シュタイン王妃視点 息子の元婚約者が息子に重傷を負わせて逃走したと聞いて王国の暗部を捕縛に向かわせることにしました
私はキャメロン・シュタイン。この国の王妃だ。
私は元々この国のアンダーソン公爵家の出身で、夫の現国王とは学園で出会い、そのまま結婚した。まあ二人の中で熱い想いが燃え広がった末に結婚したなどと言うつもりはないが、お互いに身分的にも釣り合うし、納得の上で結婚したのだ。別に夫に対しては不満はなかった。
私が不満に思ったのは愛する一人息子の婚約者が、辺境の小国インスブルク王国の王女だという点だった。大国の王女ならいざ知らず、何故そのような小国の王女を嫁に迎えなければいけないかよく判らなかった。夫の父の当時の国王が強引に話を決めてきたのだ。私は息子のエイベルには学園に入ってから気の合う娘と一緒になってくれれば良いかと思っていたのに、舅が息子が10歳の時に決めてきたのだ。私たち夫婦の希望など全く聞かずに。
私は不満だらけだったが、舅は聞く耳を持たなかったのだ。
シュタイン王国の為にはこれが一番良いと上機嫌だったのだ。
姿絵を見る限り、別にどこにでもいる娘だし、何が良いのか私には全く判らなかった。それはその娘、リデイアーヌが16になり、学園に入学してからも変わらなかった。公爵家出身である私の目から見るとリディアーヌはがさつで抜けているところが多々あり、礼儀作法は成っていないところも多かった。それに成績は最下位で、その上リディアーヌは何故か護身術取得のために剣術部に入ったのだ。王家の人間が入るべき所ではなかった。これでこの国の将来の王妃が務まるのかと不安に思った。でも、何故か舅はそれを聞いても全く動じずに、元気があって良かろうと喜ぶ始末だった。
私には意味が全く判らなかった。
その舅が1年後に亡くなるときに、
「エイベルとリディアーヌの婚約は絶対に破棄するな」
と私たちに言い残したのだ。
私は不満だらけだったが、遺言ならば仕方がないと、リデイアーヌの王妃教育を更に強化した。
リディアーヌはなんとか私の王妃教育についてきていた。
そんな中、エイベルが私に相談に来たのだ。
結婚するならばリディアーヌよりもトレント公爵家の令嬢であるアラベラの方が良いと……
思い詰めた顔で相談に来たのだ。
一応今回の婚約は国と国の婚約だ。まあ、インスブルク王国など、北の小国、我が国が婚約破棄を強く望めばそれを飲まざるを得ないとは思われたが、外聞もある。
「エイベル。リディアーヌとの婚約はあなたも承知しているように我が国シュタイン王国から持ちかけた婚約です。それを破棄するとなるとリディアーヌにそれ相応の瑕疵がない限り中々難しいのではないですか」
「リディアーヌは俺の婚約者であることを笠に着てアラベラを虐めているのです」
エイベルが申し出てきた。
そのようなことでは中々世間常識的に婚約破棄は難しいと思われたが、
「それは確たる証拠があるのですか?」
あまりにもエイベルが思い詰めた顔をしていたので、私は思わず質問していたのだ。
「確たる証人を集めれば宜しいのですね」
エイベルが身を乗り出して聞いてきたので、私は頷いてしまったのだ。
私はそれから夫ととも相談して実家のアンダーソン公爵家は元より、エイベルの側近の家などの高位貴族を中心に当主を呼んで、根回しをした。
大半の高位貴族達は私の意見に賛同してくれたが、ノール辺境伯や、第二騎士団長のウォーズ子爵家など、中流から下位貴族の当主連中で前国王に近い面々は反対してきた。
リディアーヌは剣術部を中心に下位貴族の子弟に人気が高いらしい。
婚約破棄を強行すると下手したら国を二分することになりかねない。
私はエイベルを呼んで、アラベラを婚約者にするには相当な理由付けが必要だと伝えた。
エイベルは卒業パーティーでリディアーヌの断罪を行い、婚約破棄をすると私に説明してきた。
なんと、リディアーヌが大使館の人間を使ってアラベラを襲おうとしていたと言うのだ。
そのようなことは許されまい。私は夫の国王の承認を得て、学園に近衛騎士団の派遣を決めたのだ。
「王妃様。大変でございます」
結果を待っていた私のもとに近衛騎士の伝令が駆け込んできた。
「どうしたのです」
「我々がリディアーヌ様を捕まえようとしたところ、リディアーヌ様が抵抗されて、エイベル様が重傷を負われました」
「な、何ですって。貴方たち近衛騎士団は何をしていたのです」
私は思わず怒鳴っていた。
「申し訳ありません。リディアーヌ様の早さについて行けず、制止出来ませんでした」
近衛騎士は頭を下げた。本当に役立たずだ。
「エイベルの具合はどうなのですか?」
「命には別状はないかと。とりあえず、学園の医師の元治療を行っています」
「王宮から主治医を直ちに派遣しなさい」
私は女官に命じていた。
「で、犯人のリディアーヌはどうしたのです」
「現在我々の追跡を振り切って逃走中です」
「直ちに捕まえなさい。どんなことをしても捕まえるのです」
「はっ。判りました」
近衛は慌てて駆けていった。
「リディアーヌ。公爵令嬢を襲おうと画策して、それが露見すると私のエイベルに襲いかかって逃走するなど、絶対に許さないわ」
私は近衛騎士団だけでは心許ないので、直ちに陛下に会って暗部を追跡に振り分けてもらうようにお願いしようとした。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
王妃の怒りを買ったリディの運命やいかに。
次は暗部の襲撃です。
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