婚約破棄をしようとする婚約者の証人を次々に友人達が論破していたら、大使館の人間が私が公爵令嬢を襲わせようとしたと証言してくれました
「リディアーヌ・インスブルク、俺は貴様との婚約を破棄することをここに宣言する」
壇上にアラベラと上がったエイベルの声が私に聞こえたときだ。
私は今まで私がやってきたことが灰燼に帰した事を知った。今まで必死に我慢して努力してきたことが水の泡になったのだ。この8年間の努力が全て無駄になった。
でも、それと同時に
パリンッ
レナートが作ったエイベルに逆らえなくなる枷がはっきりと割れる音を聞いたのだった。
そして、エイベルの婚約破棄の声とともに、私達の周りをわらわらと現れた騎士達が取り囲んだのだ。
「キャーーーー」
「何なの?」
クラスメート達が騒ぐ。
「何だおまえらは」
レックスとハワードとアーチ達が私の周りを囲んでくれた。
それを遠巻きに騎士達が取り囲んだのだ。
「リディアーヌ・インスブルク。貴様は俺の婚約者であることを笠に着て、貴様自身があるいは取り巻き達を使って、我が国の公爵家令嬢のアラベラ・トレントにした嫌がらせの数々の証拠は挙がっている。そのような心ない嫌がらせをする者など、俺の婚約者としてふさわしくない。よってここに婚約破棄することにした」
私は思わずエイベルをガン見した。なにそれ? そんな理由で婚約破棄なんて出来るの?
私は呆れてしまった。
「バーバラ嬢」
エイベルが一人の少女を壇上に上げた。
「はい。私はバーバラ・ドッチモーアと申します。私はリディアーヌ様がアラベラ様に水をぶっかけるのをこの目で見ました」
「まあ、なんてことなの」
「酷いわ」
「おいたわしいアラベラ様」
貴族の女達の声が聞こえた。
「おい、それは、リディがされていたことじゃないのか?」
レックスが馬鹿にしたようにぼそりと声に出してくれた。
「そうだ。俺はあの女が魔術でリディの頭の上から水をぶっかけようとしたのを見たぞ」
ハワード言う。
「リディに反射されて自らかかっていただけだろう」
「何だよ、自作自演かよ」
アーチの声に剣術部の面々がどっと笑ってくれたんだけど。
最初は驚いていた生徒達も今度は白い目を壇上の3人に向け出した。
「いや、そんな事は……」
バーバラは騎士達の笑いに声が出なくなった。
「何をいっているそんなわけは無い!」
エイベルが慌てた。
「トミー!」
慌てたエイベルは次に自分の側近を呼んだんだけど……次は何するんだろう?
「私はトミー・マクレガーだ。私はEクラスの女性がアラベラ嬢の教科書を隠すのをはっきり見ました」
トミーが言い切ってくれるんだけど、私がそんなくだらない事すると思っているんだろうか?
「えっ、私はさっきのバーバラ様がこそこそとEクラスに入っていくのを見て、何しているんだろうとみていたら、リディの鞄から教科書を勝手に取り出してどこかに持って行こうとしていたけれど」
大声でベティが叫んでくれた。
「あ、俺も金をやるからリディの筆箱を持って来いってアラベラ嬢に頼まれました」
「私も、いやだって言ったら平民の分際で逆らうのかって逆ギレされました」
クラスの面々が言ってくれるんだけど。
「おいおい、アラベラ嬢の差し金か」
「やることが卑怯だよな」
Eクラスの面々が叫んでくれた。
「そんなわけは無い。勝手なことは言うな」
慌てた、エイベルが言うが、
「私は嘘は申しておりません」
はっきりとベティが言い切って、何も言えなくなったのか
「ジェイソン!」
更に側近を呼んだ。
「私はジェイソン・アンダーソン。私は剣術部の面々がアラベラ様を取り囲んで虐めている現場に出くわしました。助けようとした私を見て剣術部の面々は慌てて逃げ出しましたが……」
「何言ってるんだ。それはいつもリディがアラベラ嬢にされていたことだろう。最もリディは囲まれても平然と飯食っていたけどな」
アーチの声に
「さすがリディ」
皆どっと笑ってくれたんだけど……
ちょっとそこ笑うところなの!
私は別に囲まれていようが嫌みを言われていようが、時間が無いときはご飯を食べるのだ。おなかが減って授業中に頭に入らない方がよほど大変だから。何しろ先生方の私に対するあたりは強いのだ。誰の差し金か知らないけれど……私は遠くで事の成り行きを見ている学園長を睨み付けた。
エイベルは自分達の側近を証人に出すなんて、こいつは馬鹿じゃないのかと私は思った。普通は証人は第三者、特に関係ない人間をつれてくるものなのだ。自分の側近なんて証人にはなり得なかった。
それに皆に否定されたんだけど、どうするつもりなんだろう?
「ふんっ、貴様らが元気の良いのもここまでだ」
しかし、何故かエイベルは笑っていた。
私は少し嫌な予感がした。
こいつら更に企んで何かしたのか?
「マック!」
文官風の男がエイベルに呼ばれて壇上に上がった。
誰だろう?
私はこんな男は見たこともなかった。
「私はインスブルク大使館に勤めているものです」
男は突然話し出したのだ。
「私はそちらにいらっしゃるリディアーヌ様が大使館で破落戸どもを雇って、アラベラ様を襲わせるようにと指示していらっしゃるのを聞いたのです」
その男の話し出したことは衝撃的なことだった。
私は嵌められたと悟ったのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
絶体絶命? のリディ。
続きは今夜です。
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