竜帝様のお使いにされてしまいました
私達が騎士達の降伏を受けている時に、チャーリー達がやっと追いついてきてくれた。
「遅いわよ!」
私が文句を言うと
「姫様。姫様がゆっくりで良いとおっしゃられたではないですか!」
チャーリーが文句を言ってきた。
「あれ、そうだっけ?」
そういえばそうだった。私はとぼけようとして、
「姫様は相も変わらず嘘が下手ですな。目が泳いでおりますぞ」
「レナード! あなたどうしてここに?」
私はレナードを見つけて驚いた。
「何を言っているのです。儂は元々姫様の守役ですからな。その守役を置いて勝手に出奔されるとはどういうことですかな」
レナードが怒ってくれた。
「いやあ、ごめん、緊急事態だったから仕方が無かったのよ」
私は一応謝った。
「なんか軽いですな、姫様。王女殿下とあろうものがそのような言葉の軽さでどうされるのです」
「レナード、私は飛び出す時に王女を止めてきたから」
「何と、あのぼんくら国王はそれを認めたのですか?」
レナードからすれば父も形無しだった。
「だって王女のままではベティを助けに行ってはいけないと言うから」
「インスブルクにとってはそれはとても大きな損害ですな。もっともシュタイン王国の面々にとっては朗報かも知れませんが」
笑ってレナードが言ってくれた。
「シュタインからしたら、姫様が現れた事って、天災以外の何物でも無いんじゃないか」
ブツブツとザカリーが言ってくれた。
「ザカリー、何か言った?」
私がぎろりと睨み付けると
「ヒェェェェ、何でも無いです」
ザカリーが震え上がってくれた。
「それよりも姫様、あちらで何やらもめておりますが」
レナードが指す方を見ると
「クラリッサ、クラリッサ」
天井が壊れた、馬車の中でおそらくベティのお父さんがお母さんを揺り動かしていた。
「アラカルト男爵、奥様は大丈夫ですよ」
私が保証した。
「しかし、何故気を失っているのですか」
「ちょっと、ドラちゃんを間近で見られてしまったからではないかと思うんですけど」
ドラちゃんは可愛いのに、一部女性受けはあまり良くないのだ。
「うっ」
お母さんが目を覚ました。
「クラリッサ!」
「あ、あなた」
二人は見つめあった。
「ホーキンズに襲われて、大丈夫だったのか、クラリッサ?」
男爵が心配して聞いていた。
「大丈夫よ、あなた。危ないところをあちらの王女殿下に助けて頂いたから」
「そうか、竜姫様にお助け頂いたのか」
男爵は私の方を見ると
「本当に危ないところをお助け頂いてありがとうございます。まさかこの地に竜帝様の御子孫が来て、我々共を助けていただけ事になるとは、本当にこれも竜帝様のお導きです」
「あなた、本当よ。私も神様にお祈りしたら竜帝様によく似た方が現れて驚いたもの」
なんか二人して私にお祈りしそうな感じなんだけど。
「そうじゃ、二人とも。こちらのお方はこの地を治められた竜帝様の血を引く御子孫であるからな」
レナードが恭しく言ってくれたが、絶対に何かあやしい。余計なことを考えているのは言うまでもなかった。半眼で見る私を無視してレナードは話し出したのだ。
「そうですか! 竜帝様がこの方をこの地に派遣して頂けたのですな」
「さようじゃ。まずはその方らの領地を、汚れたホーキンスなどと言う中央貴族から取り戻さずばなるまいて」
いかにも自然そうにレナードは言ってくれたのだ。
「竜帝様のご子孫であらせられる竜姫様はそこまでしていただけるのですか」
「本当にありがたいことです」
男爵と男爵夫人がなんかさも当然のように言うから、私は男爵領を占領している変態伯爵のホーキンズの残党から解放するためにアラカルト領に向かおうとした。
「姫様が退治された伯爵はどうします?」
チャールズが聞いてきた。
「そのような変態は生きていたら即処刑だろう」
ハワードが当たり前のように言ってくれるけど、
「まあ、二度と悪いことはできないとおもうから、奴隷にして、鉱山にでも放り込めば良いんじゃない」
私は一応博愛主義者だ。殺すのは良くない。
「二度と悪いことが出来ないって、姫様、まさかあそこをチョン切られたのですか?」
ザカリーが余計なことを聞いてきた。
「そんなことするわけ無いでしょ。蹴り潰したのよ」
私がムッとして言うと、
「やっぱり」
なんか、皆怖いものを見るように私を見てくれるんだけど…
「リディアーヌ様、そのようなことされたらきれいなおみ足が汚れまする。今後はそのような時は私目にお任せ下さい」
ハワードが言うけど、こいつは絶対に殺すに違いない。それもどうかと思うんだけど、後でベティに聞いたらどっちもどっちじゃないと言われてしまった。なんか解せない。
私はドラちゃんに乗って、後ろにレックスを乗せて、一路アラカルト領に向かったのだ。私の前にはレナードが魔術で飛んでくれた。
そのレナードは男爵を連れて飛んでくれたのだ。
館の回りには占領した騎士達の前に多くの使用人が集められていた。
「おい、竜だぞ」
「それも、竜に人が乗っている」
「竜帝様だ。竜帝様が戻られたのだ」
「シュタインの圧政から俺達を助けるために神がこの地に遣わせて頂けたのだ」
「ええい、静まれ!」
騎士の司令官らしき男が叫んだ。
「おい、あの隣にいるのは我らが男爵様だぞ」
しかし、使用人達はその横にレナードが魔術で飛ばしている男爵を見つけて、叫びだした
「男爵様が竜帝陛下を連れてこられたのだ」
「竜帝様万歳」
使用人達が叫びだしたのだ。
「ええい、だまれ、黙らんと斬るぞ……ギャー」
そう叫ぶ、指揮官の頭がいきなりもえだしたのだ。
レナードだ。
「竜帝様の怒りだ」
「竜帝様を怒らせると、頭を燃やされるぞ」
領民達が叫びだして、騎士達が必死に頭を押さえる。
「どの者じゃ。竜帝様に逆らうやつは」
レナードが回りを見渡した。
レナードが喜んでやっているのが丸見えだ。
「ええい、やってしまえ」
もう一人の指揮官みたいな男が叫んだ瞬間だ。
「ギャー」
今度は男がまるごと火だるまになったのだ。
転げ回る男を見て、騎士達は恐怖にひきつった顔をした。
「皆のもの、控えおろう!」
レナードが格好をつけていってくれた。前世の時代劇の1シーンだ。
皆一斉に平伏してくれたんだけど。
いや、ちょっと待って、私に平伏してどうするのよ!
私が叫ぼうとしたのを、レックスに止められた。
「ええい、控えおろう、皆のもの、こちらにおはすのは竜帝様のご子孫のリディアーヌ様であるぞ。我が頼みに竜帝様が遣わして下さったのだ」
何故か、男爵までノリノリなんだけど……
私は神様じゃないんだけど、どうしてくれるのよ!
私は叫びたかったが到底言える雰囲気ではなかった。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。リディの最初の領地ができました。
でも、維持できるのか?
次回は明朝更新予定です