王太子視点 竜娘に虚弱体質だと噂されてきれてしまいました
敵と決戦する前に、俺はいろんな手を打っておきたかった。
俺の希望を具体的に実行するあたり、俺の側近は優秀だった。
俺様に婚約破棄されて、断罪されるどころか、逆に刃向かってきたリディアーヌに対して、討伐軍を起こすに当たって、反乱軍の切り崩しを図ってくれたのだ。
マクレガー侯爵家のトミーが俺達の隣のクラスだったB組の反乱軍の版図に領地のある子爵令息と男爵令息と連絡を取って、内応を約束させたのだ。マクレガーによるとリディアーヌの専制政治に嫌気のさした貴族はもっといるという。ここは揺さぶりをかけるのが一番とのことで、俺は前インスブルク大使を呼び出したのだ。
「インスブルクの大使って、金貨百万枚をよこせとか言うインスブルクのめちゃくちゃな要求を持って帰ってきた無能者だろう。そんなのを呼び出して役に立つのか?」
アンダーソン公爵家のジェイソンが疑り深そうに聞いてきたが、
「別に成功しなくても良い。反乱軍に動揺が走れば良いのだから」
俺は首を振って言い切った。
やってきた元大使は頼りなさそうな男だった。
しかし、俺様が二、三話をしてやるととてもやる気になってくれた。
こんな男が捕まっても助ける気は毛頭ないが、助けるように手は打ってあると、方便を述べてやる気にさせた。こうしておけばやることはやってくれるだろう。
今回の降伏勧告に書いたのは二つ。
1つめはリディアーヌの降伏勧告だ。これは当然受ける訳はないだろう。
2つめはその他領主に今降伏すれば本領安堵するという物だった。
2つめを聞いて、こちらに寝返る領主がいればよし。
いなくても、動揺してくれて戦いの時に寝返る、ないし動揺して我が軍の有利になれば、送った甲斐があるというものだ。
それでなくても、こちらは二十万。あちらは5万だ。それに2領主の内応も期待できた。
我が軍の有利は確実だったが、更に有利に進めたかった。
まあ、少なくとも、反乱軍に動揺を与えることは可能だろう。失敗しても元々という考えで送ったのだ。
俺は多少の効果を期待したのだ。
送った翌日だ。俺は先遣部隊の見送りに広場にいた。
今日は先遣部隊の5万人が出陣していくのだ。
俺は一同を前に演説するように言われていた。
「諸君。今回の反乱軍は君たち先遣隊と同じ5万人もいない。我が軍が二十万の大軍であると言う情報が敵に流れ、その事に驚いて早くも離脱している兵士達もいるようだ。本当に頼りない敵だ」
俺がそう言うと兵士達はどっと笑ってくれた。
「今回我が軍は浮き足だった敵反乱軍をあの地で叩いて一掃し、一気にギンガルメを解放し、インスブルクを併合するつもりだ。そのためのこの初戦はとても重要だ。
ここで敵を殲滅し、一気に反乱軍の土地を占拠するのだ。
諸君はまず、国境についたら、陣地を作って、警戒してもらいたい。我が本軍もすぐに先遣隊と合流する予定だ。
我が軍は必ず勝……ギャーーーー」
俺が勝つと言おうとした時だ。急遽頭上から男が振ってきたのだ。
男は俺の頭に激突し、俺は気を失ってしまった。
「殿下、殿下!」
俺はトミーに呼びかけられて慌てて目を覚ました。
「何事が起こったのだ?」
俺は、どうやら臨時に作られた野戦病室にいるみたいだった。
その1号患者になったようだ。
「殿下の真上に使者に出したドラクエ男爵が転移させられてきたのです」
トミーが教えてくれた。
「何故、転移してきたのだ」
「ドラクエ男爵もよく判っていないみたいですが、降伏勧告を読み上げる最初の言葉でリディアーヌに張り倒されたらしいのです」
トミーは教えてくれた。
「それからこのような書面をドラクエは持たされていました」。
トミーが書面を差し出してくれた。
俺はその書面を見て、完全にきれていた。
「なんだ、これは!」
そう叫んで立上がろうとして立ちくらみがした。
慌ててトミーが支えてくれた。
「殿下、急に立ち上っては危険です」
医師が忠告してくれた。
しかし、俺は怒りまくっていた。
そこにはリディアーヌが祖父である前国王から俺が無能だと判断したら、リディアーヌが俺を叩きだしてほしいと頼まれていたので、ここに追放を宣言するとでかでかと書かれていたのだ。
どこに他国の王女に追放される王太子がいるのだ。
あり得なかった。
更には俺は剣術もからきしだめな無能な王太子で、か弱いリディアーヌに頬を引っ叩かれただけで、3ヶ月も入院しなければならなくなるくらいの虚弱体質で、到底行軍にはついてこれない。そのような王太子について進軍することは自殺行為であるから直ちに降伏せよと書かれていたのだ。
「おのれ、リディアーヌめ。絶対にあやつを俺の前に引きずり出せ。目に物見せてやるわ」
俺は怒り狂って叫んでいた。
直ちに進軍するというのを頭を打たれたところであるからもう少し待たれてはと、皆に気遣われて、俺が進軍を始めたのは1週間も経った後だった。
その間に俺はとても虚弱体質だという噂が国中に流れたのだった。
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