表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/116

とある男爵婦人の独り言 昔振った男に襲われました

本日朝更新できずに済みません

 私の嫁いだアラカルト男爵領はシュタイン王国の中でも北の国境近くにあり、山にも囲まれていて、冬は結構雪が降るところだった。私は近くのバーモント子爵家の出身だったけれど、雪はここまで積もらなかった。少し位置が変わるだけでこれだけ気候が変わるんだと、驚いたのを覚えている。

 それを除けば、ここでの生活はとても快適だった。

 夫のアレンは私には優しくしてくれたし、生まれた一人娘のベティは可愛かった。

 私はアレンと結婚できてとても幸せだった。


 ただ、娘のベティについては、この領地の周りは山に囲まれていて隣の領地に行くのも一苦労だし、同じ年齢の貴族令嬢は近くにいず、ベティに友達がいなかったのが少し気にはなっていた。

 だけど、ベティは大自然の中でおおらかに育ってくれていた。


 そんなベティが16で学園に入った。私は今まで友達もいなかったから友達ができるだろうかととても心配した。

 夫のアレンはベティなら大丈夫だと心配していなかったが、私は不安だった。

 学園でのクラスは私が心配したようにEクラスだった。そうベティは勉強は苦手だったのだ。

 そして、それ以上に驚いたことにベティの初めての友人が隣国のインスブルク王国の王女様でこの国の王太子殿下の婚約者のリディアーヌ様だった。


 私は驚愕した。


 そもそも娘は男爵家の令嬢で、どちらかというと、礼儀作法などあまりきつく言わずに育ててきた娘だ。そんな娘がどうしてそんな高貴な方と友人になれたか、私には判らなかった。そもそも、娘は最低のEクラスなのだ。それがどうして王女様と知り合いになれたか私には不思議だった。でも、娘から送られてくる手紙には王女様の事がよく出てきた。娘が何かしでかさないかとても心配したが、手紙で見る限りは心配はなかった。

 夫はもっと楽観的で、竜王様をご先祖様にもつインスブルクの王女殿下が娘に酷い事をするわけはないと言っていた。

 この地方は100年前までは竜王国という、ある程度の大きな国があったのだが、100年前にシュタイン王国に併合されていたのだ。ただ、昔、周りに跋扈していた魔物を討伐して国を起こした竜王様は未だにこの地方では熱く奉られている存在だった。聖女信仰のシュタイン王国に内緒で、未だに多くの貴族達は竜王様も信仰していたのだ。

 娘は未来の王妃様の側近になるんだとそれまで蔑ろにしていた勉強も熱心にしていて、私達夫婦はその事を喜んだのだ。


 それが大きく狂いだしたのは、卒業パーティーでリディアーヌ様が王太子殿下のエイベル様から婚約破棄されてからだった。

 怒り狂ったリディアーヌ様は王太子を張り倒して出奔されたのだ。

 しかし、さすが竜王様の子孫なのかシュタイン王国が出した追っ手をリディアーヌ様はものともせずに悠々と帰国されたらしい。

 娘はそのまま王宮勤めになったのだ。

 でも、リデイアーヌ様のために頑張ると言っていた娘がうまくやっていけるかどうか私はとても不安だった。

 リディアーヌ様は婚約破棄されたエイベル殿下を張り倒した時に重傷を負わせてしまったらしい。

 信じられないことに現国王はそのリディアーヌ様を懲らしめると言って10万の大軍を出したのだ。

 でも、そもそも婚約破棄したのは自分たちなのに、それに怒り狂ったリディアーヌ様がエイベル殿下を張り倒したのは至極まっとうなことだと思う私はおかしいのだろうか?

 それで怪我させられたから大軍を派遣するというのは大国としてどうかと思わざるを得なかったんだけど。周辺諸国から笑いものになるのでは無いかと私は夫と話していた。



 そんな時だ。


 我が領に突然、軍馬の隊列がやってきたのだ。

 私は何事が起こったか、判らなかった。


「開門せよ。陛下の命である」

 声高に叫んだのは近くのホーキンス伯爵だった。


 しかし、門番が開門するとホーキンス伯爵の軍勢は脱兎の如く我が屋敷に殺到してきたのだ。

 私は自室にいるところを騎士達に踏み込まれた。


「何をするの?」

 私は驚いて叫んだが、

「ええい、黙れ。国家反逆罪で、捕縛命令が陛下から下っておるわ」

「な、何を言っているの。そんな訳はないわ」

 しかし、私の言い訳は聞いてももらえずに、私はあっという間に後ろ手に縛り上げられたのだ。

 そのまま、引っ立てられてホールへ連れて行かれた。


「キャッ」

 私は乱暴に地面に投げ出された。

「クラリッサ!」

 アレンが私に声をかけてきた。アレンも後ろ手に縛られていた。

「あなた、どうなっているの?」

「ベティがリディアーヌ様と通じてシュタイン軍の情報を流したと疑われているんだ」

「そんな、文官のあの子が軍の情報なんて掴んでいるはずが無いわ」

「それを決められるのは、陛下だ」

 私は聞きたくない声を聞いた。

 いつも私をいやらしい目で見ていたホーキンス伯爵だ。

 昔、妻にと求められたが、私は実直で優しいアレンを相手に選んだのだ。

 よりにもよってこの男が乗り込んでくるなんて最悪だった。


「クラリッサ、久しぶりだな」

 ホーキンスは相も変わらず、私を舐めるように嫌らしい目で見つめてくれて、私の背筋に怖気が走った。


 二度と会いたくない人物に捕縛されるなんて最悪だ。


「私としては君にこんな事はしたくなかったんだが、陛下の命令でね」

「ホーキンス、ベティは無罪だ」

 そういったアレンが、次の瞬間ホーキンスに殴られていた。


「アレン!」

「私を呼び捨てにするな。反逆者の分際で」

 ホーキンスはニタニタ笑って言った。


「何するんですか? 酷いわ」

 私がホーキンスを睨み付けると

「ふんっ、私はこれでも、紳士的なつもりだよ。反逆罪は市中引き回しの上処刑だ。このまま素っ裸に剥いて王都まで護送してやろうか」

 嫌らしい笑みを浮かべてホーキンスは私に言ってくれたのだ。

 こいつは最低だ。


「止めろ」

 アレンが言ってくれたが、

「貴様、誰に向かって言っている」

 ホーキンスは再度アレンを殴ってくれたのだ。

 何回も。


「止めて!」

 私が叫ぶと渋々ホーキンスは止めてくれた。

「まあ良かろう。これから王都までお前達を護送する。この男を護送車に入れろ」

 ホーキンスは部下に命じていた。

 血まみれになったホーキンスが護送車に入れられる。

 私もそちらに行こうとした時だ。


「クラリッサ、貴様は俺の馬車に来い。少し聞きたいことがある」

「な、何を聞くというの?」

 私は警戒して聞いた。こいつと二人きりの馬車は危険だ。

「言う通りさっさとしろ。でないともっと、アレンを傷つけるぞ」

「クラリッサ、言うことを聞くな」

 アレンが叫ぶが

「お前は黙っていろ」

 ホーキンスがアレンを殴ってくれたのだ。

「もう、止めて!」

 私は叫んでいた。


「ホーキンス伯爵と乗りますから」

「そうだ。素直に聞けば良いのだ」

 ホーキンスは舐めるように私を見てくれたのだ。

「クラリッサ!」

「アレン、私は大丈夫だから」

 私はアレンに精一杯強がりして頷いたのだ。


 私は後ろ手に縛られたまま、ホーキンスの馬車に乗せられた。


 馬車は動き出した。

「ふんっ、クラリッサも馬鹿だな。私と結婚していればこのようなことになる事も無かったのに」

「何を言っているの? ベティが国を裏切ってなどいる訳は無いわ」

 私が反論すると

「それが貴様の娘は陛下の意向に逆らったのだよ」

 笑ってホーキンズは言い出した。


「嘘よ」

「陛下は貴様の娘にリディアーヌを呼び出せと命じられたのだ。それに対してお前達の娘は友人を裏切れないとそれを断ったそうだぞ」

 ホーキンスは笑って言ってくれた。

 私はその言葉を聞いて娘が言いそうなことだと理解した。

 そして、それを強要する国王と王妃に絶望したのだ。

 もうこの国は終わっていると。


「クラリッサ、このまま行くと貴様は反逆罪で処刑だ。下手したら連座で貴様らの親兄弟も処刑される。それでもいいのか?」

 ホーキンスは私を脅してきた。

「そんな」

 私は驚いた。いつからこのシュタイン王国は野蛮な国になってしまったのだ。

 前の陛下なら絶対にそんな事はしなかったはずだ。


「それが嫌なら、俺様の言うことを聞け。俺様の女になるんだ」

 この男は本当にくずだった。

 人の弱みにつけ込んで私を自分の女にしようとするなんてなんて奴だ。

 私はそんなことは死んでも嫌だった。

 でも、今のこの状況では逆らいようが無かった。

 ホーキンスはニタニタ笑って私に手を伸ばしてきたのだ。

 服の上から私の胸を揉もうとしたのだ。

「止めて!」

私は叫ぶと頭突きをホーキンスの顔に喰らわせたのだった。


ガン、という音ともにホーキンスが、顔を押さえる。


「おのれ、このアマ、いい気になりやがって」

ホーキンスがいきなり私の顔を張り倒してくれたのだ。

「キャッ」

私は叫んでいた。そして、私が椅子に倒れれる。

その私にホーキンスが乗りかかってきてくれたのだ。

「いや、神様!」

私は思わず神様に助けを求めたのだ。

絶体絶命のベティの母親の運命やいかに?

続きは明日です。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

私の次の作品はこちら

『もふもふ子犬の恩返し・獣人王子は子犬になっても愛しの王女を助けたい』https://ncode.syosetu.com/n9267kb/


私の今一番熱い人気の作品はこちら

『【電子書籍化】王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど……』https://ncode.syosetu.com/n9991iq/


3巻表紙画像

表紙絵はおだやか先生がエリーゼをお義兄様が抱きあげる美しいシーンを描いて頂きました。
3巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… そのお義兄様から「エリーゼ、どうか結婚してください」と求婚されました。』
こちらの新規書き下ろしは学園に出る幽霊竜退治です。学園時代のお義兄様の幽霊騒動にエリーゼが一緒に冒険します
とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【10/25シーモア先行配信はこちら、3千字のSS連れ子様の護衛騎士・シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/3/


■【11/19発売アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/-ebook/dp/B0DK55BWGS/


■【11/19発売楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/e9901759f61337b88109b29ff7a5ffb0/

表紙画像

表紙絵はおだやか先生が美しい、お義兄様とエリーゼのキスシーンを描いて頂きました。
2巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… 帝国に帰還しての宮廷夜会、お義兄様にキスされてしまいました』
こちらの新規書き下ろしはセッシーとの出会いです。皇帝一家でセシール湖にお出かけしたエリーゼはお義兄様たちと湖の地下宮殿に冒険に出かけます。
反逆の陰謀と共にそこにいたのは巨大な水竜で…… とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【9/25シーモア先行配信はこちら、3千字のSSドレス工房の主の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/2/


■【10/19発売アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DGQ7J6VH/


■【10/19発売楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/178537d615973d18a4cb8adc53c66c16/

表紙画像
1巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど 卒業パーティーは恐竜皇子と恐れられるお義兄様と一緒に』
上の表紙絵はおだやか先生が可愛いエリーゼを守る格好良いお義兄様を描いて頂きました。
このなろうで書いたのに【お義兄様との洞窟探検】2万字の描き下ろしが追加されています。
小さいヒロインのエリーゼはダンジョンに潜りたいとお義兄様に無理やり連れて行ってもらって、巻き起こす大騒動。
後で知ったお義父様(皇帝)が怒るもエリーゼの前に撃沈、更に行ったダンジョンにはなんとあの…………、とても面白いお話になっています。

■【8/26シーモア先行配信していたものは、3千字のSS商人の娘の独り言シーモア特典付き】

https://www.cmoa.jp/title/1101429725/

■【9/20発売アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DD3SHSJV/


■【9/20発売楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/86f757d2dd7d3674900eac6783288ad5/

ぜひとも手にとって見ていただければ嬉しいです。

アルファポリスのレジーナブックスにて

【書籍化】

しました!
2023年6月28日全国1200以上の書店にて発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。
表紙画像
表紙絵をクリックしたらレジーナブックスの説明ページに飛びます。


■アマゾンへのリンク

■楽天ブックスへのリンク

■hontoへのリンク


手に取って読んで頂けたら嬉しいです。

なろうの掲載ページ『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://ncode.syosetu.com/n3651hp/

第一部は書籍化の規約上3分の1残して後は他者視点で繋いでいます
「えっ、ゲームの世界の悪役令嬢に生まれ変わった?」
頭をぶつけた拍子に前世の記憶が戻ってきたフラン、
でも、ケームの中身をほとんど覚えていない!
公爵令嬢で第一王子の婚約者であるフランはゲームの中で聖女を虐めて、サマーパーティーで王子から婚約破棄されるらしい。
しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。
しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。


私の

3番人気の作品はこちら

『モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~』https://ncode.syosetu.com/n8311hq/

私の

4番人気で100万文字の大作の作品はこちら

『皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!』https://ncode.syosetu.com/n8911gf/



このお話の前の話

『男爵令嬢に転生したら実は悪役令嬢でした! 伯爵家の養女になったヒロインよりも悲惨な目にあっているのに断罪なんてお断りです』https://ncode.syosetu.com/n7673jn/

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ