牢の中で泣いてしまいました
私は牢の中で一人で寝ていた。
いや、嫌違う。ドラちゃんを抱っこして寝ていた。
牢の中には何故か立派なベッドがあった。私はそのベッドに寝転んでドラちゃんを抱っこして、
ふて寝というか、むかついているというか、やっぱりふて寝していたのだ。
私はこのインスブルクの王女だ。子供の頃は散々一人で飛び出してはいろんな所に冒険に行っていた。
レナードの訓練は厳しかったが、私はぐんぐん吸収して上達していったのだ。
この国には50万もの国民がいて、王女たる私は国民のために努力しなければいけない。周りからはそう言われていた。私はお兄様みたいに賢くはなかったので、武に特に剣術の訓練をした。朝から晩まで。一生懸命に。お兄様は文に特化していたので、私は武に特化したのだ。
魔術は強化魔術くらいしか使えなかったが、剣術は剣聖並みに強くなった。
私は何か事があると飛んで行って皆のために頑張った。
魔物退治や、サラマンダー退治に精一杯頑張ってきたつもりだ。
そんな時だ。前シュタイン国王がこの国に訪れて、私の婚約が決まったのだ。
私はケーキに釣られて婚約を決めたとレナード達に呆れられたが、大国シュタインに嫁げばこの国の為になると思ったから決めたというのもあるのだ。本当に!
私はがさつで大雑把だったけれど、私なりに必死にエイベルの心を掴もうと努力はした。私が編んだマフラーは歪んでいたので、そのまま捨てられたみたいだけど……私なりに必死に編んだのに……
途中からは馬鹿馬鹿しくなって剣術部に入り浸ったけれど、アラベラの所に入り浸っていたエイベルには文句を言われる筋合いは無かった。
シュタイン王国の連中は私がエイベルを半死半生の目に遭わせたとか言っているが、私にえん罪をおっ被せて、断罪しようとしたのはエイベルだ。竜姫と言われた私にそんなことしたのだから、当然そうなるのは私の中では判りきったことだった。人に悪いことをしようとすれば何倍にもなって返って来るものなのだ。これは私自身が経験してよく知っている。
レナードの訓練があまりに厳しくて、レナードに逆襲して水をぶっかけたら滝壺に突き落とされた。頭の毛を燃やそうとしたら今度は活火山の火口の中に放り込まれたりしたのだ。張り倒されるくらい当然の結果だ。私はあれでも手加減したのだから。本気出したら死んでいたはずだ。
そのまま私をほっておいてくれたら仕方なしに忘れてあげたけれど、何をとち狂ったかインスブルクに攻撃してきたのだ。当然叩き返すのは当たり前だった。
兄嫁とかギンガルメ王国はグチグチ言うが、部外者は黙っていてほしかった。
私はシュタインの大軍を撃退したのだ。200倍もの敵の攻撃を受けて、被害も少なく敵を撃退した。褒められこそすれ、入牢させられるのはやはりおかしいわよ。
私は少しでも死人が少なくなるように切羽詰まって、仕方なしに攻撃に出たのだ。あと少し出るのが遅かったら、もっと多くの兵士達が死んだはずだ。私は自国の兵士の命を守るために、お父様との約束事を破って、敵本陣を急襲したのだ。確かに約束事を破ったのは悪かったから自分の部屋に1ヶ月くらいの謹慎処分になるとは思っていた。昔からよくあることだし……
それがまさか牢に入れられるとは思っていなかった。
国のために必死に努力してきたのに、婚約破棄されてえん罪を被せられそうになってやっと帰ってきた。休む間もなく、国のために寝る間も惜しんで戦ったら、牢に入れられた。
これはさすがに酷いと思う。
お父様もお母様も酷い……いくら初代様の遺言に逆らったからって私を牢に入れるなんて……それは婚約破棄されて帰された役立たず姫だったかもしれないけれど私なりに頑張ったのだ。なのに、牢に入れるなんて……
私の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。
「くー」
そう鳴いてドラちゃんがその涙をなめてくれた。
「ドラちゃん」
私はぎゅっとドラちゃんを抱きしめた。
でも、なんか悲しくて後から後から涙が出てきた。
私、私なりに必死にやってきたのに……
婚約者からお前はがさつだと婚約破棄されて、だから得意な武で必死に頑張ったのに、牢に入れられた。
やはりこの国に帰ってくるんじゃなかったのかもしれない。
「あなたが帰ってきたからこの国が争いに巻き込まれたのよ」
兄嫁の声がリフレインした。
でも、でも、ここは私が生まれ育った古里なのだ。故郷なのだ。婚約破棄されて傷ついたら帰ってきてもいいじゃない!
兄嫁だけの国じゃない。
でも、お父様もお母様もお兄様もあんまり私を慰めてくれなかった。
やっぱり大国の機嫌を損ねて、帰ってきた私が悪いんだろうか?
兄嫁は私を追い出したがっていたし……
「やっぱり、この国に帰ってきたのが悪かったのかな」
私は泣きながらドラちゃんを見た。
「ウー」
ドラちゃんは首を振って憤ってくれたのだ。
「ありがとう、ドラちゃん、そう言ってくれるのはドラちゃんだけよ」
私はドラちゃんをぎゅっと抱きしめたのだった。
ドラちゃんの体はとても温かかった。
でも、涙は止まらなかった。
私はドラちゃんを抱きしめて泣き疲れて寝てしまうまで泣いていたのだった。
傷つき疲れ切ったリディでした。
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続きは今夜です








