シュタイン王国大使視点 泣き言を聞きに行ってやったはずが、本国の不実をなじられ挙げ句の果てに肥だめの中に転移させられました
俺はシュタイン王国のインスブルク王国駐在大使、ドラクエ子爵だ。
インスブルク王国は大陸の中でも小国で昔は交通の要所以外の価値は全くと言ってよいほどだった。しかし、8年前に前国王陛下のお墨付きで現王太子殿下の婚約者にこの国の王女リディアーヌがなってからは注目度が変わってきた。俺様としてはもっと大国の大使となりたかったが、二年前に現国王陛下から直々に依頼されて仕方なくこの国の大使になったのだ。
まあ、インスブルク王国なぞ、我がシュタイン王国に比べれば本当に田舎で、たいした産業も酪農くらいしかなく、俺様はやることもなくのほほんと過ごしていた。
そののんびりしていた俺様の所に、青天の霹靂で王太子殿下の婚約破棄から暗殺未遂の件の知らせが手紙できたのが5日前だ。大使館は大変な騒ぎになった。なんでも王太子殿下に婚約破棄されたリディアーヌ様、いや王太子暗殺未遂犯としての罪人のリディアーヌは、あろうことか王太子殿下を張り倒して出奔したそうだ。殿下は3ヶ月の重傷だそうで、本国からの指示で直ちに私はこの国の外務卿の所に行って、遺憾の意を表明しておいた。
その後の本国からの情報では、追っ手に対してリディアーヌは反撃、オズモンド男爵を殺害しモウラス伯爵を重傷にせしめたという。そのたびに遺憾の意を外務卿に表明するのだが、そのたびに俺様は外務卿から何度も低姿勢に謝られていた。外務卿が可哀相になったくらいだ。それはそうだろう。王女のやっていることは我がシュタイン王国という大国に対して敵対する行為だ。インスブルクなんて小国は我が国が本気を出せばあっという間に消滅してしまうはずだった。外務卿が必死に謝るのも理解できるというものだ。
そんな俺様に今日はこの国の国王から呼び出しがかかってきた。
国王と会うのは年に二回の王宮の舞踏会の時に挨拶するくらいだ。
国王はおそらく俺に頼んでシュタイン王国との仲の橋渡しをしてもらいたいんだろう。ただし、本国からは賠償金とリディアーヌ本人の引き渡しを求めるために使者を派遣するから、その者に全て任せるようにとの指示が出ていた。
もっと早めに言ってくれればまだやりようはあったが、もう遅い。
「あと少し早ければ何かやりようもあったのですが」
「そこをなんとか頼む」
「お願いです。なんとかお願いします」
そう俺様は可哀相なインスブルク国王や王女が慌てふためいて俺様に泣きついてくるのを想像していたのだ。
しかし、俺は王宮に行くと、広々とした控えの間に案内された。
いつもは応接なのだが、今日はどうやら謁見の間に案内されるらしい。いつもはここで出される菓子が俺様の好物なのだが、当然そういったものも一切出なかった。
しかし、この控えの間は座るところもないのだ。
俺様に対する扱いがこれというのはどうなのだ?
俺様はいい加減にイライラしてきた。
付き人に傍にいる騎士にまだかかるのか聞きに行かせると
「もう少し待たれよ」
騎士に睨み付けられた。なんと言うことだ。
この大国のシュタイン王国の大使である俺様を待たせるというのか? 二度と国王の頼みなんて聞いてやらないぞと俺は文句を言おうとしたが、よく見ると騎士はこちらを睨み付けていた。
それも下手したら斬りかかりそうな形相で睨んでくれているのだ。
更に中にいる騎士達全員がこちらを睨み付けていた。俺様は戦場の敵国に使者として派遣された昔を思い出していた。あのときはあと少しで殺されるところだった。リディアーヌは学園でも剣術部に所属していたという。この国の騎士達には人気が高いのかもしれない。俺は取りあえず自重することにした。
しかし、それからも待たされたのだ。
俺様が通されたのは更に30分も待たされた後だった。
謁見の間では玉座に座ったこの国の国王ジョージ・インスブルクがいて、その横に宰相と騎士団長、それと初めて見た老人が並んでいた。逆側にはリディアーヌとその従者らしき者達が揃っていた。
「おお、ドラクエ子爵、待たせたな」
国王が口を開いた。
「至急のお呼びとお伺いして取りあえず飛んで参りましたが、結構な時間待たされまして」
「まあ、貴国の我が娘に対する暴虐非道の数々に家臣一同激高しておっての。その方を切り刻んでシュタインに返せば良いと申すものまでいて抑えるのが大変だったのだ」
俺は国王の言葉に冷や汗が出てきた。
俺が本国から聞いていた話とはえらく違うような気がするのだが……
「宰相、我が国の言い分を」
「判りました。シュタイン国大使のドラクエ殿に我がインスブルク王国からの抗議文を託しますぞ」
宰相が合図すると係の者が俺に渡してくれた。ものすごく分厚い書面だ。
「どのような内容なのですか?」
「中身は知られぬ方が身のためだと思われますが」
「しかし、中身を知らないことには対処の方法もございませぬ故」
俺が言うと
「ふんっ、そもそも何故今回の件の発覚直後にその方が儂の所に謝りに来ぬ」
国王はいきなり大上段で斬り込んできた。
「はいっ?」
俺はその言葉そのまま返したかった。
どういうことなのだ? あなたの娘の王女は公爵令嬢を破落戸を使って襲おうとして事前に発覚しそうになり、王太子に重傷を負わせたのではないのか?
「そもそも、今回の件は、貴国の王太子が前シュタイン王国国王陛下と我が父が交わした婚約を破棄するために、我が娘の悪行をねつ造して、広めたそうではないか」
「いえ、そのようなことは」
俺が驚いて反論しようとすると、
「リディアーヌ、説明してみろ」
「はい、王太子殿下はアラベラ嬢を虐めたと言われますが、私には全然身に覚えのないことです。挙げ句の果てには我が国の大使館の雑用係を買収して、アラベラ嬢を襲わせようとしたとねつ造したこと、その大使館員は全校生徒の前で全て白状いたしました」
「まあ、王太子を全治3ヶ月にさせた我が娘の力が強すぎたのも問題だが、元はといえば貴国の王太子が我が娘の罪をねつ造でおとしめようとしたのが、全ての発端だ。前国王陛下との約束では、どんなことがあっても我が娘を王家が守るとのことだった。なのにあまつさえ娘にえん罪を着せようとして、その後騎士団に襲わせるなど言語道断。明確な約定違反ではないか。このことについて何か申し開きがあるのか」
俺には国王が何を言っているか理解できなかった。聞いていた話とは真逆だ。
「これは恐れ入りますな。私が聞いていたのはそちらのリディアーヌが」
そう呼び捨てにした瞬間だ。リディアーヌの横にいた男が抜剣して俺の前に飛んできたのだ。
「ハワード!」
リディアーヌが鋭い声で叱責してくれたが、俺に向かって剣が振り下ろされたのだ。
それは凄まじいスピードだった。
俺は声を上げる暇もなかった。
俺様の上着のボタンが両断されていた。バサリと俺様の上着が地面に落ちた。
「貴様、この国の王女殿下であらせられるリディアーヌ様を呼び捨てにするなど不敬であろう。次はないと思え」
俺はそう叫ぶ男に見覚えがあった。ハワード・ノール辺境伯の息子だ。剣術の腕前は辺境伯が自慢するほど腕が立つとの噂だった。此奴我が国を裏切ってインスブルクについたのか? 俺様は驚くとともに命の危険を感じた。
「ヒィィィィ」
俺は腰が抜けてその場に尻餅をついていた。
「ハワードやり過ぎよ」
リディアーヌが注意して
「申し訳ありません」
ハワードは頭を下げるとリディアーヌの横に戻った。
が、俺は下手な言葉を発すると殺されると思い知ったのだ。
「まあ、大国の大使は情報収集能力もないのか。真実はそれが全てだ」
呆れて国王が見下げてくれたが、俺はそれどころではなかった。
「シュタインの大使にこのようなことをしてただですむと」
「死にたいようだな」
ハワードが再び抜剣して俺様に剣を突きつけてきたのだ。
「こ、殺される」
俺は慌てて逃げだそうとした。
その頭の上からバシャン
と大量の水が降ってきたのだ。
俺は完全に濡れ鼠になってしまった。
「おおおお、すまんの。手元が狂ってしまったわ」
老人が叫んでくれた。
「お、おのれ。貴様ら。シュタイン王国の大使の俺様にこのようなことをしてただですむなどと」
その瞬間俺の足下から地面が切れた。
ドボン!
俺様は穴に填ったのに気付いた。
いつの間にか畑の中に飛ばされたみたいだ。
そして、足下が匂う。
なんだこれは?
ズブズブと沈んでいくのだ。
俺様は肥だめの真上に転移させられたのを知ったのだ。
「た、助けてくれ」
俺は声の限りに助けを求めた。
あと少しで死ぬところをなんとか駆けつけた農民に助けられたが、俺は糞まみれになって悲惨だった。
「おのれ。インスブルクの奴らめ。絶対に許さんぞ!」
俺は心から誓ったのだ。
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