私を助けてくれた巨竜は私のペットでした。そのまま一緒に飛んで来た飛龍と故国に帰りました
窓をぶち破ってきた巨大な竜は金色に輝いていてとてもきれいだった。
その竜は何故かとても懐かしい思いを私に抱かせてくれた。
竜は私に剣を向けて唖然として固まっている男達を見ると赤い目を光らせてそのまま剣を持った男達をはじき飛ばしてくれた。
ダシーン
男達は私の部屋の壁を突き破って、隣のリビングまで弾き飛ばされていた。
「ギャオーーーー」
怒り狂った金色の竜は私のすぐ横で咆哮してくれたのだ。
館全体が揺れて、穴の開いた私の部屋の壁の残りが崩れ落ちた。
何故か隣の部屋で大口を開けて寝ていたハワードが慌てて飛び起きたのと、壊れた侍女部屋からアーチとレックスが飛び出てくるのが同時だった。
「リディ、大丈夫か?」
レックス達は剣を抜いて竜相手に構える
でも、金色の巨大竜はそれを無視して私を見ると、
「クゥーーーー」
と懐かしそうに鳴いてくれたのだ。
「えっ? あなた、ドラちゃん?」
私は驚いた。
昔、山で拾った子竜を連れて帰ってお父様に叱られたのだ。
でも、見捨てるわけにはいかずに、そのまま育てた。
こちらに来る時にさすがに置いてきたんだけど、ここまで大きくなっていたなんて思ってもいなかった。
「クゥー」
そう鳴くとドラちゃんは私に顔をすり寄せてきたのだ。
「ドラちゃん」
私はその大きなドラちゃんの顔を抱きしめたのだった。
「クゥクゥ」
ドラちゃんは私に顔をスリスリしてくれた。
「うそ!」
「信じられない。巨大竜を手懐けている」
「さすがリディアーヌ様。巨大竜までもリディアーヌ様に頭を下げるとは」
アーチは驚愕し、レックスは呆れ、ハワードは感心していた。
そこへ壁の扉が開いて抜剣した騎士達がなだれ込んできた。
「リディアーヌ、貴様を王太子暗殺未遂、並びに騎兵第八師団第一大隊殲滅容疑で捕縛……」
先頭を切って飛び込んできたモウラス伯爵はそこで初めてドラちゃんを抱きしめている私を見たみたいだった。
驚いて開いた口が戻らなくなるほど驚愕していた。
「ええい。リディアーヌ、貴様は魔物を使う魔女だったのか」
我に返ったモウラス伯爵が叫んでくれた。
「貴様、伯爵風情がインスブルクの王女殿下であらせられるリディアーヌ様を呼び捨てにするな」
ハワードが一喝した。
「何を言うのだ。その女は婚約破棄されたのを逆恨みして王太子殿下に瀕死の重傷を負わせた極悪人だぞ」
私はモウラスによって極悪人にさせられてしまったのだけど……あれは絶対にエイベルが悪いのだ。婚約者がいるにもかかわらずアラベラと仲良くなって、挙げ句の果てに下手な罪をねつ造して私を断罪しようとしたんだから。私に引っ叩かれても文句は言えないはずだ。それに私はあれでも手加減して張り倒したんだから、本気出していた死んでいたって!
私はさすがにむっとした。
「何をふざけたことを言っている。リディアーヌ様は前国王陛下の度重なる招聘で、やむを得ずこの地シュタイン王国にいらして頂いたのだぞ。それを単なる王太子であるにすぎないエイベル風情が、身の程知らずにも偉大なるリディアーヌ様に罪をねつ造し婚約破棄をしたのだ。本来ならばそれだけでエイベルは処刑されるべきだ。本来、糾弾されるべきは失礼な事をしでかしたエイベルであろう」
「何を言う。偉大なシュタイン王国のエイベル王太子殿下になんということを言うのだ。リディアーヌなど、魔物の竜が跋扈するインスブルクなどと言う小国の王の娘に過ぎんだろうが」
「貴様。言わしておけばリディアーヌ様に対して度重なる狼藉。もう許さん。不敬罪で処断する」
そう叫ぶや、ハワードは剣を抜いて、モウラス伯爵の元に一瞬で駆け寄ったのだ。
そして、一撃でモウラス伯爵を叩き斬っていた。
「ギャッ」
モウラス伯爵は抵抗する暇もなく吹っ飛んでいた。
「き、貴様、良くもお館様を」
残りの兵士達がハワードに飛びかかろうとした時だ。
ビキビキビキ
という大音響とともに館が大きく揺れて、崩れ落ちたのだ。
さすがの館もドラちゃんの重さに耐えられなかったらしい。
ドシーーーーン
凄まじい音で大きな館が崩壊した。
私はドラちゃんに抱きついて無事だったけれど、他の皆は崩壊に巻き込まれていた。
そして、館がなくなると今度は騎士達の多くが私達を取り囲んでいるのが判った。
「ギャオーーーーー」
ドラちゃんが咆哮した。
騎士達が弓で攻撃してきた時だ。
「姫様!」
私は大空から私を呼ぶ声を聞いた。
見上げると人を乗せた飛竜の群れがこちらに急降下しているところだった。
そして、私を攻撃している騎士達の間に爆発が起こる。
「ご無事でしたか」
「チャーリー!」
それは飛竜騎士団の第一騎士隊長のチャーリーだった。
周りの騎士達の間に次々に爆発が起こって騎士達は大混乱に陥った。
飛竜から魔導爆弾を落としたのだ。
「今のうちに逃げましょう」
チャーリーが言ってくれた。
「仕方ないわ。逃げるわよ」
私が叫ぶと
「おい、俺達はどうしたらよい」
レックスが聞いてきた。
「足でもいいから捕まりなさいよ」
「えっそんな」
慌てて、レックスらがドラちゃんの足に捕まるのを確認すると、
「ドラちゃん。飛んで」
私が言うと
「ギャオーーーー」
ドラちゃんが咆哮してゆっくりと飛び上がったのだ。
巻き上げた風で地上の兵士達を弾き飛ばす。
そのまま悠々と金色の巨大竜は空に飛び上がる。
飛竜達が直ちに私達の周りに配置についてくれた。
そのまま私達は編隊を組んでインスブルク王国に向かったのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
リディの逃亡劇はここまでです。
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次からはシュタイン王国の逆襲です。
大国シュタイン王国の牙がリディに向かいます。
リディの運命やいかに
今夜更新予定です