閑話 古代竜の子供を拾いました
「なんで私が面倒見なきゃいけないのよ」
私は大声で叫んでいた。
せっかくレナードが急用が出来たと今日の訓練が無くなったのに、お母様からボルツなんとかという国の伯爵家の息子の面倒を見るように言われたのだ。
「だってこの子、めちゃくちゃ弱いじゃん」
「リディ!」
お母様は私の不満を一言で抑えてくれた。ここで逆らうと後で碌な事はないのだ。
ケーキ一週間抜きとか、お説教2時間コースとか、最悪両方とか……
うーん、強い奴なら、お母様に黙ってダンジョンとか連れて行けるけれど、弱っちい奴は足手まといにしかならないし、間違って死んでしまったら大問題になってしまう。
でも、私は今日は邪魔するレナードがいないので、是非とも新しく見つけたダンジョンに潜ってみいたのだ。
よし、鬼ごっこする振りして置いていこう。
私はあっさり心に決めたのだ。
そして、二人して裏山にやってきた。
飛竜のいる山の二つ向こうだからここなら問題ないはずだ。
ここから新しいダンジョンまで、私の足で片道1時間。
2時間冒険に使って往復2時間の計4時間だ。
このあたりの魔物の大半は私がレナードの訓練ついでに退治したから、ほとんどいないはずだし、問題はないだろう。
私が準備運動がてら軽くここまで走ってきたのに、その子は早くももうふらふらだった。
本当に軟弱だ。
「ようし、じゃあ、鬼ごっこするわよ。あなたが鬼ね。じゃあ、私は逃げるから」
「えっ、ちょっと!」
男の子の返事は禄に聞かずに、私は脱兎の如くかけだしたのだ。
「ちょっと待ってよ!」
男の子が叫んだが、待っていられる訳はないじゃない。
私は更に加速したのだ。
これで振り切れたと感じた時だ。
とてつもなく、強い気を私は前方に感じたのだ。
「えっ、こんな奴知らない」
私は思わず、たたらを踏んで止まったのだ。
私は前方から凄まじい威圧感を感じていた。
木陰からそっと覗いて、私は大きく目を見開いた。
なんと、そこには金色の年いった古代竜がいたのだ。
年いった竜と言ってもそんじょそこらの騎士では手も足も出ないだろう。
何しろ史上最強の古代竜なのだ。
さすがの私も血の気が引いた。
こんな時にレナードがいればなんとかしてくれたと思うけれど、今日はいない。
私はどうしようかと無意識に首を振っていた。
「ギャーーーー」
私は遠くに男の子の悲鳴を聞いたのだ。
あの子の声だ。
大きな声を上げるなよ。こいつに気付かれたらどうするんだ?
私がそう考えた時は遅かった。
「ギャオーーーー」
古代竜は咆哮すると、慌てて飛び立ったのだ。
古代竜は、声のした方に向かった。
やばい、これはあの子がやられる。
慌てて私は元来た道を駆け出しのだ。
普通に駆けたのでは絶対に空飛ぶ竜には勝てない。
文字通り私は疾走したのだ。これほど早く駆けたことは未だかつて無かった。
それでも、古代竜には勝てなかった。
古代竜の目指した先には何故かゴブリンと対峙する男の子がいた。
男の子は既に肩に傷を負っていた。
ゴブリンに棍棒で殴られたみたいだ。
しかし、次の瞬間、ゴブリンはパクリと古代竜に食べられてしまった。
「えっ?」
男の子は目を見開いて固まってしまった。いきなり、古代竜と対峙することになってしまったのだ。
男の子はもう真っ青になっていたし、遠目にも膝がガクガク震えているのが見えた。
震える暇があったら逃げろよ。
私はそう叫びたかったが、もう、時間は無い。
私はそのまま後ろから古代竜に跳び蹴りしていた。
ダンッ
古代竜は後頭部を私の跳び蹴りをもろに受けて地面に顔を打ち付けていた。
ドシーーーーーン
そのまま倒れる。
「逃げろ!」
私はその男の子に叫んだが、男の子は腰が抜けたのか動けないみたいだった。
本当に情けない。
私がその子をお姫様抱っこしようとした時だ。
後ろから殺気を感じた。
とっさに私は背中から聖剣を抜こうとした。
ガキンッ
後ろから古代竜の爪の攻撃を受けそうになった私は抜いた剣で受けていた。
でも、勢いは殺せずに、私は気に思いっきり地面に叩きつけられていた。
頭を振って立上がると古代竜は丁度男の子を前足で引っ叩くところだった。
男の子がボロ雑巾のように吹っ飛んでいくのが見えた。
私は血相を変えた。
男の子は弱っちかったが、それを古代竜が引っ叩いていいことにはならないのだ。
「おのれ、良くもやってくれたわね」
私は聖剣を鞘から引き抜くと、古代竜目がけて脱兎の如く駆けだしたのだ。
私の怒りを受けたのか、聖剣が金色に輝きだした。
「おんりゃーーーー、喰らえ!」
私は古代竜目がけて聖剣を振り下ろしたのだ。
ズカーーーーーン
聖剣から金の光の流れの奔流が古代竜に襲いかかり大爆発が起こったのだ。
私はその爆風に思わず吹き飛ばされていた。
うっそうと茂った木々に叩きつけられた私は、枝に傷つけられてボロボロになりながら、太い枝にぶつかってなんとか止まった。
体中痛かったが、なんとか立上がった。
もう満身創痍だった。
なんとか古代竜がいたところに戻るとそこには古代竜は影も形も無くなっていた。
代わりにそこには金色のでかいひよこがいたのだ。
ひよこは私を見て
「ピー」
と泣いてくれた。
「まあ、可愛い」
私は思わずそのひよこを抱きしめたのだ。
そのでかいひよこはもふもふしてとても抱きやすかった。
「あなたはピーちゃん」
私が名前を付けようとすると
「ピーーーー」
ひよこはその名前が気に入らなかったみたいで、怒りだしたのだ。
「痛いったら」
私のむき出しの手をくちばしで突きだしたのだ。
「判った、名前を変えるから」
仕方なしに私は違う名前を付けることにした。
「ひよちゃん」
「ピッ」
「痛いっ!」
私はひよこに突かれて思わず飛び上った。
「じゃあ、ひーちゃん」
「ピッ」
「痛いっ!」
私が名前を挙げるたびにでかいひよこは文句を言って私の腕を突くのだ。
「もう、じゃあ、さっきドラゴンを倒したから、ドラちゃんにする?」
私がやけくそで言ったら、
「ピー」
ドラちゃんは喜んでくれたのだ。
私は傷だらけになった手を撫でながらほっとした。
これが私とドラちゃんの出会いだ。
ちなみに、弱っちい男の子を探しに行くと木に引っかかって気絶していた。
私は満身創痍だったので、男の子を背負って、ピーちゃんを抱いて城に帰るまでが本当に大変だった。
その後お母様に怒られたことは言うまでもなかった。
ケーキ抜き2週間と4時間のお説教はさすがの私も堪えて、この後2週間ほど静かに過ごしたのだった。
ここまで読んで頂いて有り難うございました。
リディとレックスとドラちゃんの小さい時のお話でした。
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最終章 絶賛更新中です。
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