隣国の留学生がぼっちの私のエスコートを申し出てくれた事を喜びました
本日2話目です。
今日は夜にもう一話更新します。
翌朝も寝起きは最悪だった。
私としては、せっかくの青春時代の学園生活はこんな空気のよどんだ都市ではなくて、山の上の高原で、仲間と剣術と魔術の訓練に明け暮れて暮らしたかった。
でも、私は王女として我が愛しのインスブルク王国のために我慢して、このシュタイン王国の王太子の婚約者としてやっていこうと努力してきたのだ。
その結果が皆の憧れの卒業パーティーで、誰もエスコートしてくれないボッチになるなんて……どういう事なの?
卒業パーティーなんて人生一度きりだ。性格は最悪だけど、せめて見た目は良いエイベルにエスコートしてほしかった。
どのみち王女の私は恋愛結婚なんて出来ないのだ。
それは子供の頃、理解させられた。
インスブルク王国はこの大陸の真ん中に位置する小国で周りは大国に囲まれている。歴代の王が一番苦労してきたのは大国の中でいかに生き残るかだ。そのための政略結婚は大切な政略だった。
私は王女なんだから基本は国のために政略結婚しか出来ない。このシュタイン王国はその中でも大国なので、この政略結婚は私にとって本来ならば失敗する事が許されないものなのだ。
ただ、現実はこの婚約は我が国が望んで行ったことではないということだった。
この国の前国王が強力に望んだ結果だ。まあ我が国からしたら、王女が近隣の中で一番大国の王妃となるのだから言うに越したことは無かったのだが……
でも、私が王太子から卒業パーティーでエスコートされないなんて判ったら
「あなたがちゃんとエイベルのことを捕まえていないからいけないのよ」
と今度は私に厳しいこの国の王太后にグチグチ文句を言われるかもしれないけれど……
私は気の重い体を引きずるようにして、自分のクラスのEクラスに向かった。
この王立学園のクラスは5クラスあって、私は隣国の王族でなおかつ王太子の婚約者なのに、何故かAクラスではなくてEクラスだった。
ABCDEの中の一番下のEクラスだ。
決して、庶民と交流したいからとか私自らが望んで入ったからではない。
そもそもこのクラス分けは入学試験の点数で決まる。
大体伯爵以上の高位貴族の子弟がAクラス、子爵以上の子弟がBクラス、そして、以下が男爵、裕福な商人の子弟、騎士爵の子弟や文官の子弟、後は優秀な庶民となる。
後で聞いた話では、テストの成績は500点満点で、貴族は親の爵位に応じて点数が加算されるのだとか……何だよそれは思わないでも無かったが、私も王族だ。すなわち貴族側なのだ。文句は言えないと諦めた。
王族はプラス500点、公爵又は他国の王族は400点、侯爵と辺境伯は300点、伯爵が200点、子爵が100点、男爵が50点だそうだ。
これだけ加算点があれば、高位貴族がAクラスになるのは当たり前なのだ。
私も隣国の王族なので、本来ならば400点加算されるはずが、小国の王女の私がエイベルの婚約者であることに反発する教授陣の仕業か、事務官の嫌がらせなのか加算点は無かったみたいだ。
でもいくら加算点が無いからってEクラスは無いんじゃないのか?
そう手紙に書いて国元に送ったら、
「姫様は又解答用紙に何か余計なことを書かれたんでしょう。そうか名前の書き忘れではありませんか。あるいは字が汚すぎて読めなかったとか」
と故国の守役のレナードの返事に書かれてしまった。
うーん、よくやることなのでなんとも言えないが、このテストで私は名前の見直しは何回もしたし、今回のテストはできる限りきれいに書いたつもりなのに!
まあ、私はどちらかというと外を走り回っている方が好きだから、勉強はそんなに出来なかったというのもある。何しろこの学園の卒業者は王宮から各地方の役人まで選り取り見取りで選べるのだ。職に就くために平民や低位貴族達は必死に勉強して入学してくる。
高位貴族達よりもそういったもの達の方が賢い人間も多くいるのだ。だから学力テスト結果も実点数だけならばAクラスよりもCクラスの方が高かったりする。
だから私の所属するEクラスにも賢い人間は多いのだけど……
私のEクラスは大半が平民だった。
もっともEクラスといっても平民達は本当に優秀だった。本当にだめなのは貴族点をもらっているにもかかわらずこのEクラスにいる、40人中8人も占める貴族連中だった。私もその中に入っていた。
「王太子殿下の婚約者がEクラスなんて信じられませんわ」
「まあ、リディアーヌさんは剣術が得意でいらっしゃるようですから、頭の方まで手が回らないのでは無くて」
Aクラスのベリンダ伯爵令嬢とアラベラの嫌みを昔聞いて切れた覚えがあるけれど、貴族達に言わせると加算点があるにもかかわらず、Eクラスにいるなんて本当に落ちこぼれなんだそうだ。
そして、私は朝からどよーんとクラスに入った。
まさか、卒業パーティーで、婚約者のエイベルが私をエスコートしてくれないとは想像だにしていなかったのだ。
そして、普通の3年生は婚約者か恋人がエスコートしてくれるのだ。
相手のいない生徒は3年生になったときから必死に相手を探しているものなのだ。
今更相手がいないってなっても、もうみんな相手は決まっているはずだった。
ということで私はぼっち確定なのだ。
人生一度の学園の卒業パーティーなのにひとりぼっちってちょっと無いんじゃない!
「どうしたの? リディ、元気がないみたいだけど、また、最低の王太子殿下と何かあったの?」
ベティ・アラカルトが心配して声をかけてくれた。
彼女は男爵令嬢でよく私に声をかけてくれる私の大切な友人の一人だ。
「ベティ、あなた王太子殿下に不敬よ」
「何が不敬なのよ。あんな最低の男、あんたという婚約者がいながら公爵令嬢のアラベラといつも一緒にいるんでしょ。本当に男の風上にも置けないくずじゃない」
「本当だよな。あんなのが未来の王太子で良いのかと思うぞ」
私と同じ剣術部のアーチボルトも憤ってくれた。
そう、我がクラスでは、王太子エイベルの私への最低の態度に、その人気は地面すれすれにまで落ちているのだ。
「また、その王太子殿下に何か言われたの?」
「うーん、今度の卒業パーティー私のエスコートは出来ないって」
私が何でもないことのように言おうとして失敗した。
その瞬間周りの皆が私を見たのだ。
「何ですって! 王太子殿下はあなたの婚約者じゃない! それが他の女をエスコートするなんて信じられないわ」
「そうだ。さすがにそれはあり得ないぞ」
「信じられないわ」
皆私の所に来て文句を言ってくれた。
「リディ、俺はボルツアーノ王国の留学生だから卒業パーティーは一人で参加しようとしていたんだ。何なら俺がエスコートするよ」
これも同じ剣術部で我が国と北を接するボルツアーノ王国からの留学生で伯爵令息のレックスが申し出てくれた。
この申し出は誰も相手のいなくなった私にはとても魅力的な申し出に聞こえた。
くずのエイベルに比べればレックスの方が100倍誠実だ。
でも、私は一応、エイベルの婚約者なのだ。婚約者が不誠実だと言って私までそれを真似ても良いかどうか判らなかった。
「レックス、ありがとう。その申し出はとてもうれしいわ」
そう言うとレックスの顔は喜色に溢れた。
「でも、少し考えさせてほしいの」
私が言うと
「それはそうだろう。良いよ。ギリギリまで待つから」
落胆した様子も見せずにレックスは頷いてくれたのだ。
私はそのレックスの思いやりがとてもうれしかった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
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