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第8話 ハイン・ピュイベント

 

 俺は今、質問攻めに遭っている。


 ご主人様は椅子に座り、俺は床に立って質問に答えている。

 私の言葉が分かるのか?から始まり、前世は魔術師で転生して猫に生まれ変わった事や、魔物に襲われて母猫達とはぐれた事、使っている魔術の事まで正直に喋った。


 ドーフとの戦闘についても聞かれた。


「あれは強制内省(リフレクション)というオリジナルの魔術にゃ。相手の攻撃を何倍にもして返すことが出来る攻防一体の便利な魔術にゃあ」


「じゃあ最初から使えばよかったじゃない?ミカエルが死んじゃうと思ってハラハラしたわ」


「ごめんにゃ。でも戦闘は速攻で倒すか、油断を誘うかが最も有効にゃ。下手に勝負を長引かせればこの身体だと色々不利にゃ。だから油断を誘う為に一芝居うったにゃあ」


「なるほどね、ところで壁にぶつかって足をひきづっていたけど大丈夫? あれも演技なの?」


「そうにゃ。わざと魔法障壁を薄めに張って壊れるようにしたにゃ。実は体のそばにも、もう一枚張ってダメージは防いでいたにゃあ」


「ふーん」

 ご主人様はなんか納得がいってないようだった。


 今度は俺の方から質問する。


「これから街の様子見に行くかにゃ?」


「そうね、真相は分からずじまいだし、魔物を街に放ったのがホードゥだとしたら……」


 ご主人様は言葉に詰まらせる。理不尽な事とはいえ責任の一端があるかも知れないと思っているのかも知れない。とにかく真相は明らかにしなければならないだろう。


「あのにゃ、俺の生き別れた母猫達の安否が気になるにゃ。もし街に行くなら一緒に連れて行ってほしいにゃあ」


 ご主人様は少し考えてから

「わかったわ。ただし、ひと段落着くまでは私と一緒にいて? その後私とお母さん達を探しましょう。ミカエルが喋って聞き込みをする訳には行かないでしょ」


 そう言うと立ち上がって両手を広げた。

 俺はピョンとジャンプしてご主人様の肩までよじ登る。


「埃まみれじゃない。帰ったらお風呂だからね」

 と言って俺の背中を軽く叩く。


 ……お風呂はヤダにゃあ。


 ~~~~~~~~~~~


 ドーフ達が乗っていた馬に乗り街に向かう。

 死体はそのままにしておいた。俺がやったという事は信じてもらえないと思うし説明できないこともある。しかし彼らにも家族はあるだろうし、行方不明ということにするともっと面倒だ。

 正直に話して円満にとはいかないだろうが、何とかご主人様が罪に問われないようにしないといけない。


 水車小屋から街の入り口は近く、月が上りきる前には街に着いた。

 城郭の縁を流れる川に橋がかかっていて、その向こうに大きな城門がある。


「城門が閉まっているとかは無いのかにゃ?」


「基本的にいつも開いているよ、もちろん門番は居るけどね。なんせこの国には300年以上戦争がない。この街は建国以前からあるらしいの。なので堅固な城塞に囲まれているのよ」


 ……んーやはり前世と同じ国なのか? だとしたら死んでから時間はどれくらい経ったのだろう?


 俺たちは橋を渡り城門に近づく

 兵士の格好をした2人が槍を構え俺たちを静止させる。


「こんな夜中に何の用だ?」門番が大きな声でご主人様に問う


「ロースクッド家のハンターのシグヴァールだ、今日は街でうちの家の者が魔物討伐をやっているので様子を見にきた」


「おお、シグヴァールか。暫くぶりだな、元気にしてたか?」

 門番の1人は槍を立てて近づいてくる。どうやら知り合いの様だ。


「ケインさん、お久しぶりです。魔物討伐はもう終わりましたか?」


「いや、まだ魔法の音が聞こえてくる、おそらく中央広場の方向に追い詰めているところだろう」


 順調に行っている様だ。中央広場を目指せば合流出来そうだが、まずは叔父さんに会って事情を説明したいところだ。


「ありがとうございます。では先を急ぎますので」

 そう言って俺たちは門をくぐり街に入った。


「中央広場まではどれくらいにゃ?」


「そうね、馬を走らせて30分くらいじゃないかしら?」


 ~~~~~~~~~~


 街は月明かりに照らされラブラドライトみたいに鈍い青い光を放っていた。


 中央広場に近づくと戦闘音があちこちから聞こえてくる。

 まずは叔父さんの安否を確かめたい。ご主人様の話だと99.9%無事であると言い切っていた。


「あっちよ」

 ご主人様は左前の方を指差して言った。

 そちらを見ているとたまに光るのだ。


 ご主人様は馬を走らせる。中央広場から少し東側に行ったところでハイン叔父さんは戦闘をしていた。


 黒い毛の生えた魔狼が3匹、叔父さんを囲んでいる。大型の犬より少し大きいくらいの個体だ。ジリジリと距離を詰めたり、「グルルル」と威嚇して襲うタイミングを計っているようだ。

 叔父さんは腰から下まで霧のような水蒸気を纏っている。手をだらんと下げて武器も持っていない。目も細くて起きているのかわからない。立ったまま寝る特技があると言われたら信じてしまう。


「助けに入るかにゃ?」と聞くと


「いや、危ないから離れていよう」と言って路地の端で馬を止めた。


 魔狼の一匹が背後から飛びかかる。叔父さんは全く動じず軽く視線をそちらに向けると、左手を肩の高さまで上げた。


 瞬間


 蒼白い光が辺りを包み、襲った魔狼は黒焦げになり倒れていた。煙が2〜3本立ち上っている。

 他の2匹の魔狼は俺たちの事など一瞥もせず、広場の方へ逃げて行った。


 向かって来た魔物を完璧なカウンターで迎撃をする。なるほどこれは手強い。ご主人様が負けはないと言った意味が理解できた。


 俺たちは馬から降りてハイン叔父さんの方に歩いて行く。叔父さんも気づいたらしく、霧の衣を解き近づいて来た。


「何かあったのか?」

 ご主人様は討伐に参加しないと言っていたのだから当然の反応である。


「ごめん、話す事がいっぱいありすぎてどこから話せばいいか分からない」


 叔父さんはご主人様の頬に出来た痣を見て、眉をひそめながら

「やはりこの討伐には何か裏があったのだな?」


「そうなの、ちょっと信じてもらえないかもしれないのだけど、順を追って話をするわ」

 ご主人様はそう言って、ハルホスニ家のハンターのドーフ達に騙し討ちに遭って連れ攫われた事。

 ドーフ達からこの魔物討伐がホードゥによって計画された自演であると聞いた事。

 ハルホスニ家はこの計画を利用してロースクッド家の利権を狙っている事。

 自分を助け出してくれたのはミカエルで、実は魔術が使えて、ドーフ達は死んだ事。


 これらを簡潔に澱みなく話した。さすがご主人様、頭がいいにゃ。



 でも、俺が喋れる事話してなくない?



作品を読んでいただいてありがとうございます。

これから時間を作って投稿していくつもりです


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