シュタイン王妃視点 息子の元婚約者を捕まえて炭鉱娼婦にすることにしました
「なんですって! リディアーヌに逃げられたですって!」
私は叫んでいた。
「第八騎兵師団の第一大隊がリディアーヌの攻撃に壊乱したすきに逃げられたそうだ」
現国王で私の夫のクラークが教えてくれた。
「一個大隊で待ち伏せしていて、逃げられるとはどういうことなのですか? 相手はたかだか4人なんでしょう?」
私はむっとして言った。
「4人と言ってもそれぞれが相当の手練れだ。ノール辺境伯の息子が第一大隊長のオズモンド男爵を一刀の下両断したらしい」
「クラーク様。そもそも何故ノール辺境伯の息子がリディアーヌについているのです。そのように優秀な息子なれば我が息子エイベルにつけておけば、そもそもリディアーヌの攻撃を防げたのではありませんか。可哀相にエイベルはこのように寝たきりになっているのですよ」
私は体中包帯だらけにしたエイベルを見て言った。
エイベルは医師達に見させたところ、鼻が陥没して顎の骨も骨折、肋骨も折れているらしい。全治3ヶ月と診断されたのだ。下手したら美しい顔に後遺症が残る可能性もあるとのことだった。
婚約破棄されたくらいで、このような狼藉に走るなど、言語道断だった。
「そもそもお前が、エイベルの側近には剣術馬鹿は要らないと言っていたではないか」
「大隊長クラスを一刀両断に出来るほど強いとは聞いておりませんでした。それならそうと最初から教えてほしかったですわ。騎士団長、そのノール伯の息子クラスの使い手はまだおりませんの?」
私は今後のエイベルのことを考えてそう聞いた。側近のトミーも甥のジェイソンも剣術はからきしだった。息子にこのような危機が訪れるなんて想像だにしていなかったのだ。
「その親のノール辺境伯や騎士団長クラスならハワードクラスの使い手はいますが」
騎士団長が教えてくれた。
「その者達はそれぞれの仕事があるでしょう。もっと若手でいないのですか?」
「王妃様。そもそも学園で一番強いのは前国王陛下の連れていらっしゃったリディアーヌ様です。何しろリディアーヌ様はハワードにも勝っていたくらいでしたから」
私はその言葉に驚いた。
「あの小娘はそこまで強かったのですか?」
「我々共は王太子殿下のお相手がリディアーヌ様だと思っていたものですから、王太子殿下の側近の腕が多少落ちても問題ないと判断しておったのです」
「しかし、リディアーヌが必ず傍にいられた訳ではないでしょう」
「リディアーヌ様にはハワードの他に第二騎士団長の息子のアーチボルトもいましたから最悪はハワードかアーチボルトを王太子殿下におつけしようと考えておりました」
私の問いに騎士団長が答えてくれた。
「そのアーチボルトで良いではありませんか」
「妃殿下。そのアーチボルトもリディアーヌ様と一緒に行動しているのです」
「なんと言うことですか。では、剣術の強いメンバーは全てリディアーヌが連れているということですか? 他にもいるでしょう」
「ボルツアーノ王国からの留学生でレックス・フェルト伯爵令息がハワードを上回る腕前でしたが……」
「他国からの留学生では仕方がないでしょう」
「はい。それに彼も今はリディアーヌ様と行動を共にしています」
私はその騎士団長の言葉に唖然とした。
「リディアーヌは王太子妃に必要な教育もろくにしないくせに、剣術ばかり力を入れていたのですか?」
私が怒って言うと
「元々前陛下がリディアーヌ様を気に入られたのは剣術の腕前でしたから」
「騎士団長。騎士のスカウトの話ではないのですよ。王太子妃を選ぶ基準が剣術の腕前というのはおかしいでしょう」
私には信じられなかった。
「私もそこはそう思い陛下にお尋ねしたのですが、二人の間に強い子供が生まれれば最近軟弱になりつつある我が王家も安泰だとか言って笑っておられました」
騎士団長が呆れて教えてくれた。
「では、今逃走しているのが、剣術の強い奴らばかりでは捕まえるのは難しいのではありませんか」
「モウラス伯爵がなんとかしてくれるはずだ。奴の元には王宮魔術師団を派遣している」
私の心配にクラークが断言してくれた。
「暗部の精鋭がリディアーヌに瞬殺されたと聞きましたが、魔術師団は問題ないのですか?」
私が不安になって聞いた。
「問題ないはずだ。催眠魔術の得意な者が行ったとのことだからな。眠っている間に全員捕まえてくれるわ」
クラークが断言してくれた。
「そうですか。それなら良いのですが」
「リディアーヌを捕まえてどうするのだ?」
「王太子に狼藉を働いたのです。不敬罪で顔に入れ墨を入れさせて一生涯鉱山でも働かせれば宜しいでしょう」
私は愛息のエイベルをこのようにしてくれたリディアーヌを許すつもりは毛頭なかった。
「そうじゃな。丈夫な子供が必要ならば、炭鉱の鉱夫と交わらせれば強い騎士も生まれるかもしれんな」
クラークが提案してくれた。それも良いかもしれない。炭鉱で働くと同時に男の客も取る炭鉱娼婦にするのだ。そうすれば私の溜飲も降りるというものだ。
「陛下、それではインスブルク王家が文句を言ってきましょう」
宰相がケチをつけてきた。この宰相はいつもそうだ。
「何を申す。リディアーヌが王太子に暴力を働いて重傷を負わせたのは事実ではないか」
「しかし、その前日に王太子殿下がリディアーヌ様に暴力を振るって気絶させたというのがあって、インスブルクから抗議が来ておりますが」
宰相が再度反論してきたが、
「何をいう。あのような暴力女が気絶などする者ではないわ。何かの間違いでしょう」
「剣術部の者達が皆見ていたとのことですが」
私の言葉にも宰相は頷かなかった。
「ふんっ、宰相は余計なことばかり気が回るの」
私はむっとして宰相に嫌みを言った。
「インスブルクが文句を言ってきたところで無視すれば良かろう。インスブルクなど所詮北の小国ではないか。我が国が無理を言えば聞くしかなかろう」
クラークがそう言って話を終わりにしてくれた。
私はモウラス伯爵がにっくきリディアーヌを連れて王宮に現れるのを楽しみに待っていたのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
どうしても情報伝達が遅いシュタイン王国の話でした。
次はインスブルク王宮のお話です。
明朝ご期待下さい。
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