大国の攻撃を砦にて私が相手することになりました
私はドラクエ子爵がハワードに斬りつけられて、レナードに水をぶっかけられて、最後はどこかに飛ばされたのを黙って見ていたんだけど……
普通は私がいろいろしでかすのに、ハワードとレナードが代わりにやってくれて私は今回も出番がなかった。
「レナード、大使をどこに飛ばしたの?」
私は思わず白い目でレナードを見た。
「なあに、あの男少し生意気でしたからの。ちょっとシュタインの王宮の裏の畑まで飛ばしてやりましたのじゃ」
何でもないことのようにレナードは言うけれど、何百キロも人を転移させることなど大魔術師のレナードしかできることではない。レナードはそれだけ強大な魔術師なのだ。そう、近隣諸国と口の悪い我が軍の中で3大化け物と呼ばれている一人がレナードだ。おそらく、大陸最強の魔術師だ。若い頃は近隣諸国を放浪していたのだが、何でも龍神様の宣託を受けたとかで、我が国に居座って私の守役を引き受けた変わり者だ。私は魔術の放出はほとんど出来ないのだが、小さい頃から規格外のレナードの魔術を見ているから基本的にどんな魔術師の攻撃にもある程度は対処出来た。3大化け物の残りの2人は私とドラちゃんだ。まあ、古代竜のドラちゃんが化け物って呼ばれるのはまだ判るけれど、このうら若い私が化け物って言われているのは絶対に納得いかないんだけど……
「畑と申してもただの畑に飛ばしたのではなかろう」
レナードの言葉にお父様が聞くんだけど、
「まあ、肥料の集積している穴にですな」
「それって……」
私は絶句していた。ドラクエ子爵にしたら最悪のことだったろう。
肥だめに嵌めるなんて本当にレナードのやることはえげつない。まあ、訓練で散々私もいろいろやられたけれど。爆裂魔術の直撃や雷撃の直撃山の上から突き落とされたり本当に大変だった。まあだから基本的にどんな魔術師が出てきても基本的に恐怖にすくむことはないのだ。まあ、それはドラちゃんも同じだけど……
まあ、シュタインが私にしてきたことに比べたら大使にしたことはたいしたことはないか。
とも私は思ってしまった。
「しかし、父上。あそこまでする必要があったのですか」
今まで私の後ろにいたお兄様がむっとして話し出した。
「まあ、奴らはリディに対して酷いことをしてくれたからな。それにそれに対してそうしたという認識がない。あれくらいしてやらねば理解できないだろう」
お父様が言ってくれた。
「陛下。おそらくあれでも理解は出来ますまいと思いますぞ」
レナードも笑って言ってくれた。
「しかし、あそこまですればシュタインは確実にせめて来ませんか? シュタインは大国、我が国は厳しいことになると思いますが」
お兄様が懸念事項を述べてくれたが……
「ほっておいても攻めてこよう」
「しかし、わざわざこちらから呼び込まなくても良いではありませんか」
お兄様は怒っていた。
「若様。シュタインは少し増長しすぎなのです。我が国のお転婆姫様を怒らせたのです。ここはじっくりとお灸を据えて判らせてやらねばなりませんて」
「しかし、敵は大軍で攻めてくるではないか。どうするのですか?」
「お兄様。ここは責任を取って私が叩き返します」
私がお兄様に言い切った。
「しかし、リディ、敵は大軍で」
「まあ、ビリー様。大軍であっても姫様ですからの。それにいざとなればドラの助もおりますし、最悪儂も出ます」
「……」
兄は黙ってくれた。なんかむかつく言い方でレナードが言ってくれたが、兄が納得してくれれば良いのか?
「ということでお父様、チャーリーの謹慎を解いて頂けますか」
「しかしな、リディ、チャーリーはコーデリアの補佐官に暴力を振るったからな。防戦にはチャーリーがいなくても問題はあるまい」
お父様が兄嫁を気にしてか躊躇してくれたんだけど……
「お父様。敵は一応大軍です。戦いは万全で戦いたいのです」
私がお父様に言うと
「うーん、しかし、コーデリアがなんというか」
お父様はあくまでも兄嫁を気にしているみたいだ。私がいない間に兄嫁は確実に地位を築いているみたいだった。でも、戦いのことで兄嫁にどうのこうのいわれる謂れはなかった。
「お兄様、宜しいですね」
「あ、ああ」
仕方なさそうにお兄様が頷いた。
飛竜騎士団のチャーリーの配下のザカリーにチャーリーを連れて来るように合図を送った。
しかし、なんとも弱い男達だ。お兄様も完全に兄嫁の尻に敷かれているみたいだ。こんなので良いのか?
と私は思わないでもなかった。
後でレックスらが「どっちもどっちだよな」とアーチと話しているのを見て睨み付けたけれど……
私は少なくとも男は立てるのだ。
そう言ったら誰一人賛成してくれなかったんだけど……おかしい。
だってさっきもほとんど発言しなかったのに……酷いことをしたのは男達なのに!
「それでリディ、横の男達はどうするのだ」
「出来たらここに置いておきたいですけど」
お父様の問いに私は応えた。
「はっ? 何を言われるのです」
「俺達はついていきますよ」
「そうです」
3人は言い出したんだけど……
「でも、レックスはともかく戦うのはシュタイン王国なのよ。貴方たちの親兄弟と戦うことになるかもしれないわ。それでもいいの?」
私が3人を見渡した。
「それは元々覚悟しています」
「そうです。一生涯リディ……アーヌ様についていくと決めたのです」
「私もついていきますからね」
三人の覚悟はあるみたいだった。
「では3人ともリディアーヌを頼むぞ」
お父様の一言で従軍は決まってしまった。
そこへチャーリーがやってきて、お父様の許しを得て、早速私達は外に出た。
「チャーリー、今第一騎士隊は何人いるの?」
「はい、現在20騎です」
「二人乗りできる騎士は何人いるの?」
「飛竜の大きさにも寄りますが、3騎が限度かなと」
「そう、じゃあ、早速にレックス達を載せて飛ぶ訓練をして」
「えっ、リディ……様、俺達も飛ぶんですか?」
レックスが驚いて聞いてきた。
「当たり前でしょ。私についてくるなら、飛竜に乗って気絶しているようじゃ連れて行けないわよ。
」
「「「そんな!」」」
三人は絶句していた。
「いやなら置いていくけれど」
「わかった」
「判りました」
「頑張ります」
三人は仕方なしに頷いてくれた。そうでないと困るのだ。まあ、こいつらなら少し訓練すれば後ろに乗るくらいすぐに出来るようになるだろう。
「チャーリー、貴方たちも剣術がまだまだだから、3人に剣術の訓練もしてもらいなさい。お互いに切磋琢磨してね」
「判りました」
「よろしくお願いするよ」
「こちらこそ」
4人が握手するのを見て私はほっとした。そう、同じ行動するなら意思は疎通できていた方が良いのだ。それに仲良くなっていた方が伝達の齟齬もない。
私がそう喜んだ時だ。
「リディアーヌさん! 貴方たちがシュタイン王国の大使様に酷い扱いをして、追い出したって聞きましたわ。どういうつもりなの? それでなくてもシュタイン王国との間が大変な時なのにあんなことをするなんて! あなた達戦争を起こすつもりなの?」
怒り心頭の兄嫁が目をつり上げて食ってかかってきたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
怒りの兄嫁に対してリディはどうするのか?
続きは明朝です。
10センチ下には私の発売された書籍のきれいな表紙と一緒に一覧で載せさせて頂いています。
まだの方は読んで頂けたら嬉しいです
買ってね(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾