第7話 猫みたいにかわいい
☆シグヴァール視点
いったい何なのだろう?うちの猫が私を助けにきたと思ったら、あっという間に2人を倒してしまった。
しかも魔術を使っている?一体いつから使えるんだろう。
そしてドーフとも互角にやり合っている。
ミカエルには逃げてほしい。私がもしここで死んでも、誰かに拾われて幸せになって欲しい。本当にそう思っているのに。
……そう思っているのにミカエルに期待している自分がいる。
しかしだんだんとミカエルは劣勢になっていった。黒い球は重たく防ぐのが難しいらしい。ついには魔法障壁が破られ壁に叩きつけられる。
心が締め付けられ、喪失感に支配される。私の事はどうなっても良いからミカエルだけは助けて。心の底からそう願っている。
ミカエルは立ち上がる、私を守る為に。
ボロボロになって足まで引き摺っている。
私はミカエルにそこまでの事はしていない。たかが一ヶ月強、ゴハンをあげて一緒に遊んだだけだ。むしろ癒されたのは私の方なのだ、私のところに来てくれて本当に嬉しかったのに。
私は「もうやめて!」と叫び縛られてる椅子ごと間に入ろうとしたが、その場で倒れてしまった。
……悔しい。私に力があれば。せめてミカエルを逃すだけの力があれば。噛んだ下唇に血が滲む。
ドーフがとどめの一撃を放とうとしている。あれはヤバい。部屋の温度が一気に上がった。鉄さえも溶かしてしまいそうな熱を持った黒い火の玉がミカエルめがけて飛んで行く。
私は目を逸らしてうつむいた。
ミカエルと初めて会った時、天使だと思った。巡回にはいつも付いてきて、私の肩に登るのが大好きだった。ヤギのミルクを美味しそうに飲む時、顔中をミルクだらけにするのが可愛かった。
走馬灯のように思い出が駆け巡る。
どうして、どうしてと心の中で絶望が木霊のように駆け巡る。
「ニャ、ニャァ、、、ニャーハハハハー。消し炭になるのはお前のほうニャー」
ミカエルが喋った!?
一体私は何を見せられているのだろうか?
しゃ、しゃべった?
いやそこじゃ無いだろ。
ドーフが放った黒い火の玉がミカエルの前で留まり、3倍、いや5倍位の大きさに膨れ上がった。
バリバリと音を立ててぐるぐると回転すると、ドーフめがけて飛んでいった。
ドーフの魔法障壁が「ギャン」という音と共に砕け散り、ドーフの体を黒い炎が包んだ。
一瞬激しい青い光が辺りを包み、残された白い塊は煙草の灰のように崩れ落ちた。
これは……夢なのか? いや、夢ならどれほど良いか。
ハルホスニ家に雇われているハンターが3人死んだのだ。しかもやったのはうちの飼い猫だ。
一体誰が信じるというのだろう?
私は頭を抱える、いや腕は椅子に縛られたままなのだが。
とりあえず起きあがろうとしてみるが難しい。
ミカエルの方を見ると、ひっくり返ってまるで猫みたいなかわいいポーズをとっている。
いやいや、無かったことになんてならないから!!
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