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第5話 ご主人様のピンチ

 

 こいつらの後をつければ街に入れると思っていたが、なんかとんでも無いことになった。

 ご主人様は水車小屋に運びこまれてしまった。どうやら気絶している様だ。

 それにしても手際が良い、闇術で拘束してから気を失わせて、近くに隠していた馬で水車小屋まで運んだ。

 殺されていないという事は、利用価値があるという事だと思う。もっともご主人様は美人としても有名だ。何かよからぬことをしようものならタダじゃ済まさない。

 水車小屋の上部によじ登って窓から中を覗いてみると、ご主人様は椅子に縛り付けられていた。まだ気を失っているが、無事のようだ。


 助け出す方法を考える。

 ドーフという男は闇術の使い手の様だ。手際も見事で戦い慣れている気がする。他の2人は未知数だ。

 もし見張りだけ残して出て行ってくれれば何なく救出できるはずだ。

 それに彼らの目的もいまいち分からない。


 俺は聞き耳を立てて男たちの会話を盗み聞く。


「……見れば見るほどいいい女だな、おい」

 短刀の男が言った。フードを脱いでおり短髪のサル顔だ。


「あのバカ息子が惚れるのもわかるな、しかし交渉材料になるのかな?」

 杖の男が答える。この男はセミロングの長髪でハーフアップにして後ろで髪を纏めている。


「元はと言えばバカ息子がこの女に良い所を見せたくて企んだ魔物狩りだ。それに討伐隊の隊長はこいつの父親だ。この女の為には何でもするはずさ」

ドーフが言った。


 うん?よく分からん。ホードゥが魔物狩りを企てた?つまり魔物を街に解き放ったのはホードゥという事か?

 で、叔父さんは無事なのか?ご主人様を交渉材料にするって事は、何が目的だ?後ろにはハルホスニの連中は噛んでいるのか?こいつらの単独行動?

 様々な疑問が湧いてくるが、情報が足りない。一つはっきりしてる事はご主人様の命はしばらく保障されているということくらいか。


 あれこれ考えを巡らせていると、ご主人様が目を覚ました様だ。


 ご主人様は事態が飲み込めないらしく、目をあちこちに動かしている。出会い頭に魔術で気絶させられたのだ、無理もない。


「目を覚ましたようだな」

 短剣の男がしゃがんで話しかける。


「ここは?叔父さんは何処?どうなってんのこれ?」

 ご主人様は立ち上がろうとしたが、縛られてて椅子の後ろ足が少し浮いただけだった。

 

「シグヴァールさん申し訳ない、これには事情があるのです」

 ドーフが優しく言った。


「……全く意味がわからないわ、取り敢えず縄を解いてくれないかしら?」


「それは出来ませんが、あなたが気になる事は教えましょう。まず、ハインさんは無事です。今の所はね。そして魔物を街に放ったのはホードゥです。自分の実力をロースクッド家に認めてもらう為に。そしてあなたに良いところを見せたい下心があって、この様なことを起こしたのです」


 ご主人様は信じられないという顔をしている。


 ドーフは続ける

「今、我々の仲間が交渉に行っています。ホードゥに『こんな馬鹿な事はやめて今すぐ罪を白状しろ』とね。貴方はいざという時の交渉材料だ」


 ご主人様は俯いて考えている。


「なのでしばらく我慢していただきたい。もう少しの辛抱です。我々に協力して頂けたら大変助かるのですが」


「……うそ、嘘ね」ご主人様が小さく呟いた。


「我々は正直にお話ししてます。一体何処が嘘なんでしょう?」

 ドーフは丁寧に返す。


「第一に私を攫う意味がないじゃない?討伐できない様な魔物を街に放つ事などできるはずがない。ホードゥ達があっという間に片付けて終わりよ。そこに交渉など入る余地がない。私が入り込む余地が無いの。」


「いえいえ、私どもは討伐に成功しようが失敗しようが、魔物を放ったのがホードゥだと証言して頂きたいのです」


「そんなのあなたたちが言ってるだけで何の証拠もないじゃ無い。もしその計画を知っていたとして、なぜ事前に止めなかったの?それに私が証言するとすれば『ハルホスニの連中に攫われた』よ」


「……うーん、めんどくさいなぁ」

 ドーフの口元から笑みが消えた。


 パンッ……ドーフの平手打ちがご主人様の頬を撫でる。

「お前には俺たちの言うことを聞くか、ここでくたばるかしか選択肢はねえんだよ!」


 サル顔が近づいてきて言う

「どうせ死ぬなら俺たちに良いことしてから逝ってくれよ」

 短刀を抜いてご主人様の首筋に置いた。


 俺は血が沸き立つのを感じた。そして気がついたら水車小屋の中に降り立っていた。


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