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第41話 大戦の古戦場

 朝、俺が目を覚ますと、すでにシグヴァールとサラは起きて準備を始めていた。

 サラは何やらブツクサ言うと、全身を紫色の煙が包み昨日の人間の姿に変身した。

 どうやら妖術らしいが、変換呪文は覚えてない。俺は元々妖術を使えるからだ。

 でも便利そうだからあとで術式をご教授頂きたい。


 宿をチェックアウトする頃にはうっすら朝日が登り辺りは明るくなっていた。

 どうやら巨大な魔力の発生源は獣人族の村よりもさらに奥にあるらしい。

 つまり1日では帰ってこれない可能性が高い。

 幸い俺たちは旅の途中で、簡易的な宿泊は問題ないが、荷物は嵩張るので必要なものは宿にお金を払って保管させてもらった。大森林の中は馬は使えないので致し方ない。


 サラが案内してくれる大森林の道は実に快適だ。

 前回行った時は川を上っていく様にうねった川に沿って歩いたが、今回は割と歩きやすい道を選んで進んでくれる。

 野生の勘なのか? 何か目印があるのか? 俺には同じ様な風景が続き、どこを曲がるかなんて覚えられる気がしない。

 シグヴァールは昨日からずっとご機嫌だ。鼻歌まじりに軽快に歩いている。

 流石に凸凹した気の根っこや苔が蒸した岩石などを超えて歩くのは辛いと思うが、体力に自信があると言うだけあって、疲れは微塵にも見せていない。

 俺たちは順調に森を行き、お昼前には獣人の村に着いた。

 途中では小さい魔獣にも遭遇したが、サラが威嚇すると逃げていったので戦闘には至らなかった。

 狼人族って相当強いんじゃないかと思ったのだった。


 例の如くカモフラージュがかかった獣人の村に入ると、ダウが出迎えてくれた。

 歩きっぱなしだったのでしばらく足を休めるとともに、魔力の発生してる詳しい位置を教えてもらう。


「かつて大森林の南西にはエルフの国があったのだ。 そして先の大戦で我々獣人族と共に人族と争った。 その古戦場は今は誰も住んでいないはずだが、その辺りから大きな魔力の波動を感じる。」


「その古戦場は何処に?」


「うむ、我々も滅多に行かないので詳しく説明は出来ないのだが、ここから西に行ったところにあるはずだ」


「サラはおおよその場所はわかる?」


「うん、多分大丈夫なの」


「そのエルフ族と今でも交流はあるのかにゃ?」


「いや、今は無い。 エルフ族は大戦のあとすっかり存在を消す様に大森林の奥に引きこもってしまったと聞いている」


「じゃあ、とりあえず古戦場跡を目指していってみるにゃん」



 少しの休憩をした後、すぐに旅立った。

 暗くなる前には到着する距離という事で、なるべく早く目的地に着こうということになった。

 ダウは弟切草で作った傷薬も持たせてくれた。


 俺たちはウアン湖を右手に見ながら道なき道を進む。

 深い苔の絨毯が樹々の間に途切れることがなく繁茂しており、猫の足には若干歩き辛い。

 森は全体的に薄暗く、日光を遮る背の高い樹々が

 サラは先行して斥候の役割をしてくれて、今のところ魔獣に遭遇はしていない。


 1時間くらい歩いただろうか?

 森の木々が少なくなり、ぽっかりと盆地の様なところに出た。

 地面は岩がゴツゴツしていて、草木はあまり生えていない。

 まるで溶岩で固めた様な硬い足場がずっと先まで続いていた。


「ここが古戦場の跡なの」

 サラはそう言うと少し緊張をしている様だった。

「この先から強い魔力を感じるの。 なんだか胸の奥を締め付けられるような、怖い感じ」


 確かに言われてみれば、何かプレッシャーを感じる。

 シグヴァールも神妙な顔をしているが、率先して歩き出した。


「シグヴァール、気をつけるにゃん」

 俺もシグヴァールの肩に飛び乗った。


 なだらかな坂の上まで登ると、正面に巨大な古城の様な要塞が見えてきた。


 盆地の様に岩山で囲まれた奥を防ぐ様に城壁と、二対の櫓がこちらを覗く様に建てられていた。

 堅牢な岩が規則正しく積み上げられていて、荘厳さを感じる。

 城壁に門は無い。つまり関所的な役割では無く、敵を足止めして一気に誅するものであると言うことが構造上明らかだった。


 俺たちは城壁を見上げる。近づいてみると城壁の高さは10m以上はあった。若干の傾斜がついていて頑張れば登れそうだ。

 これが戦場だったら、上から魔法を容赦なく放たれてひとたまりも無かっただろう。

 城壁に魔法障壁でも張れば飛び道具もある程度防げる。

 まさに難攻不落の要塞だったのだろう。かつての人族はどうやって攻略したのだろうか?

 そんなことを考えながら上まで登ると、正面には蔦で覆われた古い城、左手には霧がかかった切り立った山、右手には断崖とその下には流れの速い川が水飛沫をあげていた。

 まさにお伽話に出てくる様な情景がそこに広がっていたのだった。


「す、すごい!!」

 顔を紅潮させているのは城壁を登ったからなのか? それとも興奮からなのか?

 シグヴァールは身を震わせてそう呟いた。


「何か来るの!!!」

 サラはそう言って戦闘体制をとる!


 古城の方から3対の羽を持つ天使の様な何かが飛んで来た。

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