前世の記憶を取り戻して時間が無いので対策もせずに乗り込むことにしました
私は前世は日本という国でOLだった。それも朝は6時には家を出て、夜は終電で帰るというブラックにいた。
同期はあっという間にいなくなったけれど、私はその職場にしがみついていたのだ。当時は氷河期でやっと入ったこの職場を出て、他で雇ってもらえるなんて保証も無かったのだ。私はただただ働いて土日は疲れ切って寝るという感じだった。
そんな中、いつ死んだのか覚えていなかった。
途中のおぼろげな記憶しか無かった。
そんな忙しい中私はゲームをしていた。
「何なのよ。この憎ったらしい悪役令嬢は、私がいくら逃げても追っかけてくるじゃない! だめ、もう逃げられない」
「ふふふふ、よくも私のエイベル様を取ってくれたわね。ここであなたには死んでもらうわ」
「ギャーーーー」
私はその女、悪役令嬢のリディアーヌ・インスブルクに叩き斬られたのだ。
ちょっと待って!
リディアーヌ・インスブルクって私じゃない!
その瞬間私は目が覚めた。
周りを見ると白い壁白いカーテンだ。
学園の医務室みたいだった。
ええええ! 私『学園に咲くピンクの薔薇』の悪役令嬢のリディアーヌ・インスブルクに転生したの?
このゲームは確か最後に遊んでいたゲームだ。死ぬほど忙しいのに、それだからか却ってやる気になったのか、寝る間も惜しんでやっていたゲームだ。
私がどうやって死んだか判らないけれど、下手したらこのゲームをしながら死んだのかもしれない。
でも、40前の女が乙女ゲームをやりながら死ぬってどうなの?
職場で過労死したって言うのならまだ良いけれど、ゲームをしながら死んでいたんなら、単なる馬鹿じゃない!
母さんらあきれ果てたろうな……
私は真っ赤になった。
いや、ちょっと待て! 今はそれを考える所じゃない。
転生して、それも悪役令嬢に転生したところが問題だ。
ああん神様、どのみち転生させてくれるならヒロインに……いや、あんな性悪なアラベラなんかに転生は嫌だ。
でも、リディアーヌに転生って、せめて別のゲームか何かのヒロインにしてほしかった。
まあ、後悔するのは置いておいて現実問題どうするかだ。
ゲーム上、私はヒロインのアラベラを苛めまくっていたのだ。
それをエイベルに言いつけるんだけど、下手にやると、さっきみたいに、怒り狂ったリディアーナに殺されるのだ。リディアーナの剣術は一級品で、下手な騎士なんか一撃で倒してしまうのだ。何回リディアーナにやられたことか。
唯一やられないのは卒業パーティーでの断罪だった。それまで、リディアーナの苛めを何とか我慢して、卒業パーティーまで生き残るのがこのゲームの肝だった。
後少しで、卒業パーティーって喜んだら、エイベルのアホが、剣術部に乗り込んで断罪しようとして、逆に怒り狂ったリディアーナに二人まとめて殺されるっていうのまであった。後少し、待てよと私は歯ぎしりしたのを覚えている。
本当にリディアーナの苛めは凄惨で、酷かった。
ん?
でも、今は私はアラベラを苛めていないわよ。逆に苛められているのはいつも私なんだけど……
これで断罪は無い?
いやいや、そんなことはないはずだ。
何しろ私を断罪しない限り、アラベラとエイベルは結婚できないのだ。絶対に何かやってくるはずだ。
でも変だ。エイベルとアラベラが剣術部に来た時は逆にリディアーナに返り討ちに合うはずなのに一方的に私がやられただけだった。こんなシーンはなかったはずなのに!
何でなんだろう?
それにしてもレナードの奴、碌な事をしてくれない
「姫様はがさつですからな。婚約者様と喧嘩して、剣で斬りつけないとも限りませんから、剣で婚約者に斬りつけられないようにしておきますぞ」
守役のレナードは、そう言って私に魔術で枷を嵌めてくれたのだ。それがエイベルに正対したら動けなくなってしまう魔術だとは思ってもいなかった。
斬りつけない限り発動しないと思っていたから、相対したのに! あれじゃ、剣で弾くことや避けることすら出来ないじゃない!
うん、待てよ。剣でダメなら殴れば良かったのか? 私は放出系の魔術は使えないが、身体強化はできるのだ。
もし、それが出来たのならば、後で守役のレナードに絶対に馬鹿にされるパターンだ。
でも、それなら前もって言っておいて欲しかった。対処のしようもあったのに!
でも、どうする?
このまま、卒業パーティーに行けば、断罪されるのは確実だった。
私は卒業パーティーで婚約破棄されて断罪の上、国外追放、その後、ヒロインに気のある王太子の側近達によって拉致されて娼館に叩き売られるのだ。
娼館に行くのなんて絶対に嫌だ。
でも待てよ、婚約破棄されたら、レナードの枷が外れる?
そうすれば、まだ、やりようもある。
そうか、逆らえないのはエイベルだけだから、騎士達が私を捕まえようとしたら、逃げ出せば良いのか?エイベルだけを避ければ何とかなるはずだ。
逃げ出せば、逃げきれる自信はあった。
よし、とりあえず、出たとこ勝負で行こう。私はレナードが聞いたら、「また、行き当たりばったりの行動を取って」と怒りそうな事を平然と決意したのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
リディの運命やいかに?
続きは明日です。
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