ドラちゃんに斬りかかろうとした不埒な騎士はドラちゃんか弾き飛ばしてくれた。
バキバキバキバキ
そして、ドラちゃんは一気に私の入れてられていた鉄格子に体当たりすると電撃を浴びつつも、一気に鉄格子をぶち破っていた。
中にいた騎士達は鉄格子と一緒にはじき飛ばされていた。
「お父様! お母様!」
私は叫んでベッドに寝込んだ父とその横にいる母に近づこうとして、立ち止まってしまった。
「あああら、お待ちしておりましたわ」
そこには剣を構えたお兄様と不適な笑みを浮かべた兄嫁が居たのだった。
ここまで読んで頂いて有難うございました
待ち構えていた兄嫁の策は何か?
食いしん坊なドラちゃんの前に差し出される餌?
リディの運命やいかに?
お楽しみに