王宮に向かう竜の3回転にレックスは耐えられませんでした
敵は大将の首を取られて、大混乱に陥った。
多くは逃げ出したが、半分は降伏して来た。
我が軍の大勝だった。
でも、500人で5万人の護送をするのが本当に大変だった。
王国の牢で足りる訳は当然なく、急遽国境の近くに収容所を作ったのだ。
その護送に、ドラちゃんとか、飛竜騎士団とかレナードが大活躍した。でも、全く足りなかったので騎士団も急遽1000人、派遣してもらった。
シュタイン軍の中には私の知っている剣術部の先輩達も結構いて、レックスとアーチとハワードを中心に、強引に我が軍の中に編入して、護送を手伝ってもらった。
あれやこれやで護送に思いのほか時間がかかってしまった。
そのゴタゴタが終わって、私は急遽王宮に呼び出されたのだ。
私は頭が痛かった。
絶対にお叱りを受けるのだ。
「でも、姫様。今回の戦いは姫様が大活躍されたから勝てたのです。陛下もその点はちゃんと考えて頂けるでしょう」
チャーリーが慰めてくれたが、私はあまり楽観的に考えられなかった。
「姫様、一緒に私が参りましょうか?」
レナードが言ってくれたが、
「レナードはここに残って皆に訓練をつけてあげてほしいの」
私がそう頼んだ。
王宮にはレックスと行くことにしたのだ。直情発作型のハワードを連れて行くよりはレックスの方が柔軟に対処してくれるはずだと私は思ったのだ。
「それは構いませんが、姫様はレックスとデートなさるので?」
「はい?」
私はレナードのが何を言っているか理解できなかった。
何故かレックスが少し赤いんだけど……
「リディアーヌ様。やはり私が行きます」
レナードが余計な事を言ってくれたからハワードが、又、蒸し返してきた。
ハワードは怒ると何をしでかすか判らないから置いていきたいのだ。特に私絡みになると見境が無くなる。下手に兄嫁を斬ったりしたら兄との間に大きな隔絶が生まれかねなかった。
その点、レックスは冷静に対処してくれて、兄嫁からの無理難題も無難にこなしてくれるはずだ。
「ハワード、あなたは本当に貴重な戦力なのよ。私がいない間、あなたまでこの砦から抜けたら戦力の大幅な低下は免れないわ」
「いや、姫様。私一人がおりましたら、例え、100万の軍勢が攻めてきても守ってみせますぞ」
横からレナードか又余計な事を言ってくれた。
本当にこいつらは面倒くさい。
「ハワード、あなた私のお願いを聞いてくれないの?」
私が上目遣いにハワードを見ると
「判りました。でも、帰ってきたら今度は私を後ろに乗せてドラちゃんで飛んでください」
「えっ、別にそれくらい良いけれど」
私が言うと
「やった約束ですからね」
ハワードが薬指を出してきたんだけど、指切りなんてこの世界にあったのか?
「あなた、私の言うことが信じられない訳?」
私がむっとして言うと
「姫様。私も後ろに乗せてください」
「俺も」
「俺もお願いします」
飛竜騎士隊の面々が言ってきた。
「良いわよ」
「「えっ?」」
なんかレックスとハワードが嫌そうな顔をするんだけど……何で?
「ちょっと、俺の姫様とのデートが」
「何でデートになるのかな。私も貴方たちがどれだけ訓練してきたか、いろいろとドラちゃんと楽しみたいから、覚悟しておくのよ」
私が言うと
「えっ、それって命がけのデートになるんじゃ」
なんかザカリーが又ふざけたことを言っているんだけど……
「デートじゃ無くて訓練だからね。ちゃんとやらないと3回転やるから」
「そ、そんな」
ドラちゃんの得意な3回転なのだが、未だかつて飛竜騎士隊の面々でまともに乗れた者はいないのだ。
ドラちゃんは私が喜ぶのでよくやってくれるのだ。
「じゃあ、行ってくるから、お留守番よろしくね。私がいない間もみっちりと訓練して能力上げておくのよ」
私が皆に言うと
「はい。ちゃんとやります。だから帰ってきたらドラちゃんにリディアーヌ様の後ろで乗せてください」
ハワードが珍しく殊勝に言ってくれた。
「まあ、姫様、デートを楽しんでください」
「レナード、デートじゃないって言っているでしょ」
私がむっとして言うと、
「後ろの男の顔がにやけておりますぞ」
私が後ろを見るとレックスは普通だ。
「じゃあ、ジェフ、後はよろしく」
「姫様もご無事に査問会が過ぎることをお祈りしています」
「えっ、査問会なの」
私は聞いていなかった。
「違えば良いんですが、いろいろと王太子妃様が暗躍されていると聞いております」
「リディアーヌ様。やっぱり私が行きましょうか?」
ジェフの言葉にハワードが又言い出した。
「大丈夫だ。何かあれば俺がなんとかするから」
レックスが頼もしく言ってくれた。
「そこは頼りにしてるわ」
そう言うと私はドラちゃんに飛び乗ったのだ。
私の後ろにレックスが座る。
「じゃあレックス行くわよ」
「えっ、ちょっと待て、何やる気だよ」
レックスが慌ててくれたが、私は無視した。
「ドラちゃん、ゴー!」
私が合図したのだ。
「ギャオーーーーー」
ドラちゃんは一声叫ぶと一気に飛び出してくれた。
「ギャッ」
必死にレックスが私にしがみついてくれた。
「レックス行くわよ」
「えっ、聞こえない」
私はドラちゃんの脇腹を三回蹴ったのだ。
「ギャオーーーーー」
ドラちゃんが喜んで、上空に向けて思いっきり上昇してくれた。
私の体に凄まじい重力がかかる。
そして、そのまま回転に入ってくれた。
「ギャーー」
レックスが叫んでいるが、
「舌噛むわよ」
私が注意すると静かになった。
それからドラちゃんはそのまま3回転してくれたのだ。
私は久々の3回転にめちゃくちゃ楽しかった。
でも、途中からレックスが声を出さないので心配したらまた、気を失っていた。
うーん、やはりまだ皆には3回転は厳しいみたいだ。
ドラちゃんに一番慣れたレックスですらこうなのだから……
「レックス、王宮は大丈夫かな」
私は反応の無いレックスの手を落ちないように私のおなかの上から押さえて、聞いてみた。
当然反応は無かった。
でも、その剣だこだらけの手を掴んで、
「大丈夫。何かあればレックスが守ってくれるわよ。ねえ」
そう言って手を引っ張ったらガクンとレックスは頷いてくれたのだ。
「よし、大丈夫だ」
私は頷くとそのまま嫌なことが待ち構えているだろう王宮に向かって飛んだのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
全然デートにならなかったレックスとリディでした。
次は王宮です。手ぐすね引いて待ち構えている兄嫁相手にどうなるリディ?
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