せっかく帰ってきた故国で、王太子妃である兄嫁が面倒ごとが起こる前に出て行ってほしいと話しているのを物陰から聞きました
私は皆に手を振りながら、王宮に向かった。
王宮は王都の端の丘の上に聳え立っていた。
白く輝いていた。別名白竜城。初代国王陛下は巨大白竜を従えて、この国を支配していた蛮族を追い出して、この国を起こしたそうだ。 何百年も前の話だ。私はその初代様以来、久々に巨大竜を従えている王族だそうだ。竜姫と呼ばれるのはそれ故だ。
まあ、初代様は力で白龍を従えたそうだけど、私は子供のドラちゃんをペットとして連れ帰っただけだ。子供の頃から可愛がったら、刷り込まれて、私に従うのも当然よね。
初代様とは全然違うのだ。
私が王宮の前の広場に着陸すると、
「姫様」
「姫様!」
「ようこそお戻りになりました」
「お待ちもうしておりましたぞ」
兵士達が囲んでくれた。
「皆、久しぶり、元気だった」
「儂を筆頭に皆元気ですぞ」
白髪の守役のレナードが返事してくれた。
「まあ、レナード、昔と全然変わらないじゃない! ビックリしたわ」
レナードは私の守役で宮廷魔導士でもあるのだが、もう結構歳を取っているはずなのに、とても元気そうだった。
「レナードは昔よりもさらに元気になっておりまして、回りの者は大変みたいです」
飛竜騎士団長のエイブが笑って答えてくれた。
「なあに、シュタイン王国の奴らが攻め込んできても、儂がいる限りは王都には人っ子一人いれませんからな」
自信満々にレナードが答えてくれた。
「姫様を迎えに行くと周りに駄々を捏ねて大変だったのです」
チャーリーが教えてくれた。
「ふん、儂を年寄り扱いしよってからに。まだまだシュタインの1個師団や2個師団あっという間に葬ってくれるわ」
レナードはやる気満々だった。
「リディ!」
その時に悲鳴のような声が聞こえて、お母様が駆け寄ってきた。
「お母様!」
私はお母様の胸に飛び込んだ。
「良かったわ。あなたが無事に帰ってこれて、途中で何かあったらどうしようと、思っていたのよ」
「まあ、王妃様、シュタインの奴らになんぞ姫様がやられるわけはないでしょう」
レナードが言ってくれたが、
「レナードの枷のせいで悲惨な目に遭ったんだけど」
私はレナードを睨み付けたけれど、レナードは明後日の方を見てくれた。
「リディアーヌ、良かった無事で」
その横のお父様にも抱きつく。
「お父様もお元気そうで」
「お前のしてくれたことで、気が遠くなったけどな」
「それを言うなら、エイベルに言ってください」
私は笑って言った。
「でも、リディ、笑い事ではないんだぞ」
後ろにいたお兄様は兄嫁と一緒に渋い顔をしていたのた。
「ビリー、その事は後だ。食事の時にでも、話し合おう」
お父様が、話を止めてくれた。
でも、これって、食事時のお説教が確定してしまったんじゃないの?
私はうんざりした。
私はつれてきた面々をお父様らに紹介した。
「お父様。ボルツアーノ王国のレックス・フェルト伯爵令息よ」
「伯爵令息ですか?」
お父様は何故か、胡散臭そうにレックスを見るんだけど。
「宜しくお願いします」
「国王の、ジョージだ。娘が色々と世話になったね」
「いえ、こちらこそ。リディアーヌ様には色々とお世話になりました」
「こちらが、アーチボルト・ウォーズ子爵令息。彼の父は第二騎士団長よ」
「娘が世話になった。そのような方が我が国に来ても良いのか」
「お会いできて光栄です。私はリディアーヌ様に一生涯ついていくつもりですので」
「いや、ついていくといわれても……」
お父様は途中で言葉を無くしていた。絶句していた。
「私は辺境伯が息子のハワードと申します。私は私の生涯をリディアーヌ様に捧げる所存です」
「……」
お父様は今度は言葉もなしに絶句していた。
「リディ、これはどういうことだ?」
お兄様が文句を言い出したけれど、
「うーん、本人に聞いてよね。私はつれてくるつもりはなかったし」
私は笑って誤魔化すしかなかったのだ。
取りあえず、3人には王宮の客室を準備させて、私は自分の部屋に向かおうとした。
その時に、
「ぴっ」
と鳴いて何かが飛んで来たのだ。
私は胸に黄色い塊を受け止めていた。
「ええええ! ドラちゃん?」
私は巨大竜のドラちゃんが昔のように胸に抱けるほどに小さくなって私の胸に飛び込んできたのだ。
「ぴっ」
とドラちゃんが鳴いて頷いてきたのだ。
「おう、ドラの助も姫様に甘えているのか? 3年間も会えなかったからのう」
レナードが言ってくれたが、
「ピー」
とドラちゃんは私に頭をスリスリしてくれた。
私はドラちゃんを連れて部屋に帰って、疲れ切っていたのか、風呂に入る前にベッドに倒れ込んでしまって、ドラちゃんと一緒に寝てしまったのだ。
「姫様、姫様」
私は誰かに揺り動かされた。
「うん、もう少し寝る」
「良いから起きて下さい。早くしないとお妃様が怒られますよ」
私は専属侍女のノーラに叩き起こされたのだ。
「姫様ったら私がお風呂の用意をしている間に寝てしまって起こすのもどうかと」
私は寝起きで目をこすりながら服を着替えさせられて、そのまま食堂に半分寝ているドラちゃんを連れて言ったのだ。
「あなた、判っているの? リデイアーヌさんは大国の王太子殿下に重傷を負わせたのよ。シュタイン王国がこのまま黙っているはずはないわ」
食堂の外まで、兄嫁の声は聞こえていた。
どうやら私のことについて話しているみたいだった。
「だからって、帰ってきたばかりのリディアーヌにこの国から出て行ってくれなんて言える訳ないだろう」
私は兄の声を聞いて唖然とした。兄嫁は私にシュタインから圧力がかかるから出て行けと主張しているみたいだった。それに対して兄も完全には反対はしていないみたいだ。私はせっかく帰ってきた母国の王太子夫妻から、このままいてくれたら面倒ごとになるからその前に出て行ってほしいと思われているのを知って固まってしまったのだ。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
せっかく実家に帰ってきたのに、兄嫁からは出て行ってほしいと思われているのを知ったりディはどうする?
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