宰相が兄嫁と私の間を取り持ってくれました
ドラちゃんにのってぶっ飛ばすとと王宮は本当にあっという間だった。
中庭にドラちゃんを下ろすと、降りようとして、がしっとレックスが私にしがみついているのに気づいた。
「レックス、着いたわよ」
私が言うが、レックスは私にしがみついたままだった。
「レックス、着いたったら」
私はレックスにしがみつかれたままなのはさすがに恥ずかしくなって言うと、
「姫様、いきなり飛ばしすぎですぞ」
やっと追いついてきたレナードが注意してきた。
「護衛を巻いて二人だけでデートですかな。いくら兄嫁夫婦が仲が良いからとそれを真似なくても良いのでは…………完全に気絶していますな」
レナードはからかおうとしてレックスを見て呆れてくれた。
「なるほど、姫様はレックス様に相手にされないから、無理矢理飛ばしてレックス様を自分にしがみつかせたかったと」
笑って、レナードが言うと、
「違うわよ。それはさっき普通の人間と違うって言われてむっとしたのは認めるけど……気絶させるつもりなんてなかったわよ」
「でも、飛ばして、気絶させたと……普通は男が飛ばして女が悲鳴を上げるののですが、姫様等の場合は逆ですな……」
更に笑ってくれるんだけど……
「ちょっと笑っていないで、なんとかしてよ」
私がレックスにしがみつかれて皆がじろじろ見ている状態はさすがに恥ずかしいと悲鳴を上げかけた時だ。
レックスの手がピクリと動いた。
「うーん」
そう言ってごそごそ動き出したのだ。
「リディ、ぷよぷよしている」
そう寝ぼけ眼で私のおなかをなでなでしてくれたのだ。
「何ですって!」
「グッ」
私はその瞬間、ぷっつん切れてレックスに肘鉄を食らわせたのだ。
レックスは腹を押さえてもがき苦しんでいたけど知ったことじゃない。
私のおなかがぷよぷよしているってどういう事よ!
「いや、本当に申し訳ない」
「ふん」
中庭で、切れた私に必死にレックスが謝っているんだけど、私は許す気は無かった。少しおなかが出てきたかなと少し気になっていたのだ。
国に帰ってきて訓練はしていたけれど、どうしても故郷の料理を食べ過ぎたのだ。
なのに、ぷよぷよって何よ!
「おい、どうしたんだ?」
「何でもあいつが姫様が太ってきたと指摘したそうだ」
「そういえば姫様は少しふくよかになられたか?」
「昔はガリガリだったからな」
なんか外野がうるさいんだけど、
「ちょっとあんた達、何か言った?」
噂していた近衛騎士達を私が睨み付けると
「ヒェェェェ」
「いえ、何でもありません」
近衞達は慌てて私の腕の届く範囲から逃げ去った。
離れていてもソニックブレードで叩けるけれど、そんなことしたら王宮もめちゃくちゃになってしまう。そんなのがお母様に知られたら下手したら殺される。絶対に出来ないことだった。
「リディアーヌ様。私がビリー様に託した中で敵が山越えしてきたらどうするかという質問に対する回答が一撃で倒すってなんですの? 全然回答になっていないではないですか」
そこに書類をもった兄嫁が怒ってやって来たんだけど、
「何って、一撃で倒しますけど」
私は平然と答えてあげたのだ。
「まあ、確かに姫様の怒りを買ったらソニックブレードで一撃でやられるわな」
「そうだ。姫様を本気で怒らせたら、不味いよな」
「ンダンダ」
後ろで近衛達が好きなことを言っている。
「何なのよ! そんな事が出きるわけ無いでしょ」
兄嫁は否定してくれたが、
「殿下の奥さんは姫様がぷっつん切れたらやばいのを知らないからそんなことが言えるんだ」
「本当に命知らずだよな」
「俺なら、姫様が怒りそうな質問書送るなんてヤバイことはしないぞ」
「姫様は戦場について説明するの下手だものな」
「野生の勘だけで、戦っているから」
後ろの近衞達が何か聞き捨てならないことをブツブツ言い出したんだけど……
「説明が面倒だと思って姫様がキレたらこんな宮殿一撃だからな」
「シュタインの10万も絶対に一撃だよな」
「姫様がすぐに切れ出すに金貨1枚」
「王太子殿下が代わりに殴られるに銀貨一枚」
「シュバイツが殴られるに銅貨一枚」
「ちょっとあんた達、私はそんなことはしないわよ」
私が騎士達に言うと
「ええええ!」
「今までの実績がありますけど」
「じゃあ、姫様は逆で賭けてくれますか」
「……」
私は黙ってしまった。
「リディ! 良かったわ。無事だったのね」
そこにお母様が飛んできたのだ。
「もうあなたが砦に行ってから心配で心配で」
お母様がおもいっきり抱き締めてくれた。
「それでなくても、心配していたところに、コーデリアが色々言ってくれるもので更に心配になってしまったわ」
おのれ、やはり原因は兄嫁か!
私はむっとして兄嫁を睨み付けた。
兄嫁がお母様の陰に隠れてくれた。
おのれ、お母様を私よけに使うのか…………
「そもそも女の子のあなたが、戦場に出る必要なんて無いわ。今からでもビリーに代わったら良いんじゃないの?」
お母様が、言ってくれた。一瞬それが良いのかもしれないと私は思ってしまった。兄嫁がこれからも私に酷い事するならば、そうしたい。そうすれば今度は今までの仕返しとばかりに私が質問の書類の山をお兄様に送ってあげるのだ。
「別に構いませんが、その代わり、リディは俺がしている書類仕事を全てやってくれるんだよな」
「殿下、お止めください。国が滅びます」
お兄様の言葉に間髪置かずに宰相が否定してくれるんだけど、さすがに国は滅びないわよ!
私はむっとして、宰相を睨み付けたけれど、宰相は平然としていた。
「というよりもそんなことしたら、砦も即座に落ちてしまいます」
後ろからレナードが言ってくれた。
それもそうだ。
兄ではシュタインの大軍を相手に抵抗も出来ずに蹂躙されて終わりだろう。
「お互いに適材適所というものがあるのです」
宰相が、言ってくれた。
「まあ確かに国が滅んでも仕方がないしな」
「まあ確かに国が滅んでも仕方がないわね」
お兄様と私がハモってしまった。
「と言うことで、王太子殿下。戦場のことは全て姫様にお任せ下さい」
宰相がはっきり言ってくれた。
「しかし、マトライ、そんなことしてリディが暴走したらどうするのだ」
兄が余計な事を言ってくれた。
「大丈夫です。そのためにレナードをつけます」
「なんと宰相殿はこのよぼよぼを戦場に出すと」
レナードが言い出したが、
「自分も前線に出せと散々ブツブツ言っていた者が何を言うのです」
「そうじゃったかの?」
レナードは誤魔化したが、まあ、レナードがいればお湯や水や火は作り放題だ。
1年でも砦をもたすことも出来るだろう。
「しかし、レナード殿をつけると更に二人して暴走しないか」
「王太子殿下も人が悪い。この老いぼれが暴走などする訳がないでしょう」
レナードの言葉など誰も聞いていなかった。レナードも暴走する時は私に輪をかけて凄いのだ。
「そこは姫様にお約束していただます。シュタイン領に攻め込めば反省するまで、王太子妃付きの女官として頑張ってもらいます」
宰相がとんでもない条件をつけてくれたんだけど……
「それだけはいやです」
私が首を振ると、
「あら、こき使ってあげますのに」
兄嫁が笑ってくれたんだけど……
なんかむかつく。
「王太子妃様もテスト問題みたいなくだらない質問も封印です。宜しいですね」
でも宰相は私だけではなく、兄嫁にも条件をつけてくれた。
「しかし、マトライ。敵に対するありとあらゆる対処方法なども考えておかないと」
「それはレックスが対応してくれるでしょう。もっとも姫様に任せておけば問題はございません。姫様は野生の勘も神がかり的ですから」
それは喜んで良い所なのか?
なんか、野獣と同じだと言われたような気がしたのだが……
「唯一我が国が負ける可能性があるのは後方が余計な事をして姫様のご機嫌を損なう時です。王太子妃殿下とシュバルツがしていることは竜のひげを引っ張ることです。少しは我慢してくれますが、切れると火を噴いて暴れ出します。インスブルクもギンガルメもその瞬間滅んでしまうでしょう。このことはお父様にもはっきりとお話ししておいてください」
宰相はギンガルメにも釘を刺してくれたのだ。
「しかし、マトライ。リディを戦場に送らないといけないのですか」
お母様がまだいた!
「妃殿下。行くなと言っても姫様は行かれます。それは今までの実績を見ていれば確実かと。まあ、ご心配なのは判りますが、ここは心を鬼にしてお見送りください。姫様はこちらが余計な事をしない限り、シュタイン軍を潰走させて頂けるでしょう」
宰相は言い切ってくれた。
「陛下、このような形で宜しかったですか」
「そうだな。よくやってくれた」
お父様が今頃出てきたんだけど。
まあ、宰相がうまくまとめてくれたから良しとしよう。
私は後方が落ち着いてほっとした。
「でも、本当にお父様もお兄様も嫁に完全に尻に敷かれているのね」
私が後でぼそりと文句を言ったら、
「一番尻に敷きそうな方が何かおっしゃいましたか?」
レナードに突っ込まれたんだけど。
「私は旦那様を立てるわよ」
私が言うと皆胡散臭そうな顔をしてくれるんだけど。
「そういうお方が、元婚約者様を張り倒して半死半生の状態にさせるか」
「そうそう、言うのは誰でも言えるからな」
「そこ、何か言った?」
後ろでブツブツ言っている飛竜騎士隊の面々を睨み付けたら、
「ヒェェェェ」
あっという間に1キロも間を空けてくれた。
ふんっ、明日からはあいつらは剣術の稽古の時間を倍にしてやると私は心に決めたのだ!
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ついに明日から砦戦です。
リデイの運命やいかに?
乞うご期待








